CHIグループは2011年4月26日、11年1月期の内部統制報告書において、内部統制が有効でない旨を示す「重要な欠陥」を開示すると発表した。開示理由について同社は、「IT全般統制に不備があり、質的な判断基準から重要な欠陥に当たると評価した」と説明する。J-SOX(内部統制報告制度)は、内部統制報告書を期末日から90日以内に提出することと定めている。
IT全般統制は、IT統制の中で情報システムの開発・運用体制に対して整備するもの。情報システムを利用して整備するIT業務処理統制を実現するための「間接統制」との位置づけだ。IT全般統制の不備を理由に、重要な欠陥と評価するケースは珍しい。
CHIグループによると、IT全般統制の不備は連結子会社である丸善で発生した。期末日直前である10年12月20日に丸善の学術情報ソリューション部の書籍販売・物流システムを刷新する際に、データ移行で不具合が起こった。
不具合により書籍の出荷が停止したほか、書籍販売・物流システムからの売り上げデータなどを、会計システムに自動的に計上できなくなった。期末日直前だったため、伝票の計上や照合といった作業を手作業で実施。「検証作業や監査法人への説明に、想定以上の時間がかかった」(CHIグループ)という。
CHIグループは、会計システムへの自動計上をIT業務処理統制として想定していたが、システムの不具合によりこの統制が運用できなくなった。加えて、手作業での伝票の確認作業に想定以上の時間がかかったなどの事態を重視。これらの事象を引き起こした書籍販売・物流システムに対するIT全般統制の整備・運用状況を評価した結果、テスト時の書類の承認に不足があるなど「IT全般統制に関する証跡に不備があったことが分かった」(同社)。「システムの不具合が期末日直前に発生したことから、IT全般統制の不備を修正できなかった」としている。
同社は財務報告書を遅延なく開示しており、財務報告に関する監査意見も財務報告が適正である旨を示す「無限定適正意見」となっている。だが「内容を考慮した結果、IT全般統制で発生した不備は重要な欠陥に当たるとの判断に至った」と同社は説明する。
CHIグループは、丸善と図書館流通センターの経営統合により発足した持ち株会社。5月1日から社名を「丸善CHIホールディングス」に変更する。