『教えて!からあげ先生 はじめての生成AI』(からあげ (著), いまがわ (著), ずっきー (著))を読んだ(ご恵贈ありがとうございます!)。からあげ先生(id:karaage)は、気鋭のデータサイエンティストと世間では認識されているようだが、僕にとっては数少ないブログ友達の一人である。実は、数か月前にからあげ先生から新著を出す旨のメッセージで受けておりました。唐突に「漫画本を出します」とおっしゃるので「すごいね!漫画を書くんだ」と返したら「いえ。自分が漫画のキャラクターになります」と本気なのか冗談なのかわからない回答が返ってきた。なるへそ。当時、仕事が忙しかったので、そのままスマホをそっ閉じしたのを昨日のことのように記憶している。実際の書籍を開いたらホントにからあげ先生がドラえもんポジションの主人公キャラになっていた。どのように作中に登場するのかと思ったら、登場人物の自宅に突然登場。怖すぎる!
「ぬっ」じゃないよ!怖いよ。
本書の内容を生成AIのように一文でまとめると「難しい理屈は抜きにしてとりあえず生成AIを使ってQOLを上げてみよう!」になるだろうか。表紙に初心者向けとあるようにAIビギナー向けの書籍である。各章のイントロは「忙しくて猫の手も借りたい家族」が日常生活におけるトラブルをからあげ先生のアドバイスをヒントに解決していく漫画。そこから解説ページや「おまかせプロンプト」という具体例に進むという構成だ。まず漫画を読むだけでアウトラインが分かるようになっているのが良い。そのうえ、たとえば僕のようなバリバリの文系がちょっと苦手な話になりがちな「生成AIの仕組み」や「パソコンを使ったより詳しい使い方」についてはあえて大胆に切り落として(おそらくサポートサイトで補完されていると思う)、まず生成AIを実生活で使ってみようという点に力点が置かれているからわかりやすい。
僕も仕事の必要に追われて生成AIの入門書を何冊か読んでみたけれども、どの書籍も「優しい」「初心者向け」とされているけれど、まあまあ難しい。「初心者向けなのに難しく感じる……もしかして自分はバカなのか……バカには生成AIは無理なのか」と軽く絶望した。お手軽さにも欠けている。おそらくAIの専門家はAIのことはわかっているが、本物のド素人というものがわかっていない。だからたとえば「文章を生成してみようコーナー」になると、プロンプトを小出しにして細かく解説しがちなのだ。違うのだ。僕のような素人は生成AIなんて知りたくないのだ。とりあえずズバっと簡単にどんなものができるのかそれなりの形ってやつを見てみたいのだ。たとえばスマホの中身がどういう理屈で動いているのかなど知りたくない。スマホで何ができるのかさくっと知りたいのだ。
そういったニーズに本書は完璧に応えている。プロの著者から見れば、語りたいことは山ほどあったと推測するけれども、ぐっと抑えて「とりあえず生成AIを実生活で使ってもらうこと」を目的にしており、その試みは成功している。試みのひとつとして、いくつかある生成AIを指定せず、「どの生成AIを使ってもいい」というスタンスで貫かれている。またPCを使わなくてもオッケーというスタンスも特徴的だ。PCで生成AIを使えばできることはちょっと置いておいて、とりあえずスマホで生成AIを使ってみようという姿勢だ。本書の漫画のキャラクターたちもスマホで生成AIを利用している。特に素晴らしいのが各章にある「おまかせ!プロンプト」コーナーだ。生活や仕事にありそうなそのまま使えるプロンプトが掲載されている。仕事や創作でつかえるプロンプトだけでなく、「保育園・幼稚園の卒園イベントが大変」とか「FPの学習計画を立てたい」といった生活や学びに使えるプロンプト例が紹介されている。漫画コーナーでも「社員食堂の幹事を任されたときの生成AIの活用」や「個人ダイエットへの生成AIの活用」も取り上げられていた。「個人的には「イヤな上司を秒で失脚させるプロンプト」があれば完璧だ。目次で「おまかせ!プロンプト」から気になっていることを探して活用する使い方もできる。生成AIと接点のないド素人が生活しているうえでどう生成AIを使えばいいのかに徹している。素晴らしい。
僕はからあげ氏の前著のレビューにこう書いた。《『面倒なことはChatGPTにやらせよう』、身もふたもないタイトルだけれども、これ以上僕ら人間とChatGPTとの付き合い方を端的にあらわしている言葉はないだろう。面倒なことをAIにやらせる、そこにいたるまでの少しだけ面倒な道のりを平坦な道に整地してくれているのが本書である。》本書もまったく同じ精神で書かれている。少し違うのは徹底して本物の初心者を向いていること、そして生成AIをツールというよりは、物知りで真面目で勤勉な友人のような存在として取り扱っていることだ。日常生活、家庭や職場のちょっとした問題をAIと友人のような感じで対話をしながら解決していく方法を紹介している本書は、生成AIの入門書であると同時にQOLを上げる指南書である。おすすめ。(所要時間38分)