前回に続き、レゴブロック的に企業会計や経営分析を考察していきます。今回のテーマは「運転資金」。成功企業を例にとって解説します。
これまで何度か、企業会計や経営分析をレゴブロック的に解説してきました。レゴブロック的な単純モデルの積み重ねで物事を捉えることで、複雑な情報をシンプルに理解でき、正しい判断を導けるのです。今回は「運転資金」モデルです。
運転資金は、企業が事業を継続するために必要なお金です。運転資金が回らなくなると血流の止まった人間と同じように、会社はバタっと倒れてしまいます。運転資金の増減は利益とは関係ないため、「黒字なのに倒産」という現象が起こるわけです。
運転資金は、現金以外の流動資産から、有利子負債以外の流動負債を除いた金額です。なんとなく難しいので、もっとかんたんに式に表すと次の通りです。
運転資金のプラスが大きいと、たくさん現金を持っていないと会社が回せません。マイナスが大きいと、現金がなくても会社が回っていきます。
運転資金を理解するには、現金が入ってくるまでのプロセスを考えると分かりやすいです。お金が入ってくるまでは、次のような流れを踏みます。
仕入れをしても、すぐに払うわけではありません。また、販売してもすぐに現金が入るとは限りません。よってこの入金タイミングがなるべく早く、出金タイミングがなるべく遅い方が有利になるというわけです。運転資金は金額の大小だけでなく、タイミングが重要なので、月商に対する「何日分の現金が必要か」で計算すると分かりやすいです。
図を見れば分かるように、在庫保有日数+債権回数日数−仕入債務支払い日数が自社で手当てが必要な運転資金となります。月商1000万の会社が必要とする運転資金が30日分であれば、運転資金が1000万以上持ってないと倒産する可能性があるわけです。
例えば、米国発の会員制ディスカウントショップであるコストコは、大量に商品を仕入れる条件として仕入債務の支払いタイミングを伸ばしてもらうようにしています。一方でほとんど販売時点で現金が入るため、実は仕入代金を販売後の現金から支払えるのです。つまり、運転資金はゼロでも成立するビジネスモデル。こうした運転資金マイナスモデルは世の中に結構あります。
また、例えばプリペイドカードで先に現金を回収し、後から顧客に利用してもらうようなモデル。先に年間購読料をもらい、後から雑誌を発送するようなモデル。こうした企業はどこも、仕入債務の支払いが売掛金回収の後に行われるので、前述の計算では、運転資金マイナスのモデルです。日数計算で、運転資金マイナス72日といった会社もあるくらいです。
こうしたキャッシュリッチな会社は、ビジネスモデル継続が大変楽です。自己資金が少なくて済み、借入の利子や資金調達に必要な労力が少なくて済みます。
単に、利益の大きさだけでビジネスモデルを見るのではなく、運転資金モデルで見ると、優れたモデルはどういったものなのかがより深く理解できるのではないでしょうか?
パワポの前に「図」で考える――。ベストセラー『頭がよくなる「図解思考」の技術』の第2弾となる本書は、プレゼンテーションの根幹とも言える「メッセージをどう作り、どのように伝えるのか」を図で整理する方法を解説しています。
「見栄えのいいスライドを作ること」や「説得力のある話し方をすること」も当然大事ですが、プレゼンの目的(メッセージ)そのものが洗練されていなくては、聞き手の心には届かないからです。営業プレゼンテーションや講演に限らず、ちょっとした説明や商談、または報告などにも応用可能で、あらゆるビジネスシーンで活躍するはずです。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
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