会社のオフィスの出入り口にある打刻機のカードリーダーにSuicaやiPhone 7、Apple Watchをかざすだけで、従業員の出退勤時間が自動的に記録される。そんな勤怠管理システムを、Speeeが自社向けに開発し、2017年4月初めから運用を開始した。特徴は、打刻機に小型コンピュータ「Raspberry Pi」(以下、ラズパイ)を採用することで、機器のコストを大幅に下げた点だ。
いちいちWebページを開くのは面倒
Speeeは、Webマーケティングやインターネットメディアの運営を手掛けるIT系ベンチャー企業である。同社の以前の勤怠管理システムは、PHPで書いたWebアプリケーションだった。従業員が出退勤時にWebページを開きボタンを押して、出退勤時間を打刻していた。しかし、いちいちWebブラウザーを立ち上げてボタンを押すのは意外に面倒。毎日のこととなると、日常的に打刻漏れが発生していた。
既存システムが保守性や拡張性の面で問題を抱えていたこともあり、1年ほど前からシステム刷新の検討が始まった。同社は「『従業員の意識』に頼るのではなく技術でなんとかしたい」と考え、カードリーダーにカードをかざすだけで従業員がラクに打刻できるシステムを導入することにした。
当初はパッケージ製品の利用を検討していた。しかし、制約が多いのがネックになったという。例えば、社内の独自の勤務ルールに対応できなかったり、勤怠データを分析するために出力するデータに制限があったりした。そこでシステムの内製を決断。プロトタイプを作成したり、労務に詳しい人の見解を聞いたりして準備を進めた。