「仕事が合わない」は甘え?転職すべき?原因と正しい解決策
入社1年未満の離職理由のトップは「仕事が合わない・つまらない」です。
入社1年未満の離職者の4割が「仕事が合わない」という理由で会社を退職しています。
仕事が合わないと感じたら、辞めれば解決するのでしょうか?
転職すれば自分に合う仕事が見つかるのでしょうか?
この記事では、仕事が合わない原因と対策について解説します。
目次
1. 「仕事が合わない」と感じているのは、20代前半と40代に多い
どのような人が「仕事が合わない」と感じているのでしょうか?
転職した人の離職の理由から探ってみましょう。
厚生労働省の「転職者実態調査」では、労働条件や人間関係を除いた、仕事に関る離職理由について調査があります。
【平成27年転職者実態調査 仕事に関る離職理由】
満足のいく仕事内容でなかったから | 能力・実績が正当に評価されないから | 会社の将来に不安を感じたから | |
---|---|---|---|
全体 | 26.7% | 15.9% | 24.2% |
男 | 28.3% | 17.8% | 30.9% |
女 | 24.6% | 13.3% | 15.6% |
20~24歳 | 28.6%★ | 4.7% | 14.7% |
25~29歳 | 26.9% | 12.9% | 28.6% |
30~34歳 | 25% | 20.2% | 24.4% |
35~39歳 | 24.6% | 15.6% | 32.5%★ |
40~44歳 | 28.6%★ | 18.5% | 25.3% |
45~49歳 | 32.1%★ | 20.5%★ | 22.4% |
50~54歳 | 23.8% | 15.9% | 19.7% |
55~59歳 | 19.1% | 19.3% | 23.4% |
60~64歳 | 22% | 14% | 8.3% |
※厚生労働省「平成27年転職者実態調査」回答者:6,090人(複数回答なので、全体の○%が該当するとしたもの)
年代別に見ると、仕事の内容に関る理由は、20代前半と40代が高くなっています。
1-1. 入社1年未満の離職理由のトップは「仕事が合わない・つまらない」
20代前半で仕事内容に不満を持つ人が多いですね。もう少し詳しく別の調査で見ると、入社後の勤務期間の短い人が「仕事が自分に合わない・つまらない」という理由で離職しています。
特に入社3ヶ月未満の離職者では、48.5%にも昇ります(※1)。
入社3年以上になると「仕事が自分に合わない・つまらない」という理由は減り、将来性などの理由が増えています(※2)。
【入社1年未満と、入社3年以上の正社員の仕事に関する離職理由(※2)】
仕事が自分に合わない・つまらない | 会社に将来性がない | キャリア形成の見込みがない | |
---|---|---|---|
入社1年未満 | 39.1% | 15.2% | 10.9% |
入社3年以上 | 12.2% | 36.7% | 31.6% |
(※1)厚生労働省「平成25年若年者雇用実態調査」回答者:15,986人
(※2)厚生労働省 若年者キャリア支援研究報道資料
1-2. 社歴が10年以上の人は「仕事量と責任の重さ」
一方、入社後10年以上の人は、仕事の内容に関る理由でも「仕事が自分に合わない」は、7.3%と激減します。一方、仕事に関る離職理由として多いのは、「ノルマや責任が重過ぎる」(32%)が多くなっています。
入社後10年以上経つと、中間管理職になったり部署の異動などで、仕事の内容が変化する年代でもあります。職場の中堅として仕事量や責任など、さまざまな負担が増えます。
役職や部署が変ると、要求されることや業務の範囲・やり方も変わり、今までのやり方が通用しなくなることも多くなります。
社歴の浅い人とは違う意味で、「仕事が合わない」と感じる人も多いでしょう。
例えば、デザイナーとして有能な人がデザイン室長になったらリーダーとして機能しなかったということもあります。
中堅・ベテランゆえに、多量の業務をこなしながら新たな要求や責任を果たす負担は大きいでしょう。
2. 最初から「自分に合う仕事」があるわけではない!
仕事があるから、その業務を遂行する人材が必要です。
仕事に合せて人が必要なのであって、人に合せて仕事があるわけではありません。
最初から「自分に合う仕事」が用意されていることはまずないのです。
また組織の変化により、仕事内容が変る場合もあります。
仕事に自分が合っていないのであれば、合せてくださいということになるでしょう。
「仕事が合わない」というのは、合わせられない、または業務のやり方が判らない、必要な知識技能不足、他の理由で業務遂行が困難ということになります。
では、なぜ「仕事が合わない」と感じるのでしょうか?
主な原因としては、以下のことが考えられます。
- 適性(業務に求められる適性と、自分の適性が合っていない)
- 会社の方針・考え方・社風などと合わない
- 専門分野や従来と違う仕事になった
- 評価に不満があり、自分は合わないと思う
- 上司や同僚のやり方と合わない
新入社員の場合と中堅の場合では「仕事が合わない」と感ずる部分は違うようです。
社歴の浅い場合と、中堅の場合をそれぞれ解説しましょう。
2-1. 社歴の浅い人が「仕事が合わない」と感じる原因
「仕事が合わない」と感ずるのは、業務で要求されることに対して、自分が提供すること(したいこと)が違うということです。
その結果「こんなはずでは…」という気持ちから、「仕事が合わない」と感じることが多くなると考えられます。
これは表面的に捉えると、適性のミスマッチに分類できるかもしれません。
しかし、学校を出たばかりの社会経験も浅い段階で自分の適性や能力など判るでしょうか?
2-1-1. 適性診断の危うさ
新入社員の調査によると、「会社を選ぶ時、何を最も重視したか?」は、以下のようになっています。
新入社員が会社を選ぶ時にもっとも重視したこと
- 自分の能力・個性が活かせるから=33.2%
- 仕事が面白いから=17.3%
- 技術が覚えられるから=12.3%
(※)公益財団法人日本生産性本部「平成28年度 新入社員働くことの意識調査」
対象:1,286人
「自分の能力や個性を活かせるから」という選択理由が多いのですが、その根拠は就職指導などで行われる、自己分析や適性診断によるものが多いでしょう。
適性診断や分析は種類もいろいろで、多くは興味、価値観、性格特性、社会性や行動特性、仕事観などへ質問に回答するものです。
適性分析などは、あくまでもその時点の自分の価値観などの傾向を示すものです。
今の自分の価値観や性格を探るにはリクナビNEXTの「グッドポイント診断(会員登録すれば無料)」などの適性診断はおすすめですが、必ずしも適職を示すものではありません。
なぜなら同じ職種名であっても、仕事の内容や方法は職場によって違うからです。
例えば<人と接することや話すのが好き=外向性高得点=営業職>を選ぶとします。ところがルート営業などだと、相手も忙しくて話す時間はなく、納品や返品処理、倉庫整理が主な業務という場合もあります。
逆に内向的な人で「営業に回されてイヤだな~」と思っても、意外と自分に向いてるかも?と思うことだってあるわけです。
「営業職」ひとつとっても、営業企画、営業事務、コンサルティング営業、飛び込み営業、ルート営業、販売促進活動・調査などさまざまな業務があります。会社の規模によって、部門が分かれていたり全部をやる場合があったりなど、要求される業務内容が各々に違います。
職種の表面的なイメージや典型例を参考にしたのでは、仕事の実態は判らず業務に求められることを正しく捉えるのは難しいでしょう。
適性診断や適職診断で表示される「職種・職業例」は、一般的な特徴を捉えたもので、実際の業務を示すものではないのです。
適性診断を自分の能力・適性と思い込み、そこから導き出される職業イメージを「自分に合う仕事」と考えると、「こんなはずでは…」というミスマッチにつながる場合もあります。
2-1-2. 「自分の能力・個性を活かしたい」は仕事で使えるレベルか?
中途採用の経験者なら別ですが、そもそも知識も経験もない新入社員にいきなり重要な仕事を任せることはなく、入社後1年くらいは雑用や専門外の業務が多いのは当り前です。
理系の学部卒業で技術職として採用されても、最初の1年は工場などの製造現場勤務という所も少なくないはずです。
「自分は専門知識を活かしたくて入社したのに、なんで製造現場で働くのか?」、「自分は商品開発がやりたくて入社したのに、雑用ばかり」と思う人もいるでしょう。
しかし雑用すらきちんと出来なければ、重要な仕事は絶対まわってきません。
雑用も現場も仕事の重要な一環であり、何かを疎かにして仕事は成り立たないのです。
仕事で「自分の能力・個性を活かす」には、仕事で使えるレベルにないと活かせません。
2-1-3. 新入社員の働く目的は「楽しい生活をしたい」のに、「仕事がつまらない」現実
入社後1年未満で離職した人の4割が「仕事が自分に合わない・つまらない」となっていますが、
入社後1年程度では、仕事や会社について判ることはホンの一部でしかありません。
その段階で「仕事が自分に合わない・つまらない」と思うのは、「仕事をする」目的や考え方にズレがあるのかもしれません。
前出の日本生産性本部「平成28年度 新入社員働くことの意識調査」では、働く目的について下記のような結果になっています。
新入社員の働くことの意識
- 楽しい生活をしたい=41.7%
- 経済的に豊かになる=27%
- 自分の能力を試す=12.4%
- 社会に役立つ=9.7%
会社を選ぶ理由では、自分の能力・個性が活かせるから(33.2%)が最も多いのですが、働く目的では「楽しい生活をしたい」が42%で、「自分の能力を試す」のは12.4%となっています。
一見すると、選択理由と働く目的が矛盾するような結果です。本音としては、「楽しい生活をしたい」方が強いのでしょう。
つなぎ合せると、「この会社なら自分の能力・個性を活かせそうで、楽しく生活できそう」ということでしょうか?誰でも、自分の能力を活かしてイキイキと楽しい生活をしたいと思います。
ところが入社してみたら、ミスして落ち込むし、自分のイメージと違って「仕事がつまらない」ので、1年もしないうちに4人に1人が離職しているということでしょう。
「自分の能力・個性を活かして、楽しく生活したい」と思っていたのに、仕事の現実はそうではなく、「仕事が自分に合わない」と感じている実態が見えてきます。
2-1-4. 社歴の浅い人が「仕事が合わない」と感ずる原因
社歴の浅い人が「仕事が合わない」と感ずる原因をまとめると、主に以下の3点でしょう。
- 傾向を示す適性診断を「自分の能力・個性」と思い込み、そこから導き出された職業イメージを「自分に合う仕事」だと勘違いしてしまう。
- 仕事や求められる能力を判っておらず、自分がやりたい仕事・出来ると思っていた仕事と違い「仕事がつまらない」と思う。
- ミスして注意されることが重なると、「仕事が自分に合わないと思う。
このような原因から「自分に合う仕事」を探して転職しても、また同じことの繰り返しになるでしょう。職場や仕事の適性は自分が判断するものではなく、仕事・人との関係性において判断されるものです。
2-2. 社歴の浅い人の「仕事が合わない」と感じる場合の対策
「自分に合う仕事」ではなく、「仕事を自分のものにする工夫」が大切です。
スポーツや音楽を楽しむためには基礎訓練は必須です。仕事を楽しむためにも基礎訓練は必要です。多少の努力が必要ですが、一日の大半を職場で過ごすわけですから、仕事を充実せずに楽しい生活は得られません。
社歴の浅い人が「仕事が合わない」と感じる場合、どのようなに対処すると良いのでしょうか?
2-2-1. 「仕事が合わない」と感じる場合の対処法
入社して日が浅い段階で「仕事が合わない」と感じる場合は、以下のように心掛けてみましょう。
特に、一番目はとても大切です。すぐに実行してみましょう。
①どんな事であれ、目の前の仕事に真剣に取り組む
例えば、コピー取りひとつでも差がわかるものです。「コピー取りなんて、つまらない仕事」と思って雑にやっていると、雑な仕事をする人と見られてしまいます。些細なことでも真剣にやると、自分なりに満足感もあり、周囲の評価も高まります。
②新入社員のミスは当り前。ミスしたら素直に謝り、ひきずらない
新入社員のミスは当り前です。ただ学生時代までは叱られるとか、大声で怒鳴られることなどほとんどないでしょう。仕事中では待ったなしなので、大声になることもあります。ミスして叱られると、必要以上に落ち込む人が多いようです。
新入社員のミスは皆当り前だと思っているので、気にしすぎないことです。同じミスをしないように学ぶ姿勢が大切です。
③手が空いたら「私に手伝えることがありますか?」と聞く
手が空いたらボーっと指示を待っていないで、周囲の人に手伝えることがないか自分から聞きましょう。断られることもありますが、頼む暇もないほど忙しいのだと理解しましょう。人にもよりますから、あまり気にせず、手伝おうとする姿勢が大切です。
④手取り足取り教えてくれることを期待しない
仕事が忙しい中で、新人に仕事を教えるのは結構な負担です。指導や指示が不十分だったとしても仕方ありません。自分でも積極的に仕事を覚えるようにしましょう。
また指導や指示の時には必ずメモを取りましょう。ベテランでも指導や指示の上手い人と下手な人がいます。自分が教える立場になった時の参考にしましょう。
⑤報告や話は、論理的に簡潔に
仕事では、メール連絡でも上司への報告でも論理的に簡潔なことが求められます。
報告などは<結論→理由→まとめ・確認>が基本です。
内容を整理してから話すように日頃から心掛けましょう。
早いうちからビジネスの共通思考である、論理的思考を身につけると有利です。
社歴の浅い場合は自分の「適性」を決め付けず、積極的にいろいろなことを経験してみることが大切です。実際の仕事の関りの中で、自分に合う仕事のやり方を見つけたり工夫して行くことが、適応力や自分の可能性を広げます。
それが社会力をつけることになります。社会力(社会人基礎力)は4章で詳しく解説します。
3. 新人以外「仕事が合わない」と感じる原因と対策
一方、入社後10年以上の中堅が、「仕事が合わない」と感じる原因は何なのでしょう?
入社10年もすると、会社の実態や仕事の位置付けや環境など熟知し、知識・経験は豊かです。
新入社員とは「合わない」と思う原因も違うでしょう。
知識・経験が豊富になったからこそ判ることがあります。中堅になって「仕事が合わない・会社が合わない」と感じるようになるのは、以下の原因によることが多いでしょう。
- 会社の方針や考え方・社風が、自分と合わない、合わなくなった
- 役職や部署の異動により、仕事が合わないと感じるようになった
- 仕事をしても正当な評価を得られていないと感じる(将来性やキャリア形成に不安を感じる)
それぞれについての対策を解説します。
3-1. 会社の方針等が自分の考えと合わないことに気付いた
会社の方針や考え方・社風などは、なんとなく違和感があっても最初はそれほど気にならないでしょう。しかし社歴が長くなると、会社の体質や考え方の実態がかなり見えてきます。
最初はなんとなくの違和感であっても、年数を経るごとにその違和感が大きくなるということはあります。
例えば、業績重視のイケイケ体質で、多少の脱線やトラブルには目をつむって売上を伸ばすことを奨励する社風とか。社内の協調第一で、会社全体が仲良しクラブ的で、良くも悪くも全てがなぁなぁの体質とか。ワンマン社長の鶴の一声で方針がコロコロ変ってしまう会社とか。
社風などは、良い悪いではなく各々の会社の成り立ちや事情があります。
会社の体質・社風は空気みたいなものなので、自分の価値観と合わない場合はどんどん居心地が悪くなります。働く意欲にも関ってきます。
3-1-1. 会社がこういう体質なら要注意~転職を考えるべき
もしも、会社が下記のような問題体質であれば、在職しながら転職活動しましょう。
- 法令順守意識が低い体質=従業員を使い捨てのコマのように考えるような体質や、労働基準法などを軽視するような体質
- 都合の悪い事実やミスを握りつぶしたり、虚偽報告するようなことがまかり通る体質
- 利益至上主義で、下請けに圧力を掛けて値引きや返品を押し付けたり、取引先がコロコロ変わるような会社
このような会社で今は業績が伸びているとしても、誰かの犠牲やごまかしによる業績ですから、いずれ業績悪化するでしょう。転職に備えて準備を始めて良いでしょう。転職の準備については以下の記事で紹介しています。
3-1-2. 自分の優先順序を確認してみる
上記のような問題体質ではなくて、会社のカラーや社風と合わない場合もあるでしょう。
合わない程度や状況にもよりますが、立ち止まってじっくり仕事の意味や自分の生き方を考えてみるチャンスです。
会社で働き続けるメリットとデメリットを書き出してみると良いでしょう。
その上で、何が自分にとって最も大事なのか?譲れないことや優先順序を考えてみましょう。
上司との考え方が合わない場合や、職場の人間関係が良くない場合に、社風に合わないと思うこともあります。合わない部分が何なのか?を突き詰めて考えることが大切です。
3-2. 途中で方針や部署等が変って、仕事が合わなくなった
社歴の長い人は下記のような理由で、途中から「仕事が合わなくなった」という方もいるでしょう。
- 役職がついて中間管理職になり、仕事が合わなくなった
- 事業部の統合再編などで方針や環境が変り、仕事が合わなくなった
- 役員や幹部の異動で組織やルールが変り、仕事が合わなくなった
- 配置転換・部署の異動で、仕事が合わなくなった
これらは、組織や環境の変化と言えます。
社歴が長く一定の経験があると、大きな変化は受け入れにくいものです。
また専門に特化してしまうと、やはり変化に対応できにくくなります。
経験を積んできた仕事や事業部そのものが無くなることもあります。
3-2-1. 変化への適応力が、最強の対策
企業が存続し成長するためには、世の中の変化に対応することが求められます。
企業では、生き残りのための組織変更や配置転換は今後ますます増えるでしょう。
40代にもなると、その度に「仕事が合わない」と転職するわけにもいきません。
会社や組織の変化は当り前で、変化を前提として考えた方が良いでしょう。
変化に対応するには、柔軟性や適応力を身につけておくことが大切です。
3-2-2. 自分の業務がタコツボ化(視野が狭く)なっていないか?
今は仕事が専門化・細分化する傾向が強く、ともすると業務が「タコツボ化」しがちです。
狭い範囲の業務だけの経験では、変化への対応が難しく、転職やキャリア形成にも不利です。
中堅になると、専門職であっても調整能力やマネジメント能力が求められるでしょう。
管理部門であっても、現場に通じていなければ真に効率的な管理業務はできません。
もしも自分の業務がタコツボ化しているようであれば、できるだけ全体的な視野を持ちましょう。
会社の経営構造を見たり、より高次の視点から自分の仕事を見ることが大切です。
今は、利益を生み出す「プロフィット部門」を強化し、管理部などのノンプロフィット部門は身軽にしたい傾向でしょう。どこでも収益を向上させ、仕事を生み出せる人材は貴重なのです。
中堅・ベテランであれば、今迄の経験や知識から新しい価値を生み出す力を持つことこそ、変化に対応する方法といえるでしょう。
3-3. 正当に評価されない
中堅・ベテラン社員の仕事に関する不満では、正当に評価されないという理由が多いですね。
誰もが満足する評価・人事制度は無理でしょう。評価や人事は、会社全体での重要度や人材育成的な観点や組織バランスなど、総合的な判断での結果です。個人の訴えによって覆ることはありません。
一生懸命やってきた人ほど、やり切れなさやプライドがあるかもしれません。
こういう時こそ、家庭生活や地域での生活など、プライベートの充実を図るチャンスでもあります。
プライベートの充実は心の充実にもつながります。働き方や生活を見直すのも良いでしょう。
色々な視点を持ってみましょう。
正当に評価されないことが、自分の将来性やキャリア形成にとって不利だと思うのであれば、転職を考えるのも選択肢でしょう。
ただし「正当に評価されない」ことへの一時の不満や怒りで行動すると、後で後悔することになります。「正当に評価されない」と感じることがあったら、なぜそういう評価になったのかを客観的に考えてみることが大切です。
4. 「自分に合う仕事」の前に、まず「社会人基礎力」が必要
最初から「自分に合う仕事」はありません。
社歴が浅くても長くても、自分が社会・職場でどのように関り、適応して行くかが仕事(就業力)といえます。
仕事は人と関ることなので、チームワークや考える力、実行力などが要求されます。
職種によって重要な能力は多少違いますが、仕事するには最低限必要な力はあります。
「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」を「社会人基礎力」と言います。これは、2007年から経済産業省が提唱しているもので、上場企業や大学・公共機関・経済団体など産学連携の研究により作成されました。
社会人基礎力は、仕事に求められる能力で、どの分野・職種でも必要とされる基礎力です。
適職や「自分に合う仕事」以前に、まず社会人基礎力を身につけることが必要です。
社会経験が浅いと得点は低いと思いますが、上げて行く努力が大切です。
社会人基礎力が高くなると、それだけ「自分に合う仕事」が多くなるでしょう。
「社会人基礎力」としていますが、内容はかなり高度です。30代・40代でも当然求められる能力です。これらの能力を全て身につけて実行できれば、スーパービジネスマンになれそうです。
中堅・ベテランでも、一度チェックしてみると良いでしょう。
これらの項目が高得点であれば、仕事力は高く、適応力も高いと言えるでしょう。
下記のサイトでチェックできます。
次に社会人基礎力について、詳しく紹介しましょう。
4-1. 「社会人基礎力」の3つの力と12の能力要素~就業力の中核
社会力は人と関り、社会を創っていこうとする力のことです。社会適応力は社会力によって培われます。社会人基礎力は、社会力を基礎とし、就業力の中核と考えられます。
社会人基礎力は、大きく3種類に分類されます。①前に踏み出す力 ②考え抜く力 ③チームで働く力です。3つの力は12の能力要素から構成されます。
①前に踏み出す力
主体性 | 物事に進んで取組む力。(例)指示を待つのではなく自らやるべきことを見つけて積極的に取組む。 |
---|---|
働きかけ力 | 他人に働きかけ巻き込む力。(例)目的に向かって人々を動かして行く。 |
実行力 | 目的を設定し確実に行動する力。(例)自ら目標を設定し、失敗を恐れずに行動し、粘り強く取組む。 |
②考え抜く力
課題発見力 | 現状を分析し目的や課題を明らかにする力。(例)目標に向かって自ら「ここに問題があり、解決が必要だ」と提案する。 |
---|---|
計画力 | 課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力。(例)課題の解決に向けた複数のプロセスを明確にし、その中で最善のものは何かを検討し、それに向けた準備をする。 |
創造力 | 新しい価値を見出す力。(例)既存の発想に囚われず、課題に対して新しい解決方法を考える。 |
③チームで働く力
発信力 | 自分の意見を判りやすく伝える力。(例)自分の意見を整理した上で、相手に理解してもらうように的確に伝える。 |
---|---|
傾聴力 | 相手の意見を丁寧に聴く力。(例)相手の話しやすい環境を作り、適切なタイミングで質問するなど相手の意見を引き出す。 |
柔軟性 | 意見の違いや立場の違いを理解する力。柔軟性。(例)自分のルールややり方に固執するのではなく、相手の意見や立場を尊重し理解する。 |
状況把握力 | 自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力。(例)チームで仕事をする時、自分がどのような役割を果たすべきかを理解する。 |
規律性 | 社会のルールや人との約束を守る力。(例)状況に応じて、社会のルールに則って自らの発言や行動を適切に律する。 |
ストレスコントロール力 | ストレスの発生源に対応する力。(例)ストレスを感じることがあっても、成長の機会だとポジティブに捉えて肩の力を抜いて対応する。 |
出典:経済産業省「社会人基礎力に関する研究会~中間とりまとめ」
4-2. 企業が求める人材と社会人基礎力の関係
企業が求める能力と社員の能力が一致していれば理想的ですが、やはりギャップがあります。
しかし企業が求める能力が判れば、その能力を少しずつ高めていけばいいわけです。
自分の「適性」に合う仕事を探すより、ずっと現実的と言えるでしょう。
4-2-1. 企業が求める能力要素は、主体性・実行力・創造力
社会人基礎力の中でも、特に企業が重視する能力要素があります。大企業と中堅・中小企業では若干違いもあります。細かく見ると、業種によっても違いがあります。
しかし企業規模に関らず、主体性・実行力・創造力が重視されています。大企業では、課題発見力・発信力・柔軟性・働きかけ力が重視されており、能動的な仕事姿勢が求められるようです。
大企業185社が重視する能力要素
- 主体性(84.8%)
- 実行力(81%)
- 課題発見力(79.1%)
- 創造力(67.7%)
- 柔軟性(71.5%)
- 状況把握力(59.5%)
下記のPDFでは、業種別の求める力が見られます。
出典:経済産業省「社会人基礎力 緊急調査」
4-2-2. 若者・若手社員と求める人材像とのギャップ
企業が求める能力に対して、若者が自信があると答えた能力にギャップがあります。
特に、主体性・実行力・課題発見力は社会で求められる能力だけれども、若者に不足している能力と言えます。
一方、若手社員・若者は「傾聴力」や「柔軟性」、「状況把握力」など、「チームで働く力」には比較的自信があるようです。
企業の方では、「前に踏み出す力」を求めていますが、若手社員や若者は「前に踏み出す力」が弱いという傾向が出ています。
企業が求める割合 | 若者が自信があると感じる割合 | 企業が若手社員に不足と考える力 | 若者が自信がないと感じる割合 | |
---|---|---|---|---|
主体性 | ★84.8% | ★28.9% | ☆52.1% | ☆28.1% |
働きかけ力 | 39.9% | 23.7% | 36.5% | 33.2% |
実行力 | ★81% | ★35.3% | 26.2% | 26.3% |
課題発見力 | ★79.1% | ★39.3% | ☆45% | ☆15.5% |
計画力 | 39.9% | 37.5% | 17.1% | 20.8% |
創造力 | 67.7% | 32.4% | 32.2% | 25.9% |
発信力 | 53.8% | 21.3% | 24.6% | 17.6% |
傾聴力 | 53.8% | 47.5% | 11.8% | 8.4% |
柔軟性 | 71.5% | 50.6% | 20.4% | 10.3% |
状況把握力 | 59.5% | 45.4% | 18.5% | 9.1% |
規律性 | 41.1% | 37.7% | 10.4% | 12.2% |
ストレスコントロール力 | 44.3% | 29.8% | 33.2% | 20.7% |
若者に関するデータは、2006年卒・2007年卒の大学3年・4年生と大学院生(N=3127人)。
出典:経済産業省「社会人基礎力 緊急調査」2007年
4-3. 社会人基礎力を鍛える方法
社会人基礎力の例を見ても、一朝一夕に簡単に身につく能力ではありません。
自分が弱い部分、強い部分もあるでしょう。
日々の仕事や関りの中で、これらの能力要素を意識して行動することが大切です。
社会人基礎力を鍛える具体的な方法を紹介します。
①職場の有能な人を観察する
仕事のできる人は、これらの能力を発揮しているでしょう。どの能力要素を、どのように発揮しているのかを観察すると勉強になります。身の周りにお手本になる人がいたら、どんどんマネしてみましょう。
②仕事の目的(何が求められているのか?)を常に意識する
物事に進んで取組むにしても、目的地を間違えては困ります。仕事の目的をきちんと把握することで、何をすべきかは考えられるでしょう。前に踏み出す力は、目的が明確でないと踏み出せません。
③なぜ?を掘り下げる
なぜ、その方法が良いのか?なぜ、そう思うのか?など…なぜ?という問いを3回~5回くらい掘り下げて考えてみます。その中で判らないことが出てきたら、調べてみると良いのです。なぜ?を掘り下げると途中で気付くことも多く、考え抜く力が鍛えられます。
④ゴールから逆算して考える
目的が明確になったら、実現のために何が必要なのか?誰の協力を得れば実現できるのか?をゴールから逆算して考えてみます。働きかけ力や課題発見力・計画力が鍛えられるでしょう。
次はどうすればより良いのか?という振り返りや、自分の頭で考えることがとても大切です。
最初は出来なくても、社会人基礎力を意識して日々の仕事に取組むと、2年後・3年後の仕事ぶりが違ってくるでしょう。
5.まとめ
「仕事が合わない」と感じる原因は、社歴の浅い人と長い人では違います。
社歴の浅い人が「仕事が合わない」と感じるのは、自分の思い込む適性・適職との違いによる原因が多いようです。社歴の長い人は、環境や組織の変化により「仕事が合わなくなった」と感じる人が多いようです。
最初から「自分に合う仕事」があるわけではなく、仕事を自分のものにして行く努力や工夫が大切です。そのためには仕事に求められる能力を身につけることが必要です。
社会人基礎力は就業力(仕事力)の中核となるものです。
社歴の浅い人は、社会人基礎力を身につけると、自分に合う仕事が多くなるでしょう。
社歴の長い人は、社会人基礎力を高めることによって変化への適応力が増すでしょう。
「仕事が合わない」と悩むより、今何をするべきかを考えて実行することが大切です。