たとえ財務省の「悪知恵」であっても、「消費増税なら還付金」は低所得層向け政策として正しい!
こればかりは、財務省が正しい
2017年4月の消費税再引き上げを目指して、財務省が後で増税分を還付する負担軽減策を打ち出した。与党の中には「これまで検討してきた軽減税率とは違う」という慎重論もある。だが、本来の目的である低所得者対策としては評価できる。問題は実際に増税するかどうか、だ。
はじめに断っておくが、私が財務省の味方をすることはめったにない(笑)。自分でも記憶にないから、おそらくこれが初めてだ。だが、基本的には筋が通った政策と思うから仕方ない。率直に評価しよう。
そもそも軽減税率はなぜ必要なのか。それは消費税が低所得者に厳しい逆進性をもっているからだ。たとえば所得が年間300万円の家計と3000万円の家計がいたとする。どちらも食料品のような生活必需品にはそれなりに支出する。
300万円の家計が食費に年間60万円の支出をすれば、その分の消費税負担は税率10%なら6万円だ。一方、3000万円の家計が食費に150万円支出したとすれば、消費税は15万円である。300万円の家計にとって6万円の消費税は2%に相当するが、3000万円の家計にとって15万円はわずか0.5%にすぎない。
つまり、低所得者の方が相対的に消費税の負担感が重くなる。消費税率が低い時は「まあまあ」といって逆進性問題に触れてこなかったが、10%となると、さすがに無視できない。そこで与党が「さて、どうするか」と議論してきたのが、生活必需品には軽減税率を適用しようという案だった。
たとえば「食料品は10%に引き上げないで8%のまま据え置こう」という話だが、一口に食料品といってもコメ、味噌、醤油から缶詰、加工食品まで幅広い。コメはまけても、せんべいはどうするんだとなって、10%と8%の線引きラインなどが自民、公明の与党協議でまとまらなかった。
そこで困った与党が財務省に「なんとかしろ」と言って丸投げした結果、財務省が知恵を絞って出してきたのが今回の案だ。酒を除くすべての飲食料品に10%の消費税を適用したうえで、後で飲食料品分にかかる増税の2%を還付する方式である。