事業仕分け人 金田康正 東大大学院教授のトンデモ認識
先日から始まった行政刷新会議による事業仕分け。京速コンピュータ等の科学技術関連事業の見送り・縮小の評決が各方面から批判を受けておりますが、防衛関連でも自衛隊広報施設の予算削減、国際平和協力センター事業の廃止等厳しい評決が出ております。
そんな中、本日は自衛官の実員増要求、備品、被服、銃器類・弾薬のコスト等の戦力の根幹に関わるものの仕訳も行われましたが、仕分け結果はどれも削減を求める悲惨なものでした。
さて、この仕分け作業全体を通じて、様々なところで取り上げられる仕分け人達のズレた認識ですが、今回もかなり悪質な印象操作と同時にそれを露見させた方がいらっしゃいました。金田康正 東大大学院教授がその人です。ニコニコ生放送にて中継された金田教授の銃器・弾薬コストの仕分けにおける発言を録画してアップしましたので、以下の動画をご覧ください。
この金田教授、まず朝日新聞でのカラシニコフの記事を引き合いに出し、こう述べています。
ガチガチに作っていないがために、例えば泥水に浸かったとしても水で洗えばね撃てるだとか、要するに有事に即した作り方をしているちゅうんですよ。そういう観点から、おそらく国産の場合は非常に綺麗に磨かなきゃダメだとか、どうせその〜撃てばカスが溜まりますからその〜かなりその〜掃除しなきゃダメだということがあると思うんですが、そこらへんの観点で国産を選ばれていると思うのですが如何でしょうか。要するにカラシニコフみたいにほとんどメンテ、いや使ったことないから分かりませんけど、そういう観点、有事に即した形の銃器を選ばれているのかどうかちょっとお願いします。
もう無茶苦茶な認識です。金田教授の言う朝日新聞のカラシニコフの記事というのは、松本任一氏が朝日新聞に連載した「カラシニコフ」のことを指すと思われますが、そもそもまともに「カラシニコフ」の連載を読んでいればこんな発言は出てきません。例えば「国産銃は綺麗にしなくちゃいけない」、「掃除しなきゃダメ」のあたりは、撃った後に銃の掃除をするのはどこの国も当たり前の話で、朝日新聞の「カラシニコフ?」にも米軍将校の話として「M16は優秀な自動小銃だが、掃除をきちんとしていなければならない」と述べています。発射薬の燃焼ガスが腐食の原因になる為、まともな軍隊では銃の掃除は必須です。掃除が必須な銃は有事に即していないとでも言いたいのでしょうか。第一、AK-47にだってクリーニングロッドは付いています。
で、この質問に対し、防衛省担当者は89式小銃の部品点数が64式よりも少ないという形で考慮している旨を伝え、カラシニコフがどのくらい泥水に強いかまでは把握していないと伝えると、金田教授は以下の発言を行いました。
いや、それは調べられた方が良いと思いますよ。
なんかもう、カラシニコフの新聞記事すら読解することができない人が言えるセリフじゃないと思います。
なお、カラシニコフについての誤認識はまだ続きます。この誤認識は事業仕分けの場において悪質な印象操作に等しいものです。
インターネットで調べたら一丁30ドルから買えるというのもありましたからね。
ソースはgoogleですかそうですか。
これも金田教授自身が挙げた「カラシニコフ」の連載に価格は載っています。ロシアでのイズマッシュ社製AK-74の工場渡し価格は1丁120ドル、米軍がアフガニスタン国軍用に買ったルーマニア製AKは一丁250ドルです。銃価格の比較を行うなら、正規のルートでの価格を用いるべきで、崩壊国家からの流入品や密造品等が出回る闇市場での価格(闇市場でも30ドルは安すぎます。今のソマリアでは200ドルでも買えないとも「カラシニコフ」で出ています)を提示することは全くもって不適当であって、これを比較対象とすることは、自衛隊が闇市場より武器を調達しろと言っているのに等しいです。
なお、補足までに言いますと、この120ドルと安価な価格でロシア政府にAKを供給しているイズマッシュ社は現在経営危機の最中にあります。
今回の仕分けも相変わらず観ていて不快なものばかりでしたが、金田教授の誤った認識でずけずけと防衛官僚に「調べたほうがよい」と言える神経にはほとほと呆れました。
最後に一つ。金田教授に出汁にされてしまった朝日新聞の「カラシニコフ」ですが、この連載自体はカラシニコフを軸にしたアフリカ等の紛争地域を描きだす傑作ルポです。ニコニコ生放送で「朝日新聞の〜」と出てきたとき、一斉に批判的なコメントが流れていましたが、このルポは先入観を消してぜひ読んで頂きたいと思います。文庫化されて手ごろな価格で手に入りやすいのも○です。くれぐれも金田教授のようにならないように、真面目に読んでいってね!!!
※11/27追記:「仕分け」を「仕訳」と表記した個所がタイトルを含め多くありましたので修正致しました。