インタビュー:80年代後半のバブル相場と類似=楽天証券研山崎氏

インタビュー:80年台後半のバブル相場と類似=楽天証券研山崎氏
4月1日、楽天証券経済研究所・客員研究員(経済評論家)の山崎元氏はロイターとのインタビューで、安倍政権の経済政策「アベノミクス」について、人々が抱く「期待(予想)の働きかけ」で円安・株高の流れが継続しており、順調な滑り出しを切ったと述べた。都内の証券会社前で1月撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 1日 ロイター] 楽天証券経済研究所・客員研究員(経済評論家)の山崎元氏はロイターとのインタビューで、安倍政権の経済政策「アベノミクス」について、人々が抱く「期待(予想)の働きかけ」で円安・株高の流れが継続しており、順調な滑り出しを切ったと述べた。
ただ、2%の物価目標達成まで金融緩和を止めることは難しくなる可能性を指摘し、株価が高騰しても、金融引き締めに政策転換できないリスクを警戒。1989年に日経平均が最高値を付けるまで株価が上昇トレンドを描いた80年台後半のバブル相場と構図が似ているとの認識を示した。
インタビューの概要は以下の通り。
──アベノミクスと物価目標2%について
「アベノミクスの初動としては順調だ。アベノミクスは口先介入だけで円安・株高になっているとの論調が一部で見受けられるが、人々が抱く『期待(予想)への働きかけ』を通じて、円安・株高の経路を描いている」
「将来の物価見通しは不確実性が強いが、問題は物価が小幅でも上昇してきた時に、何が起こるかだ。例えば物価目標が1%であれば、日銀は金融緩和・ゼロ金利政策を止めるかもしれないとの疑心暗鬼が生じる。しかし、物価目標が2%に天井が高くなれば、金融緩和・ゼロ金利政策が長期間続くことになる。強いコミットでゼロ金利政策が継続し、物価がプラスで推移すれば、実質金利はマイナスだ」
──金融市場への影響について。
「実質金利の低下は為替市場にとって強力な円安材料だ。ゼロ金利で調達した円資金を外貨建て資産に投資するキャリー・トレードが可能になる。物価目標を強く宣言することは、将来にわたり形成される為替レートに影響を与えることになる。円安は国際競争力が低下していた日本企業にとってもプラスで、株価にも好影響をもたらす」
「黒田日銀新総裁は、イールドカーブを押し下げ、より長期の国債の購入を示唆している。米連邦準備理事会(FRB)の資産購入をみても長期国債の買い入れはオーソドックスな政策。物価目標達成に向けて、長期の国債を買い続けるだろうとの期待が醸成されることが重要だ」
──アベノミクスへの懸念はないのか。
「アベノミクスは初期段階で円安に大きく依存する。期待への働きかけで円安が進行してもそれを阻害する外部要因が出てくることが目先のリスクだ。キプロス危機で為替が円高に振れ、為替が日本国内の要因で決まるわけではないことを再認識させられた」
「仮に、実質成長率2%、物価上昇率2%と目指すべき経済状況になれば、長期金利の妥当な水準は4%付近。長期金利が単独で上昇することがないだろうかということが、アベノミクスの処方を続ける上でのポイントの一つだ。しかし、日銀の新体制発足に対して長期金利は低下で反応した。日銀の長期国債買入によって、長期金利の急激に上昇しないと考えているのだろう」
「資産バブルは長期的には維持できないような資産価格の大規模な高騰現象。物価目標2%達成まで金融緩和が継続されるとみられるが、株価が急騰し、金融引き締めに政策転換をしたくてもできない状況がないとは言えない。1985年のプラザ合意以降、1989年にかけての株高局面と構図が似ているだけに、バブル的な状況も想定しておく必要がある」
──長期金利は上昇した場合の影響について。
「政府債務1000兆円とすれば、金利が1%上昇しただけで利払費用が単純計算で10兆円増えることになる。巨額な債務について、インフレ率に長期金利が追い付かない状況を人為的につくり、将来的に債務価値を薄めることで調整していくことになるのではないか」
「日銀が昨年10月の金融システムリポートで、全期間の金利が1%上昇すると、国内債券投資で合計8.3兆円の損失が発生することを公表した。白川前日銀総裁が金融緩和を小出しにし、デフレ脱却に消極的だった背景に、銀行のバランスシート問題があったとすれば問題だ」
(ロイターニュース 星 裕康;編集 村山圭一郎)
*見出しの誤字を修正します。

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