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特集 2011年10月18日

猪鹿蝶を食べる

食べちゃうぞー
食べちゃうぞー
突然だが、私は花札のルールを知らない。
「猪鹿蝶」が花札界のアルフィーなのかダチョウ倶楽部なのかもよくわからないが、三枚ワンセットの名トリオというのは知っている。

花札は江戸時代中期からあるカードゲームらしい。日本人として少しは知っておいたほうがよいのかな?とは思う。

伝統の文化とふれあうために、まずは「猪鹿蝶」を食べてみてはどうだろう。
1975年生まれ。千葉県鎌ヶ谷市在住。猫好き。人生においての目標は食べたことのないものをひとつでも多く食べること。旅先ではまだ見ぬ珍味に出会うため目を光らせている。

前の記事:かぼちゃの煮付けを自分好みにアレンジしたい

> 個人サイト 晴天4号 Twitter (@hosoi)

猪を食べに行こう

両国の「ももんじや」は獣肉の食べられる老舗のお店だ。東京で猪のお店といえばここと言ってもよいかもしれない。
猪といえばここ
猪といえばここ
なんといっても国道沿いに吊るされている猪がインパクト大。これについて、その日に捌くいのししを吊るして「血抜きをしている」とか「臭みをとっている」などと聞いた事があるのだが、お店の人に聞いたところこれは剥製だそうだ。
おまえ剥製だったのか
おまえ剥製だったのか
てっきり毎日違う猪が連れて来られていると思っていた…。
前を通るたび「あれ、今日はちょっと小さいね」「いつもより新鮮そう」などと適当な事を言ってたのが恥ずかしい。
猪肉は別名「山くじら」というらしい
猪肉は別名「山くじら」というらしい
旅館みたいな個室に通される
旅館みたいな個室に通される

つきだしが猪

猪鍋とビールなどを注文して待っていると、店員さんが「猪の煮込みです」と言って小鉢を持ってきた。
猪でなくともつきだしが煮込みというだけで嬉しすぎる
猪でなくともつきだしが煮込みというだけで嬉しすぎる
やわらかくておいしい
やわらかくておいしい

鍋は八丁味噌ベース

メインディッシュの猪鍋は、八丁味噌のお鍋だった。甘めで猪の肉に合うらしい。
甘い味噌でぐつぐつ煮込む
甘い味噌でぐつぐつ煮込む
お肉を投入、すごい脂身
お肉を投入、すごい脂身
猪の肉は煮込んだほうがやわらかくなるという変わった特徴があるので、最低でも15分はぐつぐつという音を聞きながら待つ。15分間おいしそうな匂いに包まれて待つのは忍耐が必要だが、余計においしく感じられることは間違いない。食べごろになった時にはビールがなくなっていたりするけど。
何もかも茶色に染まれ~
何もかも茶色に染まれ~
一味唐辛子と山椒……これがあるってだけで間違いないでしょう
一味唐辛子と山椒……これがあるってだけで間違いないでしょう
「一味と山椒で召し上がってみてください」と言われ、絶対おいしいと確信してしまった。
どばっとかけてみた
どばっとかけてみた

濃い豚肉

豚肉に似ているけど、味が濃い。豚肉を何枚か同時に食べたようなお得感。味噌の味がよく染み込んでいて食べごたえがある。やっぱり山椒がすごくいい役目をしている。
ご飯なら肉一枚で一杯いけそう
ご飯なら肉一枚で一杯いけそう
煮る前は「これ食べても大丈夫なのかしら」と思った脂身がすばらしい。脂身特有のしつこさがない。新しい食べ物のようにコリコリと食べられてしまう。
キラキラのAbura-Me
キラキラのAbura-Me
牡丹鍋は初めてではなかったが、お店で食べるのは初めてだった。さすがにベストな調理法だけあって、家で食べた時の感動とは別物だった。
瓜坊の剥製を見つめながらふと考える
瓜坊の剥製を見つめながらふと考える

猪鍋はおいしかった

しかしなぜ猪鹿蝶を食べようと思い立ったのかという事は自分でもよくわからない。

そんな気持ちを押さえ込んで次の「鹿」いきたいとおもいます。
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鹿寿司

鹿の刺身は食べた事があるので、趣向を変えてお寿司にしてみよう。
伊豆市にある「かね半」にやってきた
伊豆市にある「かね半」にやってきた
伊豆鹿っていうのがいるのか
伊豆鹿っていうのがいるのか
「いずじかずし」って10回言って、と誰かに言いたくなる
「いずじかずし」って10回言って、と誰かに言いたくなる
落ち着いた照明の店内
落ち着いた照明の店内

鹿の前に深海魚を食べよう

このお店はどちらかというと、深海魚のお寿司を出す事で有名だ。ただ季節によって深海魚が手に入らない事も多く、そんな時は地魚のお寿司が出される。
深海魚って花札にないけど食べたい
深海魚って花札にないけど食べたい
今日は赤カサゴだけあるみたい
今日は赤カサゴだけあるみたい
鹿の前に、深海魚のお寿司をいただく。といっても、今日の深海魚は赤カサゴだけだった。
右下が赤カサゴ、その他は金目やむつでんなど。深海魚でも地魚でもなんでも食べたい
右下が赤カサゴ、その他は金目やむつでんなど。深海魚でも地魚でもなんでも食べたい
赤カサゴはむっちりしていて弾力のある噛みごたえ。深海にいるやつは筋肉が違うなあ
赤カサゴはむっちりしていて弾力のある噛みごたえ。深海にいるやつは筋肉が違うなあ

本題(鹿)が来た

ローストした鹿がのったにぎり寿司だ。なんだこれ、例外なくうまそう。
味付けは生姜、おろしポン酢、塩ゴマ油の3タイプ
味付けは生姜、おろしポン酢、塩ゴマ油の3タイプ
いのしかちょう、うまーい
いのしかちょう、うまーい
ただおいしい物を食べ歩いてる企画になってるのは目をつむってほしい。
ローストビーフから牛臭さを除いて淡泊にした味だ。半生っていうのがニクい。ずっと噛んでいたくなる。少し馬肉のローストにも似ているけれど、はるかにクセがない。
意外な事に酢飯と合うんですね。お店独自の味付けの妙もあるのだと思う。
手前がロースで奥がモモ~
手前がロースで奥がモモ~

さて、困った

猪、鹿と順調に食べてきたが、蝶はどうしたものか…。蝶々は焼いても揚げてもそんなにおいしくないという話を聞いた事がある。できればおいしい物が食べたい。だからといってホルモンの「腸」でごまかすというのも気が進まない。

そんな矢先、おいしい「蝶料理」にめぐり逢う事ができたのだ。

※次のページは虫が苦手な方はご注意ください。
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アゲハの幼虫

知り合いのムシモアゼルギリコさんは昆虫食も趣味とするライターである。ある日「青虫弁当たべにきませんか?」という、人の一生で一度あるかないかのお誘いをいただいた。
部屋に入るといきなり酸っぱい匂い(※クリックで鮮明になります)
この匂い、威嚇して紫のツノを出す時の匂いだ。子供の頃によく嗅いだわ…懐かしい。話によると、アゲハの幼虫はレモンフレーバーでとってもおいしいらしい。この匂いがそうなるんですね。
テーブルに並べられた幼虫は解凍中だったようだ。
ギリコさんが「ちょっと待っててくださいねー」と言い残してキッチンにこもった。フェリシモのカタログみたいなかわいい部屋で蕎麦茶とクッキーをいただきながら待つ。
調理中。ギリコさんは虫に限らず料理がとても上手(※クリックで鮮明になります)

青虫、キマってる

たしか「ナンプラーと塩胡椒で味をつけてタイ米にのせました」と言っていた気がするのだが、味はどうだろうと思う以前にビジュアルのかっこよさに完全に押され気味になってしまった。

ちなみに青虫弁当はつのだじろうの「亡霊学級」という漫画に出てくるのです(ホラー漫画マニアのギリコさんはしばしば漫画に出てくる虫料理を再現する人なのだ)。
猪鹿蝶のフィナーレにふさわしい華やかさ(※クリックで鮮明になります)

公園で食べましょう

爽やかな秋の午後、爽やかなレモンフレーバーのお弁当を持って公園へ。
いただきます

オクラだー

噛み心地は肉厚なピーマンのようで、味も青虫というグロテスクさを感じさせないくらいあっさりしている。野菜を食べているだけはあって、素直な野菜の味がベース。中身は粘り気がある。どこかで食べた事のある味…そうだ、オクラだ。
おおおー!まさしくオクラや!
おおおー!まさしくオクラや!
緑色だし、お弁当のいろどりとしても良い。そして栄養もある。そしてこれまた意外な事に、ご飯に合う。ただこれは「レモンフレーバーなのでちょっとバターで味付けしたタイ米に合うかなと思ってエスニック風にしてみた」というギリコさんの工夫が大きいのだが。
知らない子供が寄ってきた
知らない子供が寄ってきた
今まで食べた虫でまずいと思う物はなかったけど、芋虫系は初体験だったので味の想像がまったくつかなかった。毎回、虫は良い方向に先入観を裏切ってくれる。これからはオクラを食べるたびに青虫を思い出すのだろう。

花札の話ではなかったっけ

猪鹿蝶はどれも最高においしく、満足のいく体験ができた。たまに日本の伝統文化にふれる事は新しい発見をもたらしてくれる。温故知新ってこういう事かもしれない。
ももんじやの編みぐるみがかわいい
ももんじやの編みぐるみがかわいい
【CM】
来月、虫食いライター、ムシモアゼルギリコさんのイベント「沖縄VS虫! 仁義なきサブカル&グルメ対決」が新宿ネイキッドロフトで行われます(上記の私が青虫弁当を食べる動画も放映されます)。
イベントの詳細は、こちらの11月21日の欄をご確認ください。
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