朝日新聞の早期退職制度「今辞めてくれたら年収の半分を10年間支給するよ」
続報はこちら⇒朝日新聞の早期退職制度に68人応募 退職金は1億近くのケースも - edgefirstのメモ
久しぶりに呆れたというか、開いた口が塞がらないネタ。業界誌FACTA6月号に出ていた朝日新聞社の早期退職募集の条件があまりにも大盤振る舞いなのでメモ。
朝日が実施する早期退職の正式名称は転進支援制度。45歳以上の社員が対象で、退職と引き換えにその時点の年収の半分を10年間保障する仕組みだ。関係者によれば、編集部門で45歳の年収はざっと1500万円。この年齢で早退に応じれば、毎年750万円10年間、総額にしておおよそ7500万円支給するという。同社の通常の退職金(60歳定年)は3500万〜4000万であり、今回はその倍額をはずむ大盤振る舞いだ。同業の読売、日経などにも早退制度はあるが、退職金の上積みは通常の1.5倍程度。朝日はこの厚遇によって100人以上、できれば200人規模の中高年社員の削減を狙う。社員の間では「予想より割増支給額が多いので、真剣に考える」「実家の仕事を手伝いながら詩でも書こうか」なおと前向きに受け止める向きが少なくないそうだ。
というのも、辞めずに残っても、この先、待遇が悪くなるのは目に見えているからだ。朝日は2011年4月実施をメドに大幅な賃下げを組合に提案した。給与ベースを2〜3割落とす厳しい内容だ。この結果、社員の生涯年収は3千万〜4千万減ることになる。すでにボーナスは3〜4割削減されており、いよいよ本丸というべき月給(基準内賃金)の削減に手をつけることになる。
(FACTA 2010年6月号 「何と極楽」朝日新聞の早期退職制)
もちろん早期退職をお願いする以上、倒産しかけている会社ではないのだから、退職金をある程度割増するのは普通なことである。しかし、出てきたのは年収の半分のお金を10年間働かなくとももらえるという、にわかには信じがたい制度。仮に45歳1500万円が大げさな数字で平均が1000万だったとしても、毎年働かなくても500万円もらえる。これならNPOや市民運動に身をささげようとか、適当に農業とか趣味で蕎麦でも打って店をやろうなんていう中高年社員が出てきてもおかしくない。記事中にもある「詩でも書こうか」なんて優雅な発言も納得。どうせ社内にいても暗い話題しかないだろうし。
「転進支援制度」という正式名称も面白い。さすがは太平洋戦争で大本営発表の戦果を煽った朝日新聞、と皮肉の一つも言いたくなる。「これは社および社員にとって“退却”じゃなくて“転進”なんですよ」とでも言いたいのかな。(追記・J-CASTニュースによると「転身支援制度」とのこと)
大手出版社の早期退職に応じた方のリアルタイム日誌であるたぬきちさんの「リストラなう」は、5月31日でついに完結したが、その中の「その11 来るべきものが来た――基本給カット」で社が提示した給与カットで「現在1100万程度の平均給与が840万くらいになる」ことが記されると、「今まで恵まれすぎていた自覚がないのが驚き」「世の中には手取り十数万円で過労死するほど奴隷扱いされてる人もいる」などとコメント欄は相当荒れた。では、その怒りのコメントを寄せた人たちがこの「45歳社員に総額7500万円を支給」という朝日の早期退職制度を知ったらどう反応するだろうか。たぬきちさんのように朝日新聞社版の「リストラなう」を立ち上げる猛者が出てきてくれたら面白いのだが。