グーグルは世界有数のハードウエアメーカーであり、ソフトウエアメーカーである。1990年代末に他に先駆けて「情報爆発」に直面し、いち早くそれに対応したグーグルのコンピュータは、従来のコンピューティングと比較すると常識外れにすら見える進化を遂げた。グーグルコンピューティングの特異さを10個紹介しよう。
(1)自前主義
グーグルは売上高を見ると「広告会社」だが、その実態は7000人を超えるエンジニアを抱える世界有数のメーカーである。しかもそのコンピューティングのあり方は、従来型のそれと大きく異なる(図1)。グーグルが“異形”のメーカーなのは、同社がハードもソフトも自前主義を貫いているからだ。
使用するサーバーはすべて自社開発だ。一部報道では、グーグルは台数ベースで米デルや米ヒューレット・パッカード(HP)に次ぐ「世界第3位」のサーバーメーカーだという。
サーバーだけではない。2007年、大手ネットワーク機器メーカーに不穏な空気が流れた。次の大型商材として期待する「10Gビット・イーサネット・スイッチ」の受注が、グーグルから全く入らなかったのだ。「そのころ、ネットワーク機器メーカーの営業に会うと、皆一様にガッカリしていた」(あるネットワーク機器商社の米国駐在員)。07年末には「グーグルが10Gビット・イーサネット・スイッチの自作を開始した」という報道が流れ、懸念は現実のものとなった。
データセンターもグーグルは自作する。08年秋に米国で「グーグルが、潮力発電や海水を使ったサーバー冷却を行う『水上データセンター』の特許を取得した」という報道があった。同社がすでに水上データセンターを実用化していたとしても、さほど驚くに値しない。すでに同社は03年に「コンテナ型データセンター」の特許を取得し、05年から実運用を開始している。
自前主義はネットワーク回線にも及ぶ。10年第1四半期には、最大7.68Tビット/秒の伝送速度の海底ケーブルが日本と米国をつなぐ。08年2月に、KDDIなど通信事業者5社と海底ケーブルを敷設するコンソーシアム「Unityコンソーシアム」を設立した。
データセンターを支える基盤ソフトも内製だ。競争力の源である分散処理システム基盤は、すべて自社開発。オープンソース化もしていない。詳細は学会などで発表される論文からしかうかがい知れない(図2)。関連記事『ソースコードから見るグーグル気質』にもあるように、グーグルはオープンソースの利用や、自社ソフトのオープンソース化に積極的だ。しかしそれらは同社にとって公開しても構わないものでしかない。