出版社内容情報
[精神病者監護法]制定(1900年)以来、百年の年月が流れ去った。この間、多くの精神医療改革が行われたものの、視圏を国際社会に拡大すれば、日本における精神病者の処遇と人権保護の実態は依然として「人権後進国」と見ざるを得まい。国際的にも類をみない33万人の「心病む人々」は、人的援助も乏しく、生活圏域を離れて位置する精神病院にあって無為の生活を余儀なくさせられている。
精神病者に関わる政策スローガンは「精神病院から社会復帰施設へ」、ついで「社会復帰施設から社会生活へ」と移行しているものの、実現への道は遙か遠くに霞んでいる。また精神病院内での不祥事件はなお絶えることもない。
人類の英知が求めつづけた自由・平等・人権擁護の思想は、日本の精神病者にとっては無縁のものにすぎないのであろうか。
現状からの超克を求め、変遷を重ねた日本の精神保健・医療・福祉関連の立法史を克明に跡づけた関係者必読文献。
序文
第1章 ‐ ~1900年
精神病者監護法前史
第2章 - 1900年
精神病者監護法
第3章 ‐ 1911年
精神病院設置に関する建議案
第4章 - 1919年
精神病院法
第5章 - 1950年
精神衛生法の制定
[1]法案作成時の医療関連情勢と法案提出の経緯/[2]法案提出の理由説明/[3]法制局参事の注釈的説明/[4]法案をめぐる質疑・答弁/[5]法施行通知(1950年6月;厚生省発118号)と関連解説/[6]小括
第6章 - 1965年
精神衛生法改正
[1]前史/[2]ライシャワー事件とその波紋/[3]精神衛生審議会での討議/[4]小括
第7章 - 1987年
精神保健法
[1]前文/[2]精神衛生法体制への問題指摘と行政対応/[3]国際機構の諸規約・勧告・宣言等/[4]日本の精神医療に関する国連人権小委員会での論議等/[5]宇都宮病院スキャンダルへの国内諸団体の反応/[6]NGO合同ミッションの来日/[7]精神保健法案の策定経過/[8]改正法案提出と政府答弁/[9]1987年改正法に関するコメント
第8章 - 1993年
精神保健法一部改正
[1]前文/[2]精神保健法一部改正前の諸意見の概要/[3]
わが国の精神障害者にかかわる最初の立法、精神病者看護法が制定されて以来、すでに100年の節目は過ぎた。そこであらためて、精神保健法制の立法史を跡り、それぞれの時点で論議された問題点を現行法との関連で整理・検討することは、精神医療関係者だけでなく、一般市民への精神保健への関心を喚起する上でも必要な作業であるとの認識から本論を記すことにした。とはいえ、論点の具体的内容はできる限り、立法史のなかで、指摘された主要な諸問題に焦点を置き、かつ国際社会の動向を紹介しながら、わが国の精神医療の今後の指針を読者と共に検討する素材を提供することにした。(・・・)
内容説明
精神保健に関連する法体系は医療法としての性格をもつと同時に、障害者の院内・院外における生活上の権利保護法としての性格をもつことを確認し、この前提にたって、両者がどのような社会的・政治的背景とイデオロギーのもとで法制化されてきたかを中心テーマに据えて論述をすすめる。
目次
第1章 ~1900年―精神病者監護法前史
第2章 1900年―精神病者監護法
第3章 1911年―精神病院設置に関する建議案
第4章 1919年―精神病院法
第5章 1950年―精神衛生法の制定
第6章 1965年―精神衛生法改正
第7章 1987年―精神保健法
第8章 1993年―精神保健法一部改正
第9章 1995年―精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
第10章 1999年―精神保健福祉法の一部改正
著者等紹介
広田伊蘇夫[ヒロタイソオ]
1961年東京大学医学部卒。都立松沢病院を経て同愛記念病院勤務。前・日本病院・地域精神医学会理事長。元・国連非政府機関(NGO)国際医療職専門委員会日本代表。イギリス王立精神医学会選出会員
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