アングル:政府がビッグデータ活用に着手、車関連や異業種連携支援へ
[東京 18日 ロイター] - ビッグデータを経済活性化につなげるため、政府が本格的に動き出した。新成長戦略の中に自動車に関連したビッグデータの活用を盛り込むほか、経済産業省が新事業を育成・促進するため、データ解析を手掛けるベンチャー企業や東京大学と連携して官民協議会が立ち上げた。
次世代の主力産業になるような新産業を生み出し、日本の産業競争力の底上げを目指す。
自動車に関するビッグデータの活用では、事故を起こさない安全運転に必要なアクセルやブレークの踏み方などをビッグデータから弾き出し、それに沿った運転者の保険料を割り引くシステムの導入などを検討している。
また、中古車の事故歴などを一元的に把握できる新システムの導入なども検討対象になっている。
政府の成長戦略にも、自動車の登録情報や、整備・リコール、道路通行情報など多種多様なデータを活用し、2020年までに自動運転の実現や交通事故の大幅削減を目指すロードマップが盛り込まれる。
一方、経産省が立ち上げた「データ駆動型イノベーション創出戦略協議会」は今月9日に参加企業や大学を募集。20日に初会合を開く。現時点で電機大手含め230社以上が参加予定。もともとはビッグデータ分析のデータセクション(東京・渋谷)や、ネットを使ったマーケティングを手掛けるデジタルインテリジェンス(東京・渋谷)などが4月に専門組織を設立し、これに着目した経産省が本格的な官民協議会の設立に乗り出した。
すでにツイッター情報の収集・分析で知られる東証マザーズ上場のホットリンク<3680.T>やネットイヤーグループ<3622.T>などのベンチャー企業から、総合電機大手各社などを含め230社以上が参加を決めている。ビッグデータを解析し、その中に潜む項目間の相関関係やパターンから新規ビジネスを発見するプロセスの研究者である、東京大学の大澤幸夫教授も参加する。
協議会でどのような新事業が議論されるかは、参加する企業の数と種類によるため未定。豊富なデータを保有する大企業と、データ分析ベンチャーが接触することで、ツイッターやブログの情報とPOS(購買)データの双方を分析することで可能な新たな製品開発やマーケティングなどが期待されている。
協議会ができることで、「どの企業にどのデータがあるかわかるようのも利点」(データセクション・林健人取締役COO)だ。
経産省はモデルとなる新事業の検討課題として、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)による各家庭の電力使用状況などのデータを活用した、節電技術や高齢者見守りサービスといった新規ビジネスを想定している。
もっとも企業が保有するデータを他社に公開するのは、一般的に大きな抵抗を伴う。東大の大澤教授は、データの一部分のみをレコード・CDのジャケットのように公開することで、データの潜在的な使い手である企業と取引できる「データ・ジャケット」という概念を提唱しており、協議会でも議論される見通しだ。
大澤教授はこれまでのデータ解析から、人間が新たに発想をひらめくときには右足を動かすことが多いという「関係性」を発見している。「新たな発想を産むには椅子は回転型がよいと言える。このようにビッグデータの解析から人間工学的に高齢者や子供にやさしい新技術・事業が生まれれば」と期待する。
ビッグデータの活用で、米国などに比べ出遅れたとされる日本でも、政府がようやく本腰を入れ始めた格好だ。
竹本能文 編集:田巻一彦
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