先々週,ブログツールの草分け,シックス・アパートの記者発表会に行きました。お題は「VOX」という個人向けの新しいブログサービスだったのですが,プレゼンを聞いているうち,「ブログって何だろう」と改めて考えてしまいました。

 私はおそらく「個人ブログ」からかなり遠い場所にいる人間です。職業こそ「記者」ですが,業務を離れると筋金入りの筆無精。年賀状が精一杯という状況で,ましてや日記などは,はるか昔の夏休みの宿題以外,書いたことがありません。

 周囲にはブロガーや,mixiのパワーユーザーがあふれており,私も一度は触ってみました。ですが,どちらも開店即休業状態。個人で商売をしているとか,同好の仲間と情報を共有する,といった明確な目的でもあれば続くかも知れませんが,それほどの動機は見つかりません。

 考えてみれば,ブログだろうが,mixiだろうが,本質的に「日記を書く人は書くし,書かない人は書かない」という問題と変わりないように思えます。それじゃあ,個人向けブログツールの市場も,所詮は日記帳の市場と大差ない,っていうこと?

 発表会にはシックス・アパートの創業者の1人,ミナ・トロット氏が出席していました。そこで質問。「最初は魅力的なサービスだと思って使い始めても,しばらくすると更新に疲れてやめる人は多いはず。そこをどう考えていますか」。すると,すぐにこんな言葉が返ってきました。「確かに私もブログを5年やっているが,正直言って疲れてしまったことがある」。

 記者会見の席上でもカメラ片手に自身のブログ用画像の撮影に余念がなかった彼女から,こんなに率直な答が返って来るとは思いませんでした。続けて彼女が語ったところによると,実は個人向けブログサービスのVOXも,こうした体験にヒントを得て作られた部分が多いそうです。

 家族限定といった“非公開型ブログ”に焦点をあてたVOXの典型的なニーズは,おそらくこんな感じでしょう。「離れた所に住む両親や兄弟に,自分や家族の写真や近況を手軽に見せられるようにしたい」。「わざわざ電話やメールで連絡するほどの用事ではないけれど,自分たちの近況を気が向いた時に見てもらえるようにしたい」。

 これは結構普遍的な線だと思います。例えば,私の親戚は国際結婚をして家族とボストンに住んでいますが,7~8年前から,日本の両親や親戚,友人に見せるためにWebサイトを立てて家族の写真を載せています。この場合は,結婚した相手がたまたまその関係のプロだったので独自にサイトを作ったのですが,今ならブログサービスを使うところでしょう。

 こうしたブログは,更新しなくても読者は逃げません(うらやましい・・・)。私も,「もう半年も更新されていなかったよな」と分かっていても,彼らの子供の写真を時々見に行きます。彼らの生まれた時の写真の日付を見て,「ああ,お兄ちゃんは来年から小学校か。プレゼント考えなくちゃ」となることもあります。

 こういう,“動かない情報”に対するニーズを何と呼ぶのか知りませんが,個人でも組織人としても,情報に即時性を求められる場面と,アーカイブ性を求められる場面とが,確かにあると思います。職業柄,即時性を求められることは当然多いのですが,アーカイブ性の重要さも忘れてはいけないと思った次第です。

 話がちょっとだけ真面目な方向にそれました。というわけでVOX,試しに家族・親戚限定で使ってみようと思います。