タブレット端末やスマートフォンの普及、オンラインストアによる流通・課金の整備など、電子書籍の一般化は今までにないスピードで本格化しつつある。新しい書籍・雑誌であれば最初から電子書籍で購入するという選択肢も市民権を得た。その一方で、すでに紙媒体として所有している書籍・雑誌を所有者自身で電子化する、いわゆる“自炊”を行う人も多い。
そのような自炊ユーザーの定番とも言えるドキュメントスキャナがPFUのScanSnapだ。ScanSnapシリーズは、2001年7月に登場した初代機「fi-4110EOX」以来、実に11年に渡って着々とモデルチェンジを重ね、2009年末の時点で累計販売台数100万台を超えるドキュメントスキャナの大ヒットシリーズとなっている。現行モデルはカラーリングや対応OSのバリエーションを除くと3モデルで構成される。
現時点でのフラッグシップモデルはS1500で、前モデルのS510から読み取り速度の大幅な向上を実現、150dpi〜300dpiまですべて20枚/分という高速性を誇る。1度に50枚の用紙がセットできる余裕の設計になっており、慣れてくれば読み取りながら順次用紙を追加していくことで1冊7分程度(250ページ程度の一般的な書籍の場合)でスキャンできる。
一方のS1100は、本体重量わずか350グラムのポータブル機だ。世界最小クラスというだけあって、小型化・軽量化のために削った部分は多い。特に読み取りモードが片面のみで、原稿が手挿入という点はドキュメントスキャナとしての用途を大きく制限してしまう。S1100は大量のドキュメントスキャン用途ではなく、持ち運ぶメリットを追求したモデルと言える。
そしてS1100とS1500のちょうど中間的な存在が今回モデルチェンジしたS1300iだ。S1300iはS1100ほどの小型化はされていないものの、本体重量1.4キログラム、USBバスパワー駆動にも対応しており、直方体に近く、突起の少ないフォルムなど、携帯性を考慮したデザインとなっている。
この外観は前モデルのS1300とほぼ変わっておらず、違といえばカバーにプリントされた「ScanSnap」ロゴの後ろに、「S1300i」と追記されたくらいだ。ただし、読み取り速度はノーマルモード(150dpi)で12枚(24ページ)/分、ファイン(200dpi)で9枚(18ページ)/分、スーパーファインで6枚(12ページ)/分と、それぞれS1300の1.5倍の速度を達成した(ACアダプタ使用時)。
自炊を行う場合、どの程度の解像度でスキャンするかは悩みどころだ。特に裁断が前提となる書籍や雑誌の場合、スキャン後に元原稿を廃棄してしまうケースがほとんどだろう。そのため、後で解像度が低かったことが判明しても、解像度を上げて再スキャンすることはできない。この問題は「新しいiPad」が発売されたときに現実化した。
従来のiPadでは1024×768ピクセル(132ppi)だったディスプレイの解像度が、新しいiPadでは2048×1536ピクセル(264ppi)に向上した。これは単純に言えば1024×768ドット以上2048×1536ドット未満の画像を表示する場合、iPadでは縮小表示されるのに対し、新iPadでは拡大表示されてしまうということだ。
もちろん、新しいiPadのRetinaディスプレイを超える高精細なディスプレイを採用したスマートフォンもあるが、新しいiPadのメリットは「1ページ(あるいは見開き)を1画面で」表示できる解像度の高さでもある。今後の自炊作業では、高解像度設定でのスキャン速度がより重要になってくるはずだ。
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