「国債金利の上昇=日本国の破綻」
は間違っている
政府債務は長期的視野で考えるべき
最近、日本が破綻するのではないかという話が良く出てくる。実はこうした話はこれまでもよくあったが、今度こそ本当だというのである(これまでも今度こそだった!)。
まず、重要なのは言葉の定義をしっかりしておくことだ。例えば、日本が破綻するという人は、「国の破綻とは国債の暴落だ」というケースが多い。では、国債の暴落とは何かといえば、もちろん、国債価格が急落することである。
典型的な10年国債について、現在の金利は1.4%程度だが、もし5%になれば、国債価格は25%以上低下する。金利が10%になれば、国債価格は50%以上低下する。
暴落とは、どのくらいの期間で国債価格が何%低下することをいうのか。これを明確にしない限り、議論をしても意味がない。
25%くらい低下することを「暴落」というのなら、もし日本経済が本格的に回復すれば確実に「暴落」する。つまり、日本がノーマルな成長をして名目成長率が4~5%になれば、国債金利も4~5%くらいになるからだ。
ただし、その場合にはGDPも増え、税収も上がっているので、財政問題は改善している。事実、かつて名目成長率が4~5%のときには、国債の金利が4~5%であっても、財政問題は生じなかった。
現在のデフレ状況、すなわち名目経済成長率がゼロまたはマイナスの世界に慣れ親しんでしまい、金利の上昇に敏感になりすぎている人が多いというのが実態なのである。
では、国が破綻するとは、一体どういう状況を考えたらいいのか。一つの有力な考え方として、債務残高対名目GDPがドンドン大きくなって発散的に増加することだ。たとえば国債金利が5%になって国債価格が25%くらい下がったとしても、債務残高対名目GDPは発散するわけでないので、「国の破綻」とはいえない。
官僚の「すり替えのテクニック」に騙されるな
ただ、ここで注意しなければいけないのは、債務残高の定義だ。
マスコミ報道をみると、これをきちんと理解していないものが多い。役所がしばしば行う言葉のすり替えテクニックであるが、同じような言葉なのに、その時その場で都合良く定義を変えるのだ。
たとえば債務残高については、国の債務だけなのか、地方まで含むのか、長期債務だけなのか、短期債務まで含むのか、それぞれを使い分ける「すり替えテクニック」のパターンがある。
債務については、国の普通国債(600)、財投債(129)、交付・出資国債(4)、借入金(56)、政府短期証券(142)、地方・公営企業債・交付税特会借入金(198)という数字がある(かっこ内の単位兆円、2009年度末)。総政府債務残高というときには国の普通国債、財投債、交付・出資国債、借入金、政府短期証券の合計で991兆円。