大麻は禁止すべきか、五輪ドーピング検査で賛否両論

大麻は禁止すべきか、五輪ドーピング検査で賛否両論
8月6日、米国代表のニコラス・デルポポロ選手(左)が、ドーピング検査で大麻の成分が検出されて失格になったのを受け、世界反ドーピング機関の禁止薬物リストに大麻を含めるべきかどうかの議論が持ち上がっている。写真は7月、ロンドン五輪で撮影(2012年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[ロンドン 6日 ロイター] ロンドン五輪男子柔道73キロ級に出場した米国代表のニコラス・デルポポロ選手が6日、ドーピング(禁止薬物使用)検査で大麻の成分が検出されて失格になったのを受け、世界反ドーピング機関(WADA)の禁止薬物リストに大麻を含めるべきかどうかの議論が持ち上がっている。
一部の専門家は、大麻の成分は五輪選手が切望するスピードや強さ、正確さを大幅に改善する可能性があると指摘。一方、ドーピング検査に費やされる貴重な時間と労力を考えれば、持久力を高めるエリスロポエチン(EPO)や筋肉増強剤アナボリックステロイドなど、より深刻な禁止薬物に力を注ぐべきだとの意見も聞かれる。
インペリアル・カレッジ・ロンドンのデビッド・ナット教授(神経精神薬理学)は「大麻がスポーツ選手のパフォーマンスを向上させるという証拠はなく、複数の国では使用自体も合法であるため、WADAによって禁止されるべき理由はない」と語っている。
大麻は現在、WADAの禁止薬物リストに含まれているため、競技期間中のドーピング検査で陽性反応が見つかった選手には2年間の出場停止処分が科される。しかし、競技期間外であれば、トレーニングキャンプ中や休暇中で大麻に陽性反応が出ても、選手が処分を受けることはない。
科学者らは、この「ダブルスタンダード」こそが、WADAの大麻禁止が科学的根拠に基づいたものではなく、政治的理由が背景だと指摘する。匿名のスポーツ科学者は「問題は一流選手が子供たちのお手本とされ、金メダリストが大麻を吸っているイメージは良くないという理由で禁止されていることだ」と述べた。
ロンドン五輪で史上最多の金メダル獲得数を記録した競泳のマイケル・フェルプス選手は2009年、大麻吸引疑惑が報道され、米国オリンピック委員会(USOC)などから強い批判を浴びていた。
今回出場停止処分を受けたデルポポロ選手は、五輪へ出発前に不注意で食べた「マリフアナ入りケーキ」が原因だったとしている。
米ミネソタ州メイヨー・クリニックの研究者、マイケル・ジョイナー氏は「大麻吸引やマリフアナ入りケーキが柔道で役に立つとは考えにくい」とし、WADAは運動能力を明らかに向上させる薬物に注力すべきだと語っている。

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