スポーツのお値段BACK NUMBER
J2北九州の“悲劇”から考える。
「FFP」って何のための制度なの?
posted2015/01/02 10:50
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph by
AFLO
4500億円
(2009年時点での、プレミアリーグクラブの総負債額)
2014年のJリーグを振り返ると、2012年度から導入されたクラブライセンス制度を巡って、ひとつ象徴的な出来事がありました。それはJ2で5位に入ったギラヴァンツ北九州が、来季のJ1ライセンスを持たないゆえに、昇格プレーオフに出場できなかったことです。
ライセンスが交付されないことは開幕前から分かっていたとはいえ、チームの健闘が光っただけに、北九州のクラブ関係者やサポーターたちはさぞや落胆したことと想像します。
北九州サポーターでなくとも、制度によって昇格の道を断たれたことに釈然としない思いを抱かれた方も多いことでしょう。今回の「スポーツのお値段」では、前後編にわたって、このクラブライセンス制度について深く掘り下げてみたいと思います。
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ドイツ発祥のクラブライセンス制度は、欧州サッカー連盟(UEFA)がチャンピオンズリーグ(CL)への参加資格として導入したのに続き、国際サッカー連盟(FIFA)、アジアサッカー連盟(AFC)、そしてJリーグへと広まってきました。
収入は増えても、それ以上に増えていた支出。
なかでも、UEFAはライセンシング基準としてファイナンシャル・フェアプレー制度(FFP)を2011年から導入しています。FFPとはごく単純に言えば、経費が収入を上回らないようにすること(つまり赤字経営をしないこと)をクラブに求め、違反するとUEFA主催の大会出場ライセンスを剥奪するなどの罰則が科される規則を指します。
FFPの導入が決定されたのは2009年のことでした。当時、UEFAが欧州主要リーグに属する655のクラブを調査したところ、実に5割以上が赤字経営をしており、その割合は年々増えていました。それどころか、2割のクラブは財務的に危機的な状況に陥っていたといいます。
かといって、サッカーマーケットが縮小していたわけではありません。過去5年間のクラブ収入は42%も増加していました。しかし、コストにあたる選手年俸と移籍金がそれを上回る59%の増加を示していたために、“負のスパイラル”に陥っていたのです。言い換えれば、マーケット拡大の恩恵を受けているのは選手であって、クラブではなかったことになります。