あおむろひろゆき実録『家』
3部:オープンハウス
3部:オープンハウス
この家に引っ越してきて数か月、少し生活にも慣れてきた頃なのですが、私はとある事に悩まされておりました。
とにかく尋常じゃない数の猫が毎夜天井裏を走り回っているんですね。屋根裏を激走する猫はどう考えても10匹以上、その中でも人が走り回っているんじゃないかと思ってしまうほど大きな足音をたてる猫がいて、ここはX JAPANのYOSHIKIのバスドラムの中なんかなと思ってしまうほど「ドコドコドコドコ!!!!」とうるさいわけです。気が狂いそうになります。
(イメージ)
そのような状況で普段はひたすら心を無にして寝るのですが、その日はどうしても眠りにつくことができません。
オラァァァァァァーッ!!!!!!!!!
我慢の限界に達した時、無意識のうちに私は天井に張り手をぶちかましておりました。
完全受け身なしで地面に叩きつけられます。ニトリで買った机も椅子も粉々になってしまいました。
茫然としたまま、私の思い描いていた理想の社会人生活と現実とのあまりの違いを思っているうちに、いつの間にか涙がポロポロとこぼれていました。
(参考:理想の社会人生活のイメージ。ワイン片手に映画鑑賞、足元にはAIBO)
それでひとしきり泣いた後、ふと天井を見たんですね。
なんか、思いっきり満月が見えるんですわ。
めっちゃキレイな満月が見えとるんですわ。
「あれっ?」って思いますよね。叩いたのは「天井」ですし、怒りの張り手に多少勢いがあったとはいえ、私はスモウレスラーではありません。現実を受け止めることができないまま、そのまま夜空に輝くお月様を眺めておりました。
いつの間にか、お月様がふたつになっとるんですわ。
光り輝くふたつめのお月様は、腹立つほどきれいな形をした金ちゃんの頭部でした。
色々と聞きたいことは山ほどありますが、こういう時こそ冷静にならねばなりません。極めてシンプルかつ現状を理解するための質問として、『そこで何やってるんですか?』と尋ねました。
「星見ててん!」
ロマンチックかよ!
「星見ててん!」じゃねーよ!人の家の屋根の上で何やってんだよ!
ロマンチックかよ!
「星見ててん!」じゃねーよ!人の家の屋根の上で何やってんだよ!
「星見てたら猫がいっぱいきたから追いかけとってん」
無邪気かよ!あの、ひと際うっせー足音お前かよ!
まあ、そんなどうでも良い事は置いておいて、ふたつ目の質問に移ります。
無邪気かよ!あの、ひと際うっせー足音お前かよ!
まあ、そんなどうでも良い事は置いておいて、ふたつ目の質問に移ります。
『この家の構造について限りなく詳細に説明をお願いします』
この家を建てた当本人である金ちゃんが、思わぬ形で発生した天窓から顔を覗かせ説明をしてくれます。まず驚いたのが、「この家には屋根裏は無い」という事。
(普通の家のイメージ)
(この家のイメージ)
分かりやすく図にするとこんな感じです。
私が天井と思っていた部分がそのまま屋根になっているため、私のたった一回の張り手で夜空に浮かぶお月様が見えてしまったのでした。
私が天井と思っていた部分がそのまま屋根になっているため、私のたった一回の張り手で夜空に浮かぶお月様が見えてしまったのでした。
そして屋根兼天井は、厚さ1.5cmくらいのベニヤ板という、匠も驚きの仕様(一応撥水性のある塗料を塗ってあるため雨漏りはしなかった)。おまけにこの家には柱がありません。
小学生が夏休みの宿題で作った工作かよ!
そして、金ちゃんと会話をしていく中で懸念していた事が、絶妙なタイミングで起こります。
そして、金ちゃんと会話をしていく中で懸念していた事が、絶妙なタイミングで起こります。
金ちゃんがその辺一帯の屋根ごと落下してきたので、オープンハウスといっても過言ではないレベルで屋根(天井)が無くなりました。
全身で金ちゃんを受け止めたので一瞬『アバラ、いったな』と思うほどの衝撃でしたが、金ちゃんは感慨深げに夜空を眺めています。
後日、壊れた屋根部分には新しいベニヤ板が設置され、短かった人生初のオープンハウス生活は幕を閉じました。
次回は私を襲った新たな脅威についてお話をさせていただきます。
本日もご清聴賜り、まことにありがとうございました。
次回は私を襲った新たな脅威についてお話をさせていただきます。
本日もご清聴賜り、まことにありがとうございました。