ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」 (宝島社新書 307)
- 作者: 中川淳一郎
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2010/02/10
- メディア: 新書
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内容紹介
コミュニケーションが希薄化した現代は寂しがりやの時代。だからこそぬくもりを求めて、見知らぬ人と出合えるネット世界に依存する人も増えています。一方で匿名性が前提のネットはちょっとした感情の行き違いで「炎上」したり、相手が「クレーマー」になったりと粘着質な嫌がらせも起こります。そこで「炎上がなぜ起こるのか」「炎上が起こる原因」を類型化してわかりやすく説明します。またネットの罵倒で精神的に落ち込まないための解決法を盛り込みました。これを読めば、ネット依存症患者から身を守る方法がわかります!
あの『ウェブはバカと暇人のもの』の著者・中川淳一郎さんの新刊。
『ウェブはバカと暇人のもの』は、頷きすぎて首の骨が折れそうになりながら読んだのですが(まあ、僕も「バカと暇人のひとり」なんですけどね。こんなブログを延々とやっているくらいですから)、この『ウェブを炎上させるイタい人たち』にも、頷けるところがたくさんありました。
今回とくに槍玉にあがっているのは、現在大ブレイク中、ビジネス雑誌で特集されれば軒並み完売の『Twitter』。
だが、もう言いたいのである。
「意味のない発言しかできないバカに『自己表現』の名の下にゴミカス情報を撒き散らかすことを推奨するようなことを言わないでくれよ」「あなた達は書くべきことがたくさんあるかもしれないけど、書くことも特にない凡庸な人に余計な夢を与えないでくれよ。彼らを焦らせないでくれよ」「ツイッターは確かに面白いけど、一旦気になってしまうと、仕事にならないんだよ!あと、会議の途中でツイッターやってるヤツは迷惑でしかない」と。ツイッター関連書籍の中で、とあるツイッターユーザー(フリーランスで仕事をしている人)がいかにして活用しているかが記述されていたが、実際にその人と会議をしたことのある会社員によると「会議中、ロクに話も聞かず、会議の様子をつぶやいている。呆れてしまったけど、書籍の中では『すごい人』として描かれていて違和感を覚えた」という。
そもそも、ツイッターを日中だろうができる人というのは、誰からも怒られない「社長」や「フリーランスの人」「著名人」に限られる。会社員が会社でつぶやいていたらそれはそれで問題である。
いやまさにその通り!
「会議中、外に向かってつぶやくこと」ばかりに夢中になっている人は、周りからすればかなり迷惑なんじゃないかと思うんですよ。
けっこう「困った存在」じゃないのかなあ。
ちょっと前には、「みんなで食事中に『ブログに載せるため』とやたらと料理の写真を撮りたがる人」がいたのですけど、あれも「目の前にいる人」にとっては、料理は冷めるし、困ったものではありましたし。
さらには、こんな「ツイッター関連イベント」の光景も紹介されています。
09年12月15日、「Twitter Night vol.4 ツイッター本著者と2009年のつぶやき納め」というイベントが行われた。これは、09年にツイッター関連の書籍を書いた7人によるツイッターを語る会である。
このイベントは動画配信サービスUstreamで見たのだが、あまりにも牧歌的なのだ。こんな感じで進む。
司会者は「まずは『かんぱいなう』ですね」と言った。イベント会場は新宿ロフトで、飲食をしながらイベントを行えるようになっている。ここで言う「なう」とはツイッター用語で「今○○している」を表す。「かんぱいなう」の意味は「今、乾杯をしています」だ。
そして、司会者はこう続ける「みんな打ちましょう。 かんぱいなう で、ハッシュタグ #twn4」と。ここは「かんぱいなう」と打ち込んだ上で、共通のテーマで語ることのできるグルーピング機能である「ハッシュタグ」を指定した。
そして「みなさんOKですか!OKですか?まずはつぶやいてから乾杯ですからね。つぶやきが先ですからね。乾杯は後でいいですからね。いきますよ!」と続ける。会場の人々はこの時一斉に「かんぱいなう」と書き込み「投稿する」ボタンを押す。続いて「リアルをどんどん楽しくするツイッターに乾杯!」の声が出た。
ツイッター関連本に関しては書店で「ぜひ、知らないふりして、『ツイッターのコーナーありますか?』と聞いてください!」と呼びかけられた。ここにはツイッターを通じたまったりとした連帯感が存在し、和気藹々とした雰囲気で会は進行していった。いかにしてツイッターを楽しむか?といった話だけでなくビジネスとしての利用についてなど幅広く語られた。
僕はこの動画観てないんですけど、どう考えても、このイベントが面白いとは思えません。
というか、「何これ? 『かんぱいなう』って…… めんどくさい…… ちょっと新興宗教っぽくない?
「牧歌的」というより、いい大人がこんなことをやっているというのは、なんだか気持ち悪い……
正直なところ、『ウェブはバカと暇人のもの』を既に読んでいれば、あえてこれを読む必要はないかな、とは思います。
内容の根幹は、ほとんどおんなじだから。
ネットにストレスを感じていて、うっぷん晴らしをしたい人にとっては、中川さんの種々の「ネットイナゴやアルファブロガ―への厳しい批判」を読んでスッキリできるという効果はあるでしょうけど。
ネット越しに見た彼らと、「現実社会」から見た彼らの「実像」を、ここまで率直に書いている人は珍しい。
僕にとっては、良い「ストレス解消」になる本だったのですが、「勉強になる」という本ではなかったです。
「炎上防止対策」とか「荒らし対策」の項も、根本的には「スル―するか、ネットで発信することそのものを止める」という話で、目新しいものじゃないしね。
僕はずっとこういう「個人ブログ」をやってきて、最近ようやくわかってきたような気がするんですよ。
「ウェブではバカや暇人が目立つ」けれど、実際は、ウェブを支えている人の9割は、「生活のツールや気分転換の道具としてウェブとつきあっている、ごく普通の常識人」なのではないかって。
僕自身、さまざまな批判や罵倒にここで晒されてもいるのですが、このエントリのコメント欄でのやりとりを見て、僕はすごく嬉しかったのです。
ああ、しょっちゅうコメント書いたり、メールくれたりする人はいなくても、楽しみにしていたり、あたたかく見守ってくれたりしている人たちが、ちゃんといてくれるんだな、って。
僕も、よほどのことがないと他所のブログにコメントを書いたり、メールを送ったりはしません。
それは「嫌い」だからじゃなくて、そういう必要を感じていないだけのことです。
『2ちゃんねる』が韓国のネット有志によるサイバー攻撃にさらされており、その参加者が「1万人」という数字に驚いたのですが、これも、考えてみれば、「たったの1万人」でしかないわけです。
もちろん「多数」ではあるけれど、「大多数」ではない。
その「過激な1万人」を恐れるあまり、「韓国人は○○だ!」みたいなイメージを抱いてしまうことこそが、危険なんじゃないかなあ。
「イスラム教徒はみんなテロリストだ!」っていうごく一部のアメリカ人の偏見を、多くの「知性的なネットの民」は笑い飛ばすはず。
にもかかわらず、自分の「偏見」には気付こうとしない。
ウェブを支えているのは、たぶん、僕やあなたと同じような、ちょっとバカで、ちょっと暇な「普通の人」ですよ。
僕は、仕事や日々の生活に疲れた「普通の人」たちが、休憩時間や寝る前にちょっと覗いて、一瞬だけ「ああ、この人またこんなこと書いてるなあ」と思って、すぐに忘れてしまう、そんなブログを続けていきたい。
『ウェブはバカと暇人のもの』のときは、「ネットの理想を語るふりをして、多くの『語るべきものを持たない人々』に、プレッシャーを与えて商売をしていたアルファブロガ―たち」、そして、「失うものがないと勘違いして、自分のアイデンティティをウェブでの迷惑行為に見出してしまった連中」へのカウンターパンチとして、中川淳一郎さんの主張は価値あるものだったと思います。
あの新書には、「語らずにはいられない、抑えられない感情」が伝わってくるものがありました。
でも、今回は、「商売にするための批判や罵倒」に感じられる部分が多いし、
で、ネットである。OECDと経済社会総合研究所による日本人の一人当たりGDPを見ると、1992年から97年までルクセンブルク、スイス、ノルウェーとともにトップ4に常にランクインしていた。98年には前年の山一證券破綻などもあり、6位に落ちた。そして02年、8位に落ち、03年は9位に。以後12位(04年)、15位(05年)、18位(06年)、19位(07年)、そして08年の23位まで落ち続けるのである。
単なる偶然かもしれないが、この凋落は日本における爆発的なブロードバンドと1999年に開始したi-modeをはじめとする携帯電話によるネットのユーザー数増加と妙に反比例する。総務省のデータによると、97年に1155万人だったネットユーザーは以後1694万人(98年)、2706万人(99年)、4708万人(2000年)、5593万人(01年)、6942万人(02年)、7730万人(03年)、7948万人(04年)、8529万人(05年)、8754万人(06年)、8811万人(07年)、9091万人(08年)と増加した。i-modeは2000年にユーザー数が1000万人を突破した。
注目したいのがブロードバンドが普及し、ネットユーザーが爆発的に増え始めた01年と、ブログが普及し、誰でも簡単に情報発信ができるようになった04年である。01年の翌年である02年にGDPは8位に落ち、ブログが爆発的に普及した04年に前年の9位から14位に落ち、以後惨憺たる状況になっている。
のように「統計学的な分析としてはあまりに杜撰なモデルにもかかわらず、『相関』があるように誤解させる記述」もあり、不誠実な印象も受けるのです。
(そもそも、この時期にインターネットが「一般化」しているのは、日本だけじゃないのに!)
中川さんはけっしてバカじゃない人だと思うので、「わざとやっている」のだと思うのですよ。でも、ネタとしてやっているのだとすれば、あまりにも悪質。
『ネットはバカと暇人のもの』は、「ネット中毒者」ならば、「ネット上でのいろんな感想や批判を読む前に、一度は自分で読んでみたほうが良い本」だと僕は思います。
まちがいなく、「ネットの不都合な真実」が書かれている本だから。
でも、この『ウェブを炎上させるイタい人たち』は、「ネット批判を飯のタネにしている芸人の本」にしかみえなかったのです。
結局、「ネット理想論者のアルファブロガ―」と中川淳一郎さんは、勝間和代さんと香山リカさんと同じような「論争による相互プロモーション」の関係になってしまっているのではないかと。
もちろん、最初からそれを狙っていたわけではないと思うけれど、「儲かる」ことがわかれば、「仲良くケンカする」ようになってしまうのか……