きょうは「こどもの日」。あらためて、子どもの貧困問題を見つめてみたいと思います。
過酷なトリプルワークで睡眠2時間
駅のトイレで寝泊まりする女子高生
◆アルバイト代で学費や自分の生活費を稼ぐだけでなく、家計の援助もしなければならない高校生たち
◆100円ショップの50枚入り薬用オブラートで空腹をまぎらわす高校生たち
◆東京近郊の私鉄の駅前にある多目的トイレで寝泊まりする女子高生。彼女は午前6時から9時までコンビニのレジ打ち、午前10時から午後3時までファストフード店で働き、午後5時半から9時まで定時制高校の授業、その後、飲食店で深夜労働という過酷なトリプルワークをこなし学費と生活費を稼ぐ。時間がないので、駅のトイレで「1日に2時間眠れたらいい方」。
◆子どもたちが朝食を求めて行列ができる大阪の公立小学校の保健室。給食のほかは何も食べられない子どもなどが増えているため2008年から保健室で朝食を出すようになった。お金がかかるから歯医者に行けず、視力が低下してもメガネを買えない家庭も増えている。
◆「先生、孫だけでも夜、保育園に泊めてもらえませんか」「1カ月前から、家族で車の中で寝泊まりしているんです」
◆ガリガリにやせて、体がふらふらして保育園の廊下を真っすぐ歩くのが大変な子ども。
――以上は、保坂渉・池谷孝司著『ルポ子どもの貧困連鎖――教育現場のSOSを追って』(光文社)に書かれている子どもの貧困のいくつかのケースの一部抜き書きです。
病気になっても病院で診てもらえない
予防接種も受けられない子どもたち
◆大阪の公立高校。修学旅行に行く2年生140人中、家庭の経済的事情で積立金滞納などによって20人が修学旅行を欠席。
◆月8千円の学童保育料が払えず留守番をする小学生。
◆無保険の中学生以下の子どもは全国に約3万2千人。無保険世帯の子どもを年齢別にみると、0~6歳の乳幼児は5,275人、小学生は1万6381人、中学生は1万1120人(2008年、厚労省調査)いることが分かり、2009年春から国保法改正で滞納世帯でも中学生以下には短期証が交付され、窓口での全額負担をしないですむようになった(2010年7月から高校生も短期証発行の対象となった)。しかし、滞納以前に高額の保険料が壁となり、国保に加入しない「本当の無保険」の家庭がある。国保加入を前提にした法改正には、すべての子どもを救いきれていない落とし穴が残っている。子どもの無保険問題に取り組む大阪社会保障推進協議会(大阪社保協)によると、金銭的事情で保険証の取得が念頭になかったり、保険申請の仕方がわからなかったりする保護者もいる。だが、厚生労働省は「基本的に何の保険にも入っていない人はいない。加入手続きをするのが大前提」と、国民皆保険を強調し、無保険者の実態を調査していない。大阪社保協の調査(2012年)によると、所得200万円の40歳代夫婦と未成年の子ども2人の4人世帯の場合、大阪市内の自治体の平均国保料は約41万円。高いところだと、守口市で約50万円だ。寺内順子事務局長は、「ご飯を食べないで保険料を払え、というのは絶対おかしい。親の事情がどうであれ、子どもは社会で守られなくてはならない。子どもに限っては未加入でも国保に入っているとみなすなど、医療費負担を減らす仕組みを作るべきだ」と指摘する。
◆毎年約1千人の子どもがかかる細菌性髄膜炎のうち、肺炎球菌が原因の場合は約7%が死亡し、約4割で手足のまひや知的障害が残る。この細菌性髄膜炎を防ぐ予防接種を受けた割合は、被用者保険91%、国保9%(日本外来小児科学会での高崎中央病院の鈴木隆院長の報告。2010年4~7月の調査。同院での予防接種の自己負担は5,250円から6,300円)
◆短期証が、子どもの健康格差を根本的に解決してくれるわけではない。和歌山市の生協こども診療所長の佐藤洋一医師は、2012年4~6月の間に、同診療所で受診歴があり、ワクチン接種した就学前の子どもを対象に、麻疹・風疹混合ワクチンの接種状況を調べた。通常の国保と社保の保険証を持っている場合、どちらも40~50%が接種していた。しかし、短期証の場合0%。
◆インフルエンザが流行していた時期、クラスの子が3日間学校に来なかった。心配になって家に電話したら、父親は「インフルエンザになっても病院に行くお金がないから休ませる」(高知県内の小学校の男性教諭)
――以上は、中塚久美子著『貧困のなかでおとなになる』(かもがわ出版)に書かれている事例などの一部抜き書きです。
こうした子どもの貧困は決して特殊なケースではありません。日本の子どもの6人に1人が貧困状態に置かれ、「日本の子どもの貧困は323万人に上り、昨年1年間で1,183人もの小中学生が行方不明とされている」 のです。すべての先進諸国の貧困の子どもたちの総数が3,400万人で、なんと、先進諸国の貧困の子どもの約10人にひとりが日本の子どもなのです。
そして、「日本のひとり親世帯の貧困は世界最悪、生活保護受給は世界最小、子どもの貧困を生み出す日本政府」
は、「はじめから子どもの芽を摘み貧困連鎖加速させる生活保護改悪-子どもの貧困ひろげる世界最悪の日本政府」
であり、有力大学に合格できるのは、「幼少期からの受験準備も含めて、入学するのに多額の費用を要する学校」で学べる子どもがほとんどで、「極限の不平等状態に近接しています」。
こうした結果、下のグラフにあるように、就活生の半数以上は、日本社会はいざという時に何もしてくれず、やり直しがきかい社会で、正直者がバカを見て、あまり希望を持てない社会だと感じているということです。
また、下のグラフは昨夜のNHKニュースで放送されたものです。総務省の推計によると、4月1日現在の15歳未満の子どもの数は、去年に比べ15万人少ない1,649万人で、32年連続で減少。総人口に占める子どもの割合も、去年を0.1ポイント下回って12.9%となり、39年連続して低下。最も大きく減った福島県と大阪府は前の年より1万1千人少なくなっています。命を奪う原発と橋下維新の会の新自由主義及び教育統制などでは、子どもを育てることが困難になっているというあらわれではないでしょうか。
(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)