量子力学の反常識と素粒子の自由意志 (岩波科学ライブラリー)
- 作者: 筒井泉
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/04/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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おもしろい! たまたまいまグリーン『隠された宇宙』を読んでいて、だれも観察できなくても、数式が存在するといったらそれは存在するのだという議論を延々と読まされ、首をかしげていたところだけれど、本書は観察されていないものは(それが月であっても)存在していないのだという話。さらにそこからあらわれるパラドックスについての説明のための仮説として、ぼくたち(そしてなんと、素粒子!)の自由意志が出てくるところは、まったくの不意打ちで驚愕。
観察したときには何があり、しないときにはない、というとパラドックスが生じるけれど、それは観察がランダムに、人の自由意志に応じて起こると考えるから。でもその観察行為が(量子的なあれこれで)すでに決まっていたら? あるいはその逆に、素粒子のほうにも自由意志があって完全にランダムでないとしたら?
これが(って、もう少しきちんとしたものだけど)今世紀になって出てきた「自由意志定理」なるものだそうな。予想外の問題提起をする理論の紹介ながら、なるほどそれでつじつまがあう、ような、気も、する。短いのに考えさせられるすごい本で、グリーンの二巻本に劣らないどころか勝るくらいのおもしろさを百ページ未満で味わえるお買い得な本。この著者に、M理論の多世界理論の妥当性について是非とも語ってほしいなあ。
あと、巻末の著者略歴は必読。
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