「天候不順で景気低迷」なんて大ウソ!消費増税の影響無視した内閣府の「素人分析」を暴く
最近の景気低迷について、政府は、消費増税による影響を無視して、天候不順によると主張している。内閣府は、今年の天候不順が経済に与えた影響について、1日に開かれた経済財政諮問会議に報告した。それによれば、今夏の天候不順(低温・多雨)によって、7-9月の個人消費に与える影響は、▲0.2~▲0.7兆円程度。これを7-9月期のGDPでみると、年率換算で▲0.8~▲2.4%ポイント押し下げることになる。
甘利明・経済財政相は1日の記者会見で面白いことを言っている(→こちら)。
「7-9月期の民間見通しが4%です。これが仮に天候要因を加味したものであるならば、天候要因がなければ5.6%ということになるということでありますし、天候要因を加味していないのであるならば、それは2.4%になるということだと思います」
天候要因が景気に与える影響がこれだけ大きいなら、これからエコノミストは気象予報士の資格を義務付けないとまずいでしょう。ところで、4-6月期を大きく外したエコノミスト(→8月18日付の本コラム参照)であるが、事前に天候要因を言わずに、外れたら後で天候要因というのは〝後出しじゃんけん〟である。その後出しじゃんけんを、図らずも甘利経済財政相がばらしてしまったので、笑えた記者会見だった。
まじめに考えて天候要因はどのくらい景気に影響するのだろうか。
もちろん個別の業界では天候は死活問題になることもある。かつて筆者が大蔵省にいた時、酒税収の正確な予測を依頼された。ビールについては夏の気温で大きく消費量が左右されるので、天気の長期予想を織り込んで、税収予測を行ったこともある。
ただ、マクロ経済では天候要因をあまり考慮することはなかった。内閣府は一体どのように、天候の影響をマクロ経済と結びつけているのだろうか。
今夏は特に「低温・多雨」ではなかった
経済財政諮問会議に報告した資料は公開されている(→PDFはこちら)。それによれば、基本的には、①気温が夏物商品等(気温による影響が大きい品目)に与える影響試算と、②降水量が消費に与える影響試算によっている。この両者で影響額は▲0.7兆円なので、最大影響になっている。
資料では、①の影響額は▲0.5兆円、②は▲0.2兆円となっている。両者の推計方法は異なっており、①は〈総務省「家計調査」等により、平均気温が、飲料、酒類、アイスクリーム、外食、白物家電、電気代の消費支出に与える影響を推計。それぞれの影響額を積み上げ〉とミクロ的な手法で、②は〈内閣府「国民経済計算」等により、降水量が個人消費に与える影響を推計〉とマクロ的になっている。