最終回となる今回は、バッテリーやディスプレイ、タッチパネルなどで使われている技術や、位置情報を取得するためのGPS、そして新機種への搭載が進んでいる近距離通信技術であるNFCについて解説する。まずは今やスマートフォンには欠かせないGPS(Global Positioning System)の技術を見ていこう。
位置情報が携帯電話と結びつく
最近の携帯電話やスマートフォンのほとんどがGPSを内蔵しており、モバイルデバイスの位置を高精度に測定することが可能になっている。位置を正確に把握することで、目的地までのナビゲーションが可能になる。日本では、1990年代から既に自動車用のナビゲーションシステムが普及し、2001年には携帯電話への搭載が始まった。
携帯電話用のGPSと自動車用のGPSの大きな違いは、携帯電話のGPSシステムは通信により位置測定を補助し、短期間での位置を測定するための機能を備えていることだ。これをA-GPS(Assisted GPS)と呼ぶ。国内で最初に携帯電話にGPSを搭載したのはKDDI(au)だが、それはauが採用していたcdmaOneやCDMA2000方式と無関係ではない(後述)。
GPSは、人工衛星からの「時計」信号を受信し、衛星までの距離を計算する。GPS衛星は、1.5G/1.2GHz帯でCDMA方式による送信を行っている。衛星がいつどこにあるかという「軌道」データ(エフェメリスという)も、衛星からの信号に乗せて配布されており、GPS受信機は、衛星の位置と、受信機に電波が到達した時間から、衛星までの距離を計算する。
衛星から一定の距離にある場所は、地球上は円周上にあり、これも衛星の位置と距離から計算できる。複数の衛星を使って、そこから計算できる複数の円が交わる場所が自分の場所である(図1)。ただし、実際には測定誤差などのため円は交わることはなく重なった状態となるため、最低でも三つの衛星からの電波を受信しなければならない。
前述のように衛星がどこにあるのかを計算する情報は衛星電波自体に含まれているが、たとえば、前回受信した時間がかなり前であったり、長い距離を移動した後だったりといった場合は、再度情報を受信し直す必要が出てくる。