サーバーソフトのバージョンアップ作業は、一般にコスト削減の余地が大きい。ベンダーに作業を丸投げにせず、自力でできる作業をあの手この手で探し出せば、予想外に大きな効果を得られる。今回紹介するアメリカンファミリー生命保険は1億円以上のコスト削減効果を得た。クラレも数千万円以上かかるERP(統合基幹業務システム)ソフトの移行作業を700万円で済ませた。外為どっとコムやエイチアールワンなどの秘策も紹介する。

 本業に役立たないバージョンアップ作業は外注する、という企業も多いだろう。だがコストを抑制するためには、外部に委託するだけでなく、できる範囲で移行作業を自力で進めることも一考の余地がありそうだ。

丸投げ回避でコストを3分の2に

 移行作業をできるだけ自力で進めるやり方によって、アメリカンファミリー生命保険(アフラック)は、日本オラクル製ERPパッケージ「Oracle E-Business Suite」をバージョンアップした(表1)。この結果、「当初の見積額に比べて、バージョンアップ費用を3分の2に抑えることができた」(アフラックの堀井大輔システム開発部開発5課主任)。

表1●取材したユーザー企業におけるサーバーソフトのバージョンアップに関する主な取り組み
表1●取材したユーザー企業におけるサーバーソフトのバージョンアップに関する主な取り組み
[画像のクリックで拡大表示]
図1●アフラックは自社対応と複数ベンダーによる分割発注にすることでバージョンアップの費用を当初見積もり額の3分の2に抑えた
図1●アフラックは自社対応と複数ベンダーによる分割発注にすることでバージョンアップの費用を当初見積もり額の3分の2に抑えた
当初ベンダー1社だけにバージョンアップ作業すべてを依頼したところ、5億円の見積もりを提示され、経営陣からの承認が下りなかった。
[画像のクリックで拡大表示]

 同社は当初、アプリケーションの設計・開発から本番移行までのバージョンアップ作業すべてを大手IT(情報技術)ベンダーA社に依頼するつもりだった。ところがA社が約5億円の見積額を提示したために、経営陣の承認が下りなかった。

 そこでA社に“丸投げ”するのではなく、テストや本番移行といった作業やプロジェクトマネジメントを自社で進めた(図1)。自力では難しい業務アプリケーションやインフラの検証・修整、データ移行といった実務を分割し、複数のITベンダーに分割発注した。