時間に追われる現代人は、「勤務先の一駅手前で降りて歩く」「駅のエスカレーターを使わずに階段を歩く」といった“スキマ時間エクササイズ”を実行しがち。実はこれこそが、運動の習慣化を妨げているのかもしれません。
エクササイズは習慣にするまでが大変です。始めてはみたものの、なかなか生活の一部にできないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。
エクササイズに関する調査結果(参考リンク:NTTレゾナント/毎日新聞社調べ)を見てみると、運動不足の理由として最も多かったのは「時間がない」ことのようです。確かに現代人はおしなべて忙しく、仕事とプライベートの合間から時間を確保するのもラクではないですよね。
今回は、時間に追われる現代人が陥りやすい「頑張れば頑張るほど逆効果なスキマ時間エクササイズ」について解説します。
忙しくて時間がないと、つい「だったら日常の延長線上や、スキマ時間を有効活用して運動すればよいのだ」という発想に行き着きます。例えば、「勤務先の一駅手前で降りて歩く」「駅のエスカレーターを使わずに階段を歩く」がそのよい例です。この“スキマ時間エクササイズ”は「時間の節約になり、ふだんの心がけひとつで実行できる一石二鳥なナイスアイデア。忙しいビジネスパーソンにはぴったりなエクササイズ」……というのが一般常識でしょう。
しかし、私はそうは思いません。実はこのスキマ時間エクササイズこそが、運動の習慣化を妨げる隠れた原因だと思っています。
なぜスキマ時間エクササイズが運動の習慣化のジャマになってしまうのか? 答えは、以下のような心理が働いてしまうことにあります。
「今日は終日外出でけっこう歩いたから、かなりカロリーを消費したはずだ(大盛りを注文してもチャラだな)」
「いつもより万歩計の歩数が多いぞ(じゃあ、ジョギングは明日に回そう)」
このように、体(てい)のいい言い訳の原因になってしまうのですね。中途半端な努力が逆にあだとなってしまう、典型的な例です。スキマ時間を工夫してあれこれメニューを増やせば増やすほど、皮肉にも言い訳のコンビネーションに磨きがかかり、ロジックでは明らかにおかしいことが心の中ではまかり通ってしまうようになるのです。
高カロリーなジャンクフードを食べるとき、「サラダもいっしょに食べるからOK!」と無理やりつじつま合わせをする人がいますが、これに似た危険性がスキマ時間エクササイズにも潜んでいるのです。最終的には「スキマ時間エクササイズだけで満足してしまい、本来やるべきエクササイズをしない自分」になってしまいます。
「じゃあどうすればいいんだよ……」とお悩みの方もご安心を。対策はカンタンです。日常の延長線上で行うあらゆる運動を、エクササイズとしてカウントしないと誓うのです。費やした時間、消費したであろうカロリー、なにもかもバッサリ捨てましょう。日常生活は日常生活と割り切り、そこにエクササイズとかカロリーの概念を持ち込まないことで、自分にプレッシャーをかけるのです。
カウントしてはいけないスキマ時間エクササイズの例を以下に挙げます。
個人的には、30〜40代の健康な男女が使うものではないと思います。最近の携帯電話には、歩数や消費カロリーまで計算してくれる機能が付いていたりしますが、安易な気持ちで手を出すと自分の首を絞めかねません。
言い訳の材料にしないよう、むしろフル活用しましょう。
たいしたカロリー消費になりません。無理せず体を休めましょう。
通勤をエクササイズにカウントしていいのは、60歳を過ぎてからです。
それも仕事の一部です。
上記をすべて捨てる代わりに、運動する時間は専用枠としてスケジュールに落とし込み、集中して行いましょう。
「細かいなあ」「そこまで徹底しなくてもよくない?」……日常生活で発生する歩行や基本動作を、エクササイズにカウントしたくなる気持ちは、痛いほどわかります。でも、あえてNOと言わせてください。なぜなら、一度それを許してしまうと、なし崩し的にあれもこれもとキリがなくなるからなのです。極端な話、歯磨きの手の動きや、キーボード操作まで「エクササイズ」に換算してしまいかねません。そうなったら、ますますエクササイズは習慣化しないでしょう。
エクササイズを生活の一部として完全に習慣化するまでは、「心の葛藤」「無意識な怠け心」「逃げの理由を探そうとする甘え」との戦いの連続です。その要因をまだ小さいうちに握りつぶしておけば、雑念のボリュームが減り、代わりに危機感が芽生え、最終的にモチベーションが高まるのです。
忙しさを理由に、スキマ時間でちまちまエクササイズすることに逃げていないか、胸に手を当てて熟考してみてください。そして、もしもそうなっているならば、専用にエクササイズの時間を設けてがんばってみてください。
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