BI(ビジネスインテリジェンス)ツール関連の動きを探ってみると、ベンダーやコンサルタント側ではユーザー動向に対するコメントにネガティブなものが多い。
例を挙げよう。「こんなに性能がいいモデルが登場したのに、データ活用を前向きに考えるユーザーが少なすぎる」(データ分析専用機を販売する大手ベンダー幹部)、「データを経営に活用しようと本気で考えていない経営者が多い」(大手SIベンダー幹部)、「この5年間、意思決定ルールをモデル化して運用するという高度なBI活用は、あまり進歩しなかった」(コンサルティング会社幹部)などだ。
アビームコンサルティングの幹部も2011年2月17日、「ABeam BI」関連の新メニュー発表する際に「ERPやBIツールを導入しても、データ活用で結果を出し切れていない企業は多い」と指摘した(関連記事:アビームがデータ分析支援強化、2012年度に50億円の売り上げ目指す。
2008~2009年にツール市場は縮小した
だが意思決定支援はIT活用の目標として、重視されてきたはずではなかったか。本稿の執筆に当たり、筆者は日経情報ストラテジーが毎年実施している「CIO調査」の2006年3月号~2010年3月号の結果を振り返ってみた(2011年は6月号に掲載が予定されている)。
「今後2~3年でIT投資を行う分野」として「経営層の意思決定支援」を選択する回答は、15~20分野(実施年によって異なる)中で、ほぼ5位以内にランクされている(表1)。「利用部門の意思決定支援」についてもほぼ10位前後で推移しており、決して優先順位は低くない。
経営層の意思決定支援 | 利用部門の意思決定支援 | |
---|---|---|
2006年3月号 | 4位 | 6位 |
2007年3月号 | 5位 | 8位 |
2008年3月号 | 5位 | 9位 |
2009年3月号 | 9位 | 12位 |
2010年3月号 | 4位 | 12位 |
ところが、この調査結果を見てBI関連ベンダーやコンサルタントが安心してはいけないようだ。ガートナー ジャパンでBI分野をウオッチする堀内秀明リサーチ部門アプリケーションズ マネージング バイス プレジデントは、「こうした投資意向のアンケートで『意思決定』は上位の常連だが、本気さや切実さの度合いは低いのではないか。BIに取り組みたいというユーザーに、具体的に何をどうしたいのかと質問すると、あまり深く考えていないユーザーが少なくない」と指摘する。
前述のCIO調査では、2009年3月号で一時的に順位が下がるなど、ここ2年では少々変調が見受けられることも確かだ。実際、ガートナーの調査によれば、2008~2009年にBIツール市場は2年連続で7%ほど縮小した(図1)。2010年は2%増えると予測されているが、2007年の市場規模に戻るには2013年までかかるという。
2年連続でツール市場が縮小したのでは、関連ベンダーやコンサルタントの間で威勢のいい声が少ないのは、当然かもしれない。ガートナーの堀内氏も「ツールがある程度浸透したのが2006年ごろ。近年やや勢いが鈍っているのは確かだ」という。