民法の全体像「民法とは」
ここは、民法の全体像「民法とは」を講義している教室です。
今回は,民法とはどんな法律か?についてお話しますね。
民法とは,市「民」のことについて定められた「法」律ということで,「住む家を借りた」だの「結婚する」だの「車を買った」だのという,私たちの普段の生活について定められた法律,ということができます。
ただ,この言い方は,かなり不正確でして,もう少し民法の特徴を捉えた言い方をすると,
民法とは,「私法の一般法で実体法に分類される法律である」となります。
こんなことを,のっけから言われると,とたんに,頭の中が「???」となりますよね。
でも大丈夫ですよ。今回は,これらについて説明をしていきますね。
1.公法と私法
まず,今の日本国の中には,たくさんの法律がありますが,これをざっくり分類すると,公法と私法の2つに分類できます(中間的な「社会法」も含めた分類もできますが,ここでは触れないでおきます)。
公法とは,国や公共団体などの,公の機関が関わる法律のことで,今までに学んできた憲法や行政法,その他には裁判所が関わる民事訴訟法や刑事訴訟法などがあります。
それに対して私法とは,国や公共団体などの,公の機関が関わらない,世間一般の人たちのことについて定められた法律のことで,民法や商法などがあります。
この世間一般の人たちのことを,私人と呼びますので,「私」人について定めた「法」律を私法という,と理解して頂けたらと思います。
次の図表1をご確認ください。
【図表1:公法と私法】
そして,この公法と私法のうち,民法は私法に分類されます。
2.一般法と特別法
次に,一般法と特別法の分類です。
これも,日本国にたくさんある法律を,ざっくり2つに分類したもので,
一般法とは,広く一般的に適用される法律のことで,
特別法とは,限られた人や場面においてだけ適用される法律のことをいいます。
例えば,民法は,広く一般的に,私人に対して適用される法律ですが,商法は私人の中でも,商人に当たる人に適用される法律です。
ですので,民法は一般法,商法は民法の特別法と考えるんです。
ただし,この分類は相対的なもので,例えば民法と商法を比べると,民法が一般法で商法が特別法ですが,商法と国際海上物品運送法という法律を比べると,商法が一般法になり,国際海上物品運送法が特別法になります。
次の図表2でイメージを確認してみてください。
【図表2:一般法と特別法】
そして,一般法と特別法では,特別法が優先して適用されるという関係にあります。
3.実体法と手続法
最後に,実体法と手続法についてです。
これも,日本国にたくさんある法律を,ざっくり2つに分類したもので,
権利や義務などの法律上の関係について定めた法律を実体法といい,民法や商法,刑法がこの実体法に当たります。
そして,その実体法で定められた内容を実現するための手続きを定めた法律を手続法といい,民事訴訟法や刑事訴訟法がこの手続法に当たります。
ここで,権利とは何のことかと言いますと,ある利益を受けたり利益を主張したりすることを法により認められたもののことを言います。
例えば,「自分が建てた家に住む権利」というと,「家に住む」という利益があって,その利益を受けて家に住んだり,もし見知らぬ人がその家にいるなら,「そこに住むのは私だ!出て行け」と主張したりすることが,法律により認められている,ということです。
その権利に対応する言葉が「義務」という言葉で,義務とは,従うべきこととされることが法により定められている(または権利の対応として当然とされる)もののことです。
例えば,さっき「出て行け」と言われた人は,その命令に従うべきなので,出て行く義務がある,というように言います。
【図表3:権利と義務】
このように,権利や義務などについて定めた法律を実体法といい,民法はその実体法に分類されます。
実際に民法の条文を見てみますと,例えば,民法198条では「占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。」
というように定めています。
内容についてはまだ理解できなくても結構ですから,「何やら,損害賠償請求できるって書いてるなあ」ということが分かれば良いです。
このように,民法は,損害賠償請求権という権利について定めているように,様々な権利やそれに対応する義務について定めている法律なんです。
では,実体法と手続法について,次の図表4でイメージを確認してみてください。
【図表4:実体法と手続法】
なお,実体法とされる法律の内容が,権利義務についてだけを定めているわけではないので,「法律上の関係」を定めた法律,という言い方をしますが,取りあえず今は,民法とはどんな法律かを知ることができれば良いので,権利・義務について定めている法律なんだなと思っていただけたらオッケーです。
以上見てきたように,民法は,私法であり,私法の一般法であり,実体法である,ということを理解しておきましょう。
(終わり)
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