大学入試が本格化するこのシーズン、「自由の学風」を謳う京都大学で必ず起こる不思議な現象があります。それは、何らかのキャラクターを象ったハリボテ像の出現。通称「折田先生像」と呼ばれるこの像(?)は、地元新聞でも毎年取り上げられ、京大生の間のみならず、受験生、京都人、ネットユーザーなど、さまざまな人の間で話題になっています。一体、折田先生像とは何なのでしょうか。歴史から紐とき、ナゾに迫ります。
■折田先生とは?
▽折田彦市 - Wikipedia
この一連の騒動のもとになる人物、折田先生とは折田彦市氏のこと。氏は、現在の京都大学の前身の一つとなった旧制高等学校「第三高等学校」の初代校長を長年に渡って務め上げ、現在も息づく京都大学の自由な学風を築いた人物です。学生自治で知られる京都大学の基盤を作った氏が、なぜハリボテ像のモチーフになっているのでしょうか。
■銅像に直接装飾していた初期
▽折田先生像 - Wikipedia
▽先生(像)年表
折田先生像の歴史は深く、一番最初に設立されたのは1940年。三高卒業生有志者の寄付により、銅像が制作されましたが、翌1941年、太平洋戦争の金属供出により撤去され、その代わりに石膏像が設置。その後同窓会有志の寄付により再び銅像が制作され、1950年に京都大学総合人間学部(旧教養部)A号館前に設置されました。
しかし1985年~1986年頃から、何者かによる銅像への落書きや装飾が頻発するようになりました。ペンキで顔を真っ赤に塗られたり、自転車を担いでいたり、太陽の塔にされたり、と、同大学の「自由の学風」を象徴するかのように銅像へのいたずらが続きました。学風が学風だけに強制的な策を講じるわけにもいかず、大学側は装飾の度に清掃を行っていたようです。
そんなやりとりが10年ほど続いた1994年、ついにとある看板が出現しました。
折田彦市先生は
第三高等学校の校長として
京大の創設に尽力し、
京大に自由の学風を
築くために多大な功績を残した人です。
どうかこの像を汚さないで下さい。総合人間学部
切実に訴えたこの看板もむなしく、その後もいたずらは続きました。この装飾が原因かどうかは不明ですが、1997年ついに大学側は折田先生像を撤去し、銅像を総合人間学部図書館の地下に収納しました。これにて一件落着と思いきや…?
■銅像撤去、その後…
▽京の風物詩 折田先生像がライダーマンになって今年も登場 - はてなブックマークニュース
▽京都大学入試シーズンの風物詩・折田先生像、今年は「てんどんまん」 - GIGAZINE
本物の折田先生像が撤去されたのち現れたのは、ハリボテの像。台座や前述した看板のパロディまで手がけるこのハリボテ像は、近年では、毎年受験生の目に触れる2次試験にあわせて、吉田南キャンパスに出現するようになりました。過去には「ひょっこりひょうたん島」のサンデー先生、「ちびまる子ちゃん」の永沢君、「アンパンマン」のてんどんまんなどを模した像が置かれ、その度に看板の文言も変わっています。
■今年の折田先生像は?
▽今年の折田先生@京大 on Twitpic
▽貯豆庫 速報!折田先生像
そんな折田先生像は、もちろん今年も出現。「ポケットモンスター」に登場する「タケシ」を模しており、
折田彦一先生はニビシティのジムリーダーとして
いわポケモンの育成に尽力し、
京大にわざマシン34を普及させるために
多大な功績を残した人です。
どうかゼニガメを選ばないで下さい。イワーク
というパロディ看板も立てられています。ポケモンの世界と京大のキャンパスを揶揄しているのでしょうか。ちなみに、今年の設置は深夜3:30頃だったようです。
■現役京大生に質問!誰がやっているの?
毎年出現する折田先生像について、関係者はどう思っているのでしょうか。そして、気になる実行者とは?現役京大生のはてなアルバイター・id:ze-kiに話を聞いてみました!
折田先生像のことは知っていますか?
――もちろんです。2次試験の日程が近付いてくると「今年は何かな~」って。今年はTwitterでも話題になっていましたね。「鳩山首相なんじゃ」っていう予想もありました。
ずばり、実行グループは誰なんですか?
――「あいつらなんじゃない?」っていう団体はあるんですが、名称は不明です。作業は深夜に行われているみたいですが、設置中も顔を隠しているわけでもないので、見ている人もいるみたいですよ。
折田先生像についてコメントを!
――京大生はもちろん、受験生にも認知度が高いし、何より京大らしいのでこれからも楽しみにしています。
数々の歴史を辿り有名になった折田先生像。ユニークな教育方法を実施している京都大学だからこそ、根付いた現象なのではないでしょうか。ちなみに、2003年より看板の裏にはこっそりグラビアアイドルの写真も貼られているようです。これを見るのはかなり濃い折田先生像マニアなんだとか。昨年は優木まおみさんだったようですが、果たして今年は…?機会があれば、ぜひその目で確かめてください。