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受託開発の会社が本格的にWebサービスを開発・運用してみてぶつかった課題(只今5ヶ月目)

うちの会社は、基本的に受託開発の会社ですが、自社サービス開発の両立を目指しています。その取り組みの一つとして、今年の5月、boardという受託ビジネス向けのクラウド型業務システムのベータ版をリリースし、8月に正式リリースしました。

昨年、PattoというスマホアプリCMSをリリースしていましたが、これはどちらかというとソリューション型の製品のため、今回のboardが、うちとしては初めての本格的なWebサービスです。

ベータ版リリースから約5ヶ月、正式リリースから2ヶ月が経ったところですが、これまでにぶつかった課題について書いてみたいと思います。



まとまった開発時間がとれない

当然ですが、できるだけ早く開発して、早くリリースしたいという思いがあります。しかし、基本的に受託開発を止めて自社サービスの開発をしていたわけではないため、1ヶ月がっつりとboardの開発をする、ということができませんでした。そのため、「できるだけ早くリリースする」という思いは捨てて、毎月2割程度の時間を割いて、少しずつ開発していくというスタンスでやっていました。

9月後半に作り始めて、12月から社内α版で運用開始、2月にクローズドベータ、5月にパブリックベータ、8月に正式リリースという流れでした。

正式リリースまで1年弱かかったことになりますが、段階的に自分たちで使ってみては改善し、フィードバックをもらっては改善する、というサイクルができたので、結果的に良かったように思います。


開発が止まる時がある

受託開発と自社サービス開発を両立するにあたって、受託開発に押されて自社サービス開発の時間を削らないように、可能な限りバランスの維持に務めていましたが、やはり受託開発の納品直前や遅れ気味の時など、自社サービス開発の方を止めざるをえない時があります。

boardの開発の場合は、クローズドベータからパブリックベータまでの3ヶ月間が、そういう状態でした。クローズドベータのフィードバックを多少反映したのと、公開するにあたっての準備で手一杯で、本来追加したかった機能が後回しになり、案の定、そういうものはベータ版のフィードバックで多数指摘されました。

正式リリース後は、そういう状態になってしまうと問題なので体制を見なおしていますが、受託開発をしつつ並行して自社サービス開発を行っていると、大きな課題です。


要望対応のスピード感・優先順位付け・対応有無の判断が難しい

ベータ版公開以降、ありがたいことに非常に多くのご要望を頂きました。「もっとこうした方が良くなる」という意見が多く大変参考になったのですが、それをどういうスピード感で進めていったらいいのか、非常に判断が難しかったです。

全部さくっと対応できればよいですが、リソースの関係上難しいですし、元々予定していた機能追加の予定もあります。

特にベータ版公開後1ヶ月は、そういう状況に全く慣れていなかったので、「せっかく使ってもらったのに、早く対応しないとユーザが離れてしまう」という不安との葛藤でした・・・。

今は、Trelloに全ての要望や追加予定機能を書き出し、対応有無が未決定のものは3段階の優先順を付け、毎週これを俯瞰しながら、要望の多さや機能の重要度を考えながら順番を入れ替えたりしています。
とにかく目の前のことだけを見てしまわないようにすることが大事だと思っているので、こういう時はTrelloは非常にいいですね。


受託開発の場合はお客さんとの調整ごとですが、サービス開発の場合は特定のユーザと調整するわけではないので、本当に難しいなと思いました。

受託開発にはないパターンの悩みです。


問い合わせ対応の感覚が掴めない

受託開発の仕事をしていると、顔の見えない相手と仕事をすることがないので、会ったことがない多数のユーザさんを相手にするサポートに最初はかなり戸惑いました。

要望や質問などの問い合わせがあって、普段の仕事の感覚で即レスするとびっくりされることがよくあって、びっくりされたことにこっちがびっくりしてみたり。

boardでは、Airbrakeを導入しているのでエラーが発生したら検知できるようになっています。ベータ版の頃にあった不具合で、ある特定の操作をすると発生するエラーではまってしまっているユーザさんがいたので、こちらから「すみません、不具合なので修正します。今は○○という操作をして頂ければ回避できます」とメッセージを送ったらびっくりされたり。ちょっとストーカーっぽいので、今はやめましたが・・・。

結局未だに慣れているわけではないのですが、サポートの人を置いてマニュアル化されたような対応ではなく、開発者自身が生身の対応しているのがわりと好評らしいので、このスタンスで続けたいと思っています。


プロモーションが難しい

会社や経営者が有名だったりすると、新しいサービスを出せば認知される確率が高く、本当に羨ましいなと思うわけですが、うちは残念ながらそういう会社ではないので、頑張って認知してもらう方法を考えていく必要があります。

これが本当に難しい。

リリース直後は、プレスリリース出したり、メディアで紹介していただいたり、FacebookやTwitterでみんながシェアしてくれたりするので、最初はそれなりにアクセスを集めることができます。

しかし、当然それが継続するわけではなく、継続的にどうやって集客するか、というのは大きな課題です。

インバウンドで集客するためには、SEOやコンテンツマーケティングは頑張らないといけないと思っています。ただこれは成果がでるまでにはそれなりに時間がかかります。短期的に認知してもらうためには、広告は1つの手段だと思いますが、競合となるような請求書発行サービスが相当な広告投下量のため、単純に同じ土俵では戦えなかったり。

限られた予算の中でどうやって継続的に集客していくか。

受託の会社をやっていると自分でプロモーションをするということがないですし、資金調達をしているわけでもないので、広告で一気に認知度を上げるという方法も取れません。大きな課題です。


競合との差別化

「競合はどこか」と言われるとクラウド型の見積書・請求書発行サービスになると思います。

多くの見積書・請求書発行サービスは、「書類の発行」をメインにしていますが、boardは「書類の発行」だけでなく、業態を絞って「業務・経営管理の効率化」に軸を置いているため、個人的には、目指すものやニーズが異なるため直接競合するものではないと思っています。

ただ、サイトに来ていただいた人がサービスの説明を詳しく読むとは限らず、ぱっと見は同じに見えてしまう可能性があります。boardとしては、「見積書・請求書発行サービス」と捉えられたら負けなわけです。

それをどうやって伝えるか。

「最初にサイトを見た時の想定よりも実際に使ってみた後の方がずっと良かった」と何人にも言われたりするのは大きな課題です。

いかにして、ファーストインプレッションでサービスの特長を伝えられるか、コンバージョンを計測しながら、試行錯誤していかないといけないんだろうなと思っています。


コンバージョンを上げるための施策

現時点で全く出来ていない部分です。

ウェブマーケティングをやっている人に話を聞くと、アクセス解析に基づくサイトの改善だったり、お試し期間中に利用状況に応じたフォローメールだったり、キメの細かいフォローをするものだそうで。

確かにまだサイトに来たことない人を呼び込んだり、お試し登録したことない人にお試し登録してもらうハードルよりも、お試し登録してくれた人をフォローして、不明点や課題をクリアにして継続して使ってもらう方が確率としては高いと思うのですが、どうもそういうことをやってきていないと、気が回らないですね・・・。


広告にかける予算感

受託開発をやっている会社で外部から資金調達しているケースは少ないのではないかと思います。資金調達していない場合、かけられる予算はかなり限定されます。

そのため、最近よくある、多額の広告予算を投下して一気に露出を増やすということはできないわけです。

ITの会社なので、開発自体は自分たちでできます。ただ、モノを作っても勝手に認知され広まるわけではなく、プロモーションの方がずっと労力もお金もかかるものなのではないかなという気がしています。

そこに対してどのくらいの予算をかけていくのか。

その感覚がイマイチ掴めていないんですよね。
そもそも予算も限られているので、わかったところでできるわけではないですが、プロモーションに対応する費用対効果の感覚はまだ掴めていない感じがします。



システムを作ったり運用したりする部分は受託開発でもやっていることなので、自社サービスだからといって何か特別なことがあるわけではないと思うのですが、やはりその周辺の部分はかなり未知の分野で、なかなか悩ましいなあという感じです。


現在これらの課題に取り組んでいる状況なので、改善できたら、また書きたいと思います。

Posted 10 years ago & Filed under 自社サービス開発, board, 17 notes


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ヴェルクの社長 田向(@fw_tx76129)のブログです。
受託開発と自社開発の両立に取り組んでいて、その取り組みなどを書いてきます。