取材もせずに辻元清美議員への名誉棄損記事を書いて*1、最近では植村隆インタビュー記事において自身と産経の過ちをさらけだしている阿比留瑠比論説委員*2。
そんな産経の有名人物が、今度は8月30日の安保法案反対デモへの論評記事を書いていた。
【阿比留瑠比の極言御免】国会前デモを礼賛する異様さ 沈黙する多数の安保法案賛成は民意に値しないとは…(1/3ページ) - 産経ニュース
一部メディアの過剰な反応がさっぱり分からない。主催者発表では約12万人だが、産経新聞の試算では3万2千人程度の参加者にとどまるこのデモが、どうしてそんなに重視されるのか。
普通は主催者発表をそれと報じて、別情報として警察発表もあわせるくらいのデモ人数で、わざわざ試算すること自体が意識している証拠と自覚していないのか。
昭和35年の日米安全保障条約改定時には、警視総監が首相官邸に岸信介首相を訪ねて「とても十分な警備ができないから、別のところに移ってくれ」と要請したこともある。デモ隊が岸氏の自宅の門をたたき壊して火をつけたものを敷地内に投げ込んだ場面もあったといい、それに比べても盛り上がりも緊迫度も雲泥の差だといえる。
この書きぶりでは、今回の安保法案反対デモもそうするべきだったかのようだ。もちろんそのように行動すれば「弾圧」されたことは間違いないだろう。無責任にもほどがある。
国民の負託を受けて議席を得た国会議員がなすべきは、デモに加わり、利用することではなくて審議を尽くすことではないのか。
これがデモではなくTV番組への出演であれば、どうだったろうか*3。
もともと、たいていの警察発表は、警備が必要な場所の人数を瞬間的に切りとったものだ。
たとえば、「さんさ祭」では主催者発表116万に対して警察発表16万という開きがあったが、主催者は「隣り合う通りに主会場の4割」と考えて加算していた一方、警察は入れかわりをまったく考慮していなかった。
asahi.com(朝日新聞社):祭りの人出、どうやって数えるの? -古典芸能 - 映画・音楽・芸能
▽250平方メートルのサンプルエリアを選び、実行委員がカウンターで人数を数える▽主会場が1万平方メートルなので、1万を250で割った40をかける▽開催時間の3時間で、4回人が入れ替わったとみなして4をかける▽さらに、隣り合う通りに主会場の4割の人が訪れたと見積もって、これも加える。「10年近く前までは目視が中心だったが、客観的なのかという指摘があり、今の方法に改めた」と実行委。
「われわれは安全確保が目的で数えているので、数え方も主催者と違う」という。各ポイントに配置した警察官が、一定面積あたりの人数を数えて密度を報告するほか、会場の「飽和状態」も考慮する。主催者の計算式にある「回転数」の4倍をかけることはしない。
産経の試算記事にしても、国会正門前に集まった人数にかぎって、しかも共同通信の写真からわりだしたもの。
安保法案反対デモ、本当の参加者数を本社が試算 - 産経ニュース
警察車両に機動隊員が15名並んでいることからその正方形(矢印部分)を約225人と試算。白枠の正方形はその16倍となり約3600人。白枠で囲った部分全てが埋め尽くされても、国会前に集まった集会参加者は約3万2千4百人となった=30日午後(共同通信社ヘリから)
この写真でも白枠の外に人間がいるし、撮影した範囲が最多という根拠すらない。別の時間に参加して、この写真を撮った時には映らなかった人間の存在も考慮すべきだろう。
そもそも安保法案反対デモで集まったのは国会正門前だけではなく、少なくとも日比谷公園から人の群れがつづいていたという。当日に撮影されたという映像を見ても、特に疑う必要は感じられない。
性質の異なる主催者発表と警察発表を安易に比べて、一方を虚報とみなして非難するならば、その行為こそが過ちであろう。
ちなみに産経新聞は2007年に朝日新聞と論争した時、沖縄県の決起集会で主催者発表をそれと明記してつたえた朝日新聞を事実誤認と批判しながら、実際は自身も主催者発表をつたえていたことがある。
産経抄、芸に徹する。 - 黙然日記(廃墟)*4
今日の産経抄は、「事実誤認と言うが朝日だって沖縄の県民集会を『主催者発表で11万人』と報じているじゃないか」として、これが事実誤認であることを必死で証明しようとします。しかし、「主催者が11万人と発表した」のは誰がどう見ても客観的な事実なのですから、これを事実誤認と言い張るのは難癖以外の何物でもありません
さて、「主催者発表の数字を垂れ流すな」と訴えている産経抄ですが、昨日の分を見てみましょう。
【産経抄】10月2日-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/87779/
先月29日に、沖縄県宜野湾(ぎのわん)市で開かれた集会のことだ。〜11万人(主催者発表)が参加した。