これは発売したらかなりのヒット作になるんじゃないか、そんな予感を抱く開発途上の新製品を最近取材した。「洗濯物自動折り畳み機」だ。プロトタイプは出来上がっており、2016年度に予約販売を開始するというから、遠い将来の話ではない。
子育て中の私の家ではなかなか洗濯物の折り畳みまで普段は手が回らず、恥ずかしながら積み上がったままの状態で衣類が放置されていることも少なくない。価格にもよるが、本格普及期に入れば導入を真剣に検討するだろう。そんな個人的な関心もあって、東京都港区に本社のある開発主体のベンチャー企業、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズに足を運んだ。
名付けて「ランドロイド」
現在、折り畳み機はセブン・ドリーマーズを中心に、咋秋からパナソニックと大和ハウス工業が加わり、現在は3社の共同プロジェクトとなっている。製品名は名付けて「ランドロイド」。洗濯とロボット技術を組み合わせた造語だ。
内容としては、洗って乾かしたしわくちゃの洗濯物を投入口に入れて、操作のボタンを押せば、あとは自動による折り畳み作業に任せるだけ。折り畳み終了後、取り出し口にはきれいに折り畳まれた洗濯物が並んでいるという代物だ。初期設定すれば、お父さんのズボン、お母さんのスカートなど着る人ごとに仕分けまでしてくれる。稼働中などに心配される音についても、比較的静かで、夜間に動かしても気にならないレベルという。
では、具体的にどういうスペックなのか。現在のところ、一度に40枚を投入可能という。ただ1 枚あたりの作業に3~10分を要するため、フルに40枚を放り込んだ場合、数時間はかかる計算だ。また、折り畳み機が対応するのは主にシャツ、ズボン、スカート、タオルの4種類。今後もスピードアップや対応品目の拡充に向けた技術開発を進めるという。
折り畳み機のシステムはセブン・ドリーマーズが独自開発した画像認識技術とロボットアームの組み合わせで機能する。衣類は柔らかく形も一定しないため、センサーで認識しづらく、アームでもうまくつかめないとされていたが、約10年にわたる試行錯誤で実用化にこぎつけた。阪根信一社長は「洗う、乾かすまでは自動化できても、畳むことだけが手つかずなのを何とかしたかった」と語る。
セブン・ドリーマーズによると、4人家族を想定した場合、もし1人が洗濯物の折り畳みなどを担ったとすると、一生の累計でその時間は約1年分にも匹敵するという。子育てや介護、共働きなど現代人は何かと忙しい。機械に任せてこの1年という時間が浮くのであれば、それはすごいことだ。休むなり、趣味に費やすなり、自己啓発に励むなり、いろいろと有意義に使えそうだ。
まずは「高級家電」として発売
課題もなくはない。まず大きさ。自動折り畳み機は高さ2メートル、横と奥行きが各70センチ。狭い我が家に新しく冷蔵庫を置くようなスペースをどうやって確保すればよいのか、悩ましい。ついで価格。当初は「高級家電」として売り出すとしており、結構な価格設定になりそうだ。
ただ、パナソニックなどの協力を得て、2019年には従来の洗濯乾燥機と自動折り畳み機が一体となった装置を発売する方針だ。内部機構の配置を見直せば、ほぼ上述した大きさのままで、一体型を作るのは可能という。自動折り畳み機の専用機だとややスペースを取る印象だが、洗濯乾燥機も込みであれば、今ある洗濯機と置き換えることで設置場所には困らなくてすみそうだ。
価格についても、本格普及期に入れば、コストダウンの徹底などで一体型で30万円以下、専用機で20万円以下を目指すという。「本格普及期」がいつなのかは現時点で明らかにされておらず、それはそれで大事な問題だが、この水準ならば利便性を考えると、出しても惜しくない金額と思う人も少なくないだろう。まさに時は金なりだ。
まだまだニーズは拾えそう
記者の周辺でも、折り畳み機に興味を持っている人は多い印象だ。皆が待ちに待っていた機能なのだろう。お掃除ロボやふとん掃除機などのアイデアで海外勢に先行され、めぼしいヒットに恵まれない日本の家電業界だが、まだまだ未解決の消費者のニーズは転がっていると思う。それを丹念に拾っていけば、十分成長できる余地はありそうだ。
と、すっかり洗濯物の折り畳み作業を邪魔者扱いしてきたものの、自分の幼いころを振り返ってみれば、話はやや別だ。母が居間で洗濯物を折り畳んでいる傍らで、ゴロゴロしたり、他愛のない話をしたりした家庭ならではのゆったりした空気感は子供にとっては悪い思い出ではない。右も左も何もかも効率化が善とされる気ぜわしい時代。家事負担軽減のメリットは計り知れないと理解しつつ、ちょっとだけ、複雑な気持ちにもなるのも正直なところだ。
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