木星は地球を作り、今も守り続けてくれている
by NASA Goddard Space Flight Center
太陽系にあり、内側から5番目の公転軌道を周回する木星は、ガスを主成分とし、質量は地球の318倍もあると言われています。実はこの木星は地球誕生に大きく関わっていただけではなく、現在も地球を守ってくれているのではないか、という学説があり、その内容がアニメーションでわかりやすく解説されています。
What If Jupiter Never Existed? - YouTube
科学者たちは過去数十年で太陽系の外にある系外惑星を1000個以上発見してきました。そしてこれら系外惑星を観測するうちに、銀河系では地球よりも大きな惑星が恒星のすぐ近くを周回するのが標準的であるにも関わらず、太陽の周りには大きな惑星がないことに気づきます。
1995年、太陽以外の恒星の軌道を回る太陽系外惑星としてペガスス座51番星bが初めて発見されました。
ペガスス座51番星bの質量は木星の半分ほどで、地球と太陽の距離の約20倍も近い距離で、恒星の周りを回っています。親星から近い軌道を公転していているため、強烈な恒星光を浴びて表面温度が高温になっており、ホット・ジュピターと呼ばれています。銀河系の恒星の周りには、通常はホット・ジュピターがたくさんあるわけです。
では、どうして太陽系においては巨大な星が太陽から遠く離れた場所にあるのでしょうか?この問いに対して、科学者らは仮説を導き出しています。
それが「WANDERING JUPITER(放浪する木星)」という考え方。
ある科学者によると太陽系がまだ生まれて間もないころ、太陽の回りには地球の数倍程度の質量を持つ「スーパー・アース」という惑星が周回していました。
しかし、あるとき木星がやってきて周回する惑星の重力を変えてしまったとのこと。
木星の登場によって惑星たちは至るところで衝突しあい……
砕け散った破片は……
太陽に引きつけられて飲み込まれ、太陽系の内部には惑星がほとんどなくなってしまいます。
そして、土星が形成されるに伴って木星は再び太陽のもとを離れ、残された惑星の破片がくっつき合うことで岩石惑星が誕生しました。
この時できたのが水星・金星・地球・火星といった星々です。この説は「なぜ太陽から離れたところにある巨大ガス惑星よりも太陽に近い星の方が若いのか」という謎を説明します。
この説によると、もし木星が存在しなければ、現在地球上にある生命は存在しないことになります。
もちろん惑星に生命が生まれる可能性が全くない、とは断言できないのですが、少なくとも木星が原始太陽系のスーパー・アースを破壊しなければ、地球は形成されていませんでした。
また、木星は地球の誕生に関わっただけではありません。過去十年間に木星が彗星や小惑星に衝突している様子が5回ほど確認されていますが、この結果、現在も地球が木星に守られているという状態になっています。
以下の画像に写っているのは2016年3月17日に撮影された木星の映像。矢印の示す先で、小さな物体が木星に衝突していることがわかります。
科学者らは、木星と小惑星の衝突は1カ月に5回ほど起こっていると予測していますが……
これは木星が大きな重力を持っているため。地球の代わりに彗星や小惑星を引きつけて衝突を受け止めてくれているわけです。
ただし学説の中には木星が彗星や小惑星を地球のもとへと誘導して大惨事が起こってしまう可能性を示すものもあります。
とはいえ、木星が存在するからこそ、現在の地球や生き物たちが存在するのは確か。遙か宇宙の彼方にある惑星ですが、地球は木星から多大なる恩恵を受けているわけです。
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