欧州全土を襲った大寒波
今年のドイツは、寒気、大雪、強風と三拍子揃った過酷な冬となった。
北極圏の冷たい空気は、通常ならば一旦ノルウェー海あたりに出て、少し温度を上げるのだそうだが、今回は海上を経由しないまま、直接ヨーロッパ大陸に流れ込んだ。
その影響で、ロシアや北欧だけでなく、中・東・南欧、バルカン半島、そしてアフリア北部までが、すっぽりと大寒気に包み込まれた。しかも、その極端な寒さが、3週間ものあいだ居座ったのである。
1月4日には、ヨーロッパのハブ空港の一つであるイスタンブール空港が吹雪で閉鎖された。12日からは、ヨーロッパの広範囲を猛烈な吹雪が襲い、各地で大きな被害を出した。
最低気温はノルウェーのマイナス42.4度、チェコのマイナス35.2度、バルカン半島はセルビアのマイナス33度など。一番極端だったのは、1月7日のアルバニア南部Bulquzaのマイナス22度。この地方の通常の1月の平均気温は1−2度だ。今年の記録は歴史的なものになるだろう。
ドイツでもマイナス30度台を計測した。私の住むシュトゥットガルトも、昼間もずっと零下が続いた。
ドイツでの一番の問題は道路の凍結だった。条件によっては、道路は一瞬のうちに薄い氷の膜で覆われ、スケートリンクのようにツルツルになる。大気の湿り具合などから、凍結はかなりの確率で予報できるため、車には乗るなという警告がたびたび出されたが、それでも事故は起きた。
もちろん歩行者の転倒も相次いだ。ひどい時には、警察は数分おきに出動要請を受けたというが、ニュースの映像では、その警官も事故現場でツルツル滑って四苦八苦していた。
ただ、ロシアやスカンジナビアやドイツがいくら寒くなろうとも、人々は長年の勘があるのでそれほど悲惨なことにはならない。しかし、普段なら真冬でも平均気温がプラスの地域が、突然、冷凍庫と化せば話は別だ。ホームレスの人々だけでなく、屋内でも凍死する者が出てくる。
一番気の毒なのは、バルカン半島のあちこちで足止めを食らっている難民たちだった。