「全世界で、マイクロソフトのOffice製品のユーザーは約4億5000万人いる。これほど広く使われているアプリケーションのユーザーインタフェースを変更するのは、非常に大きな決断だ。それにあえて踏み切るのには、それだけの裏付けがある」。マイクロソフトは2006年5月30日、Office次版「the 2007 Office system」のプレス向け説明会を開催した。デスクトップ製品を解説したインフォメーションワーカービジネス本部 Office製品マーケティンググループの田中道明マネージャは、次期Officeに対する同社の自信を、冒頭のように語った。
2007 Office Systemの最大の特徴と言えるのが、ユーザーインタフェースを一新することだ。増えすぎたOfficeの機能をユーザーが使いこなせていないという問題の解決を狙ったものだが、その裏にはさまざまな実験、検証作業があったという。
なかでも今回のバージョンアップで特徴的なのが、「カスタマエクスペリエンス向上プログラム」の成果が使われていること。これは現行の最新版「Office 2003」から導入されたもので、同意を得たユーザーから操作の履歴を匿名で収集する。Officeが現場でどのように使われているかを把握し、その後のバージョンアップに生かすことを目的としている。「ユーザーから収集したデータは90日間しか保持していないが、全世界で見ると、現時点でWordだけで3億5000万にものぼるデータがある。これらを基に、徹底的に研究を重ねた」(田中氏)。
このデータの分析結果には、興味深い傾向も見られた。日本と米国のExcelの分析結果を比べると、よく使われるコマンドの上位10位はほぼ一致している。しかし一つだけ、日本人に特有のコマンドがあった。「印刷プレビュー」だ。日本人は、作成したデータを印刷することを重視しているということだろう。そこでExcel 2007では、操作画面の右下に、印刷したときの状態を表示するボタンを追加するという。このようなさまざまな改良を加えた結果、「同じ文書を作成するのに必要なクリック数は、Office 2003と比べて60~65%削減できる」(田中氏)。
ただ、従来製品のユーザーにとっては、こうしたユーザーインタフェースは逆に混乱の元となる可能性がある。その点については、「各コマンドのボタンのデザインやショートカットキーを従来と同じにするなどして、これまでの知識を生かせるようにする」(田中氏)と説明している。また、旧版の機能が新版のどこに用意されているかを確認できるツールも公開予定だ。