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ライトノベルに見る親子関係の稀薄さ

青少年の内面が見える?

しばらく前に「ヒロインが非処女のラノベはほぼ絶無?」ってエントリって書きましたが、ある意味それと似たような感じですかね。
最近読んだ本では「ハカナさんがきた!」とかでなかなかイカす「戦う親父」が出てきますが、あの親父にしても実の父ではないんですよね。つまりまともな精神状態にある「お父さん」、「お母さん」が出てくる話が非常に少ないなあ・・・なんて感じています。
最近結構違和感バリバリに感じているんですが、私が読んでいる本がそういう方向に偏っているというだけかも知れません。

という訳で

自分ひとりでそんな事を悶々と「こりゃ真実に違いないワイ!」とか考えていても意味が全くないので、主立った所をまとめてみたのです。一応条件として、

  1. 物語の舞台が一応現代社会を舞台にしているか、非常に近い未来(似たような異世界とか含む)のどこかである(父ちゃん母ちゃんが現役の王様とか女王様とかは無し)
  2. 主人公クラス(中心人物、または主な語り手)の親に限っている
  3. 主人公自身が親(みたいなもの含む)であるというのは禁止
  4. 最低でも同タイトルのシリーズが2巻以上出ている

という感じでしょうか。

まあまあ登場すると言っても良い作品
作品名 両親の出演 管理人のコメント
図書館戦争 両親とも 両親共に少しだけ登場する。親子関係に悩む描写などもあり。
荒野の恋 両親とも ただし血の繋がりがあるのは父のみ。母は基本的に他人から昇格。親子関係についてはきっちり描かれる。
影≒光 父のみ 主人公の乗り越えるべき壁として登場する。*1
えむえむっ! 母のみ 母親はかなりおかしい存在で、まともな母とは言い難い。
神様家族 両親とも 登場はするが、母親はかなりの変人。父は意外にまとも。*2
我が家のお稲荷さま 父のみ イラスト付きで登場。それなりに台詞もあったりする。
超鋼女セーラ 父のみ 父が登場する。一応父は親子関係に悩んだりもする。
電波的な彼女 母のみ 母親はかなりおかしい存在で、まともな母とは言い難いが登場回数はそこそこある。
新感覚魔法少女りすか             父のみ 父との繋がりは描かれるが、あまりまともな関係とは言い難い。
クインテット 父のみ 登場はするが、かなりの変人で親として機能していないと言って良い。
EX! 両親とも 登場はするが、かなりの変人としか描かれていない。
さよならピアノソナタ 父のみ 登場はするが、かなりの変人として描かれる。しかし、活躍する機会も。
ベン・トー 両親とも 一応父親は主人公が思い出す形で毎回登場するが、変態。
世界平和は一家団欒のあとに 両親とも 両親共に健在で、結構きっちりとその関係性が描かれる。
登場はしても、その親子関係の存在が物語上で希薄/放任/重視されないなどの状態で描かれる作品
作品名 両親の出演 管理人のコメント
イリヤの空、UFOの夏 両親とも     登場は(確か)するが、描写自体は希薄。
とある魔術の禁書目録 両親とも 両親は出てくるものの、登場機会はほとんど無い。*3
9S 父のみ 峰嶋勇次郎は由宇の父ではあるが、父親として機能していない。家族的な繋がりが描かれる事もほとんど無い。*4
とらドラ! 母のみ 竜児の母は登場するが、およそ母らしくなく、母として機能していない。また大河は家族関係が破綻している。
いぬかみっ! 父のみ ごきょうや繋がりで一瞬登場するが、啓太との関係は描かれない。
悪魔のミカタ 父のみ 父親は登場するが、ほとんど堂島コウは放置されているような状態。
鳥籠荘の今日も眠たい住人たち 父のみ 短編の一つで父親がメインで登場するが、訳あり。主人公の家族関係はほとんど描かれない。
ぼくと魔女式アポカリプス 父のみ 主人公の両親は登場しな(かったと思う)。砧川冥子の父は登場するが、歪んだ関係である。
風の聖痕 父のみ 登場はするが、主人公よりすでに弱い。母には捨てられているという関係のようだ。*5
アンダカの怪造学 父のみ 登場はするが、もう人間をやめている。
ハカナさんがきた! 父のみ 登場はするが、かなりの訳あり。主人公の精神的父は幼なじみの父親。
登場しないと言って良い(親子の会話などがない)
作品名 両親の出演 管理人のコメント
涼宮ハルヒの憂鬱 登場しない キョンハルヒ共に家族がいるはずだけど両親共に存在感が全くない。
フルメタル・パニック! 登場しない 宗介は両親共に不明、かなめは父親がいるが登場してない。
円環少女 登場しない メイゼル、仁の両親共に不在。
Cキューブ 登場しない 全くと言って良いほど両親の存在については描かれない。
ROOM NO.1301 登場しない 母親が出てくるシーンはあるが、一瞬だけ。不在と同じ。
化物語 登場しない 主人公の両親共に存在感が全くない。ただし戦場ヶ原ひたぎの父はしっかり登場するが、親子関係は希薄。
オオカミさんシリーズ 登場しない 主要キャラクターの両親は存在するはずだが、登場機会がない。
レジンキャストミルク                 登場しない 問題外。それはもう完全なる問題外。*6
ぷいぷい! 登場しない 主人公の両親は行方不明状態。シエラの両親も話には出てきても基本的に不在。
戯言シリーズ 登場しない 両親共に存在感が全くない。
登場しない 真九朗は両親と死別。親代わりのような存在がいる事は示唆されるが、会話シーンなどはほとんど無い。紫の親はムチャクチャ。
私立!三十三間堂学院!                 登場しない 両親共に存在感が全くない。死別?
神様のメモ帳 登場しない 両親共に存在感が全くない。
アスラクライン 登場しない 兄の存在は物語の中心にあるが、登場していない。
付喪堂骨董店 登場しない 両親共に存在感が全くない。
れでぃ×ばと! 登場しない 両親共に存在感が全くない。死別?
撲殺天使ドクロちゃん 登場しない 少なくとも主人公の草壁桜少年の両親は存在感が全くない。
マテリアルゴースト 登場しない? 両親共に存在感が全くない(3巻まで読了)。
学校の階段 登場しない? 両親共に存在しない(1巻まで読了)。
ご愁傷さま二ノ宮くん 登場しない 親替わりの姉は登場するが、普通ではない。
"文学少女"シリーズ 登場しない 死別。母代わりになっている女性はいるが、その関係は上手く言っていると言い難い。

こんな感じですか?

なんか思い出しつつ適当にまとめたから間違いが結構あるんではないかな〜。
まあ私の読んでいる本が偏っているという可能性はどうしても拭いきれませんので、何か気がつかれた方は是非コメントをお願いします。
ただ、作品に関しては明らかに少年向けのレーベルと思われる作品群(有名なライトノベルレーベルから)で、コメントがもらえると嬉しいですね。少年向けに限っているのは、少女向けレーベルを管理人が読んでいないためです。

取りあえず結論

ライトノベルにおいての両親の扱い
  1. 主人公の両親が共に登場したりする事が既にまれである(死別/別居など)。
  2. 両親/片親が登場する場合でも、その関係には何らかの歪みがあるか、あるいは空疎であるか、親そのものが常識はずれの変人か、親が全く役に立っていないかである。
  3. 両親/片親が登場する場合でも、親の視点から物語が描かれる事は非常にまれである。
  4. 両親/片親が登場する場合でも、それは主人公の両親ではない可能性が結構高い。
  5. 両親/片親が存在しているはずの場合でも、全く描かれない事も多い。
  6. 家族が登場する場合でも、主人公と心理的なやり取りが発生するのは兄弟姉妹止まりであることが多く、両親とはそれがない事が多い。
つまり

両親はライトノベルにおいてかなり適当に、軽く、あるいはただの記号として扱われる傾向がある
と言っていいかな?。調べてみてビックリ! 結構迫害されてますな。
ま、上のリストにピックアップした本/シリーズが既に偏っているという可能性が多々ありますので、この辺りの結論が変わってくる事はあり得るでしょう。

この結論から

複数の側面から論を進める事も出来そうです。導きだせる考察は色々とありそうですが、大まかには以下のような感じでしょうか。

  • 読者側の理由
    • ライトノベル自体が中高生をメインターゲットとしているので、ちょうど親離れを積極的に進めている(親が疎ましい)世代が読者であるために、両親の存在を希薄に描いた作品が読者に評価されて、そうした作品以外が淘汰されてしまう可能性
  • 作者側の理由
    • 両親の存在(あるいは大人の存在)をシリアスに描こうとすると基本的に「上から抑圧するもの」「危険から守るもの」「自由を奪うもの」「可能性を消すもの」として存在せざるを得ない*7ためにストーリーを作る上で障害となる。そのため意図的に存在を消されている可能性。
  • 現代社会の家族関係
    • 読者側、作者側ともに両親の存在(特に父親の存在)そのものが人格形成において希薄な社会状況になりつつある可能性。
  • パッと思いついた理由
    • 大人は分かってくれない」から。
    • 夢を忘れた古い地球人」は相手にしない。
    • ☆大人は見えない しゃかりきコロンブス」なのです。

とかでしょうかね?

・・・つーか

ちゃんと調べれば本が一冊書けそうな気がするなあ。いずれにしてもアプローチによって全く違うものになりそうですね。
まあその、私は下手するともう父になっていてもおかしくない世代なので、実際のところ現役の学生達がどのような心境で物語を受け止めているのかは興味がある所です。

おまけですけど

これはリストを作っている時に何となく感じた事ですが、ある程度まで「まとも/常識的な存在として」物語に両親/片親を登場させる場合、

  • 女性作家は父親を描く事が多い(「荒野の恋」「我が家のお稲荷さま」)ようです。
  • 男性作家はその逆(母親ではなく、大抵は姉/妹あたりで誤摩化しつつ母性を表現する)ようです。

その辺りを発達心理学とか青年心理学とかの方面から調査してもなかなか興味深い結果が得られそうですね。・・・まあ、推論に推論を重ねているので、かなり信頼性に欠ける直感ですけど。

追記

はてなブックマーク(ブックマークしてくれた方々、ありがとうございます。ブックマークが沢山ついてビックリです)のコメントで

ラノベについてまとめてるけど、ラノベ以外との統計差異もないと。。。」

とあったんですが、すいません! 私これしたくともできません!
何故かと言うと、ライトノベル以外の作品で「読んでいる数」「感想を記録している数」が全く違うためです。この辺りは知っている人に丸投げしたいです〜。

追記の追記

コメント欄で色々とやり取りをしていて思った事が、

  • 「〜という作品の親子関係は希薄ではないと思いますよ」という指摘が比較的多く
  • 大まかに言って「理由は『作者側の理由』じゃないかな〜?」という指摘が次いで多く
  • 「夢を忘れた古い地球人」だからというネタにまだ誰も突っ込んでくれない
  • コメント返しを私が仕事のメール以上に真面目にやっているという恐るべき事実(!)

ですかね〜。
しかしこんなに反応があるというのが一番の驚きでした。「親と子」っていうのはライトノベル読者層にとってそれなりにインパクトのあるテーマだったみたいですね。

*1:←コメントにて異議あり状態です。

*2:←コメントにて異議あり状態です。

*3:←コメントにて異議あり状態です。

*4:←コメントにて異議あり状態です。

*5:←コメントにて異議あり状態です。一部修正しました。

*6:←コメントにて異議あり状態です。

*7:悪魔のミカタ」とかで顕著ですね