足りない睡眠時間を埋めるにはどうしたらいいのか?
By manos_simonides
慢性的な睡眠不足は脳の神経にダメージを与えることが明らかになっていますが、日々のタスクや自分のやりたいことを優先しているうちに睡眠時間が削られていく、というのはよくあること。しかし、成人に毎日必要とされる7~8時間の睡眠が十分にとれていない、という人も多々いるはずです。そんな睡眠時間が足りていない人たちはどうすべきなのか、そもそも睡眠についての正しい認識とはどういったものなのか、といった「睡眠に関するさまざまな疑問」を、Railroaders' Guide to Healthy Sleepが解決しています。
How to Avoid Sleep Debt | Railroaders' Guide to Healthy Sleep
http://healthysleep.med.harvard.edu/railroad-sleep/getting-sleep/sleep-debt
「Railroaders' Guide to Healthy Sleep」は、アメリカ国立運輸機構VolpeのJohn A. Volpe氏やアメリカの連邦鉄道局(FRA)、WGBHなどがハーバード大学医学大学院のDivision of Sleep Medicineに所属する睡眠のエキスパートたちと協力して作成しているウェブサイトです。このウェブサイトでは、不規則な生活になりがちな鉄道員のために、正しい睡眠方法や睡眠に関する知識を公開しています。
◆睡眠負債とは
睡眠不足が何日も続くと、借金のように積み重なっていき、人間の気力や体力を低下させ、日々のパフォーマンスを低下させることになります。この睡眠不足が続いて蓄積された状態を睡眠負債と呼びます。例えば毎日1時間の睡眠時間を削ったならば、数日後には1日徹夜した時と同じくらい日中のパフォーマンスが低下してしまうことになります。
By Jason Eppink
また、睡眠負債はすぐに返済不可能なレベルにまで積み重なってしまい、これは週末に数時間多めに寝たくらいでは返却しきれないとのこと。さらに、大抵の人たちはこの睡眠負債が日中のパフォーマンスに及ぼす影響力を過小評価しています。
睡眠不足が数日間続いた場合、本人が大丈夫だと思っていても、実際には目が覚めていなかったりパフォーマンスがガクッと低下していたりします。1日平均5時間半の睡眠しかとっていない場合、睡眠負債はあっという間にたまってしまいます。以下のグラフは睡眠時間が少ないと、睡眠負債や疲労がいかにたまりやすいかを表したグラフです。グラフでは縦軸が睡眠負債、横軸が時間を表しており、毎日の睡眠時間が短いといかに睡眠負債がたまっていくのかが分かります。そしてこの睡眠負債がたまればたまる程、さまざまなリスクが高まってしまうのです。
「Railroaders' Guide to Healthy Sleep」いわく、「睡眠負債は人間が重りを担いで歩くようなもので、動作を遅くし、より疲れやすくなる」とのこと。また、新陳代謝や血糖調整、健康的な体重維持などを阻害することにもなるようです。
◆適切な睡眠時間とは
より良いパフォーマンスを発揮するには、成人の場合毎日7~8時間の睡眠をとる必要があります。しかし、誰もが異なる身長・体重をしているように、個々人でベストの睡眠時間というのは微妙に異なるものです。100人中5人くらいは毎日7時間以下の睡眠しかとっていなくても最高のパフォーマンスを発揮できるかもしれませんが、中には9時間以上の睡眠をとらなければ、体をよく休めたという感覚になれない人もいるかもしれず、適切な睡眠時間というものは人それぞれで異なるものです。
各自の適切な睡眠時間を知るためには、睡眠時間を2週間程度記録して平均の睡眠時間や体調・疲労度合い・起床時間などを記録する必要があります。体が疲れていたりする場合は、その平均睡眠時間よりも多くの睡眠をとる必要がある、ということ。そして自分にとって適切な睡眠時間を知るには「起床時にどう感じたか」といった点が非常に重要で、これをしっかりと知覚することが自分がどれくらいの睡眠時間をとらなければいけないのかを理解するための第一歩になるようです。
By tifotter
また自分にとってベストの睡眠時間を理解するためには、同じ場所にとどまり、毎日同じ時間に寝るのがベストです。その際、最初の数日間は寝不足を回復するためのものになるかもしれないので注意が必要です。その補充期間が終わった後は毎日同じ時間にベッドに向かい、アラームなしで自然に起きるまで寝ればOK。そして一週間以上に渡って睡眠時間を記録しておき、その結果算出された平均睡眠時間が、個々人にとって適切な睡眠時間になるとのこと。
規則正しく毎日同じ時間に就寝と起床を繰り返す生活をしている人がいれば、毎日就寝時間や起床時間がバラバラになってしまう人もいます。しかし、人間は昼間活動し夜は寝る、といった具合に体がプログラムされているので、夜に働く場合は万全な状態で日中働くよりもパフォーマンスが低下してしまいます。なので、夜に働く人たちは毎日の覚醒と睡眠のリズムをうまくコントロールしてあげる必要があるとのこと。
By Dan Foy
◆十分な睡眠をとっていますか?
適切な睡眠時間だけしっかりと睡眠をとった場合、脳はフル充電された状態になります。しっかりと睡眠をとれている場合、1日の約15時間しっかりと脳が稼働しますが、ベストな睡眠時間よりも2時間少ない睡眠しかできていない場合、脳はベストの状態にまで回復しておらず、すぐに眠くなったりパフォーマンスが低下してしまったりするわけです。
さらに睡眠不足が重なると、睡眠負債がどんどん積み重なることになります。そして睡眠負債が積み重なれば、人のパフォーマンスはまるで重い石を背中に担いでいるかのように低下していきます。一週間の睡眠時間を足して56(8時間×7日間という一週間正しい睡眠時間をとった場合)から引いてみると、どれくらい睡眠時間が足りていないのかが分かるわけ。
By Russell James Smith
◆睡眠についての作り話
人間は「しっかりとした睡眠をとる」ということがいかに大切かを簡単に忘れがちで、一日中「疲れた」と感じることにも慣れています。さらに、しばしば睡眠に関する作り話を盲信してしまうものなので、以下のような睡眠に関するただの作り話には気をつける必要があります。
1:休みの日に回復できる
2、3日たっぷりと寝れば、多少の睡眠負債は返済可能ですが、負債が何日間も何週間にも渡って積み重ねられている場合、週末にたくさん睡眠をとった程度では返済しきれないくらいの睡眠負債がたまってしまいます。さらに、1日かけてたくさんの睡眠をとった場合、体内時計は狂ってしまうので困ったものです。
これの解決方法としては、1度にたくさんの睡眠時間を確保するのではなく、昼寝などを使って寝不足を解消するのがより効果的です。
2:いつも6時間以下しか寝ていないけど元気だよ?
ひょっとすると、25人に1人くらいは1日6時間の睡眠でも十分なパフォーマンスを発揮できるかもしれません。しかし、ある研究で健康的な若い男性に5日間平均6~7時間(ベストの睡眠時間よりも1時間少ない睡眠時間)の睡眠をとってもらった後にテストを受けてもらったところ、徹夜明けにテストを受けた際と同じくらい悪い結果が出たとのこと。
3:自分がどれくらい疲れているかは自分で分かる
ウトウトしているのに「眠くない」といったり、たくさんお酒を飲んでいるのに「全然飲んでいない」と思ってしまうように、睡眠時間が足りていない人は、自分が眠いのかどうかを認識することができなくなっています。そして、しっかり睡眠をとっているときとのパフォーマンスの差にも気づくことができません。
4:睡眠時間が1、2時間削られる程度ならばたいしたことはない
睡眠負債は目や手の動き、さらに意志決定を鈍らせてミスを増やします。そして慢性的な睡眠負債は肉体にも悪影響を及ぼし、血糖調整がうまくいかなくなり、肥満や尿病、心臓病やその他の病気にかかる可能性が高まる、とのこと。
ハーバード大学のNurses' Health Studyの調査によると、1日平均5時間以下の睡眠しかとっていない人たちの平均体重は1日平均7時間の睡眠をとっている人たちよりも重かったそうです。
◆睡眠負債をためない方法
1度たまりだすと恐ろしげな睡眠負債ですが、これをためないようにするための方法は以下の通り。
・睡眠を優先する
例えば睡眠と仕事、家庭などなどの中からどれかを選択しなければいけない場合、自分の睡眠負債がどれくらいたまっているのかを考慮しながら、自分を危険にさらすような選択肢はしないようにしてください、とのこと。
・可能な時には昼寝を
1日に必要な睡眠時間を確保できなかった場合は、できる限り早くその不足分を補おうとするのが効果的。昼寝については完璧な昼寝をするための方法を読んでおけばOK。
By Adam Burt
・周りの協力を受ける
十分な睡眠がとれるように、家族やパートナーに協力を求めるのも良い方法とのこと。協力を求めると言っても「寝ている周りでは静かにする」だとか「睡眠用の防音部屋を作成する」などではなく、しっかりとした睡眠がとれる日を設けられるように協力し合う、ということです。
By posixeleni
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