ご麺ください。製麺を趣味にしているライターの玉置です。
市販されているラーメン用の麺と、焼きそば用の麺の違いをご存知でしょうか。
それは「生麺」と「蒸し麺」の違いです。
▲ラーメン用は生麺!
▲焼きそば用は蒸し麺!
全国には様々な麺料理があるので一概にはいえませんが(沖縄そばは茹で麺だったりする)、関東のスーパーで並んで売っているラーメン用と焼きそば用の麺に関していえば、だいたいこのようになっています。
▲茹でてから使う焼きそば用の蒸し麺というのもある!
この生麺と蒸し麺は、材料自体は基本的に同じです(細かい配合は違うでしょうけど)。
ということは、ラーメン用の生麺を蒸すと、焼きそば用の蒸し麺になりますね!
市販の蒸し麺で作る焼きそばも美味しいわけですし、「そんな手間をかけないで素直に焼きそば用の麺を買ってくればいいじゃん!」と思うかもしれませんが、蒸すというひと手間を自宅でやることに意味はあるのです。
市販の蒸し麺とは、まったく違う食感、香り、味わいになりますよ。
生麺を蒸して焼きそばを作ってみよう
ということで、さっそく中華麺を蒸していきましょう。
麺はちぢれの入った細麺をセレクトしてみました。
「麺を蒸すってどうやんだ?」と思う方も多いかと思いますが、肉まんやシュウマイを蒸すのと同じと考えてください。
我が家ではパスタ用の鍋を使い、中カゴに溢れない程度の水を入れて蒸すことが多いです。
中カゴ付きの鍋がない場合は、大きめの鍋の中央に適当な台を置き、その上に金ザルを乗せてやれば、同じように蒸すことができます。記事の後半では電子レンジを使ったやり方も紹介しますよ。
▲パスタ鍋に入れた水が沸騰したら、生麺をほぐして入れて蓋をします。
蒸す時間ですが、通常の茹で時間の2~3倍を目安にしてください。
蒸気の力で加熱した麺は、茹でたのとは全く違うゴワゴワの蒸し麺となります。
▲市販の焼きそば用蒸し麺ともまた違う、独特の蒸し麺ができあがった。
これに油を絡ませておき、事前に用意しておいた具と一緒に炒め、ソースなどでお好みの味をつければ、蒸したて麺を使った焼きそばの完成となります。
麺を蒸すのがちょっとだけ手間ですが、難しいことはありません。味付けだって専用のソースがなくても、適当にやれば結構美味しく仕上がります。なぜなら麺がうまいから!
▲蒸してすぐに焼く場合は、油をまぶさなくてもOKです。
▲具や味付けはお任せします。
▲自家製蒸し麺を使った焼きそばの完成です!
この焼きそば、市販の麺を使ったのとは本当に違います。
力いっぱいゴワゴワで、飲み物を用意しないで食べようとすると、喉が詰まって危険なほどの噛みごたえ。日本有数の喉越しの悪さ(良い意味で!)なので、ぜひ牛乳かビールを用意してください。
ものすごく悪く言えば、古くなって乾いた輪ゴムのような食感で、かんすい臭さとほのかな苦みのある麺なのですが、これが好きだという人も多いはず! ゴワゴワは褒め言葉にもなるんです!
▲軟弱な焼きそばに飽きたという貴方に捧げます!
※注:上記のように、蒸しただけの生麺は、茹でた場合に比べて消化が悪くなるおそれがあります。
蒸し&茹でのハイブリッド方式だとなめらか麺に
せっかくなので、蒸し麺の発展形もご紹介します。
麺を蒸すところまでは一緒なのですが、蒸したあとに30秒~1分ほどお湯にくぐらせるという、蒸し&茹で麺方式です。
▲パスタ鍋なら、鍋に入っているお湯をそのまま使うと楽です。
このプラスひと手間で、ゴワゴワした独特の食感は残しつつ、麺肌は断然滑らかになり、かんすいの匂いも薄れます。茹でるのではなく、水で洗ってもOKです。
ちなみに石巻やきそばは、蒸す→茹でる→蒸すと、さらに工程が複雑なんだとか。
同じ麺でも、工程によって食感を変えることができるんです。
▲表面はなめらかで、中心はゴワゴワという理想的な焼きそばに!
茹で麺で作る焼きそばはもっちり系に
蒸すのがやっぱり面倒だという人は、いきなり茹でちゃっても大丈夫。さっきまで蒸し麺の良さを熱く語っておいてなんですが、茹でたての麺を焼くことで、モッチリとした美味しい焼きそばができあがります。
関西方面などでは、蒸し麺ではなく生麺を茹でて、焼きそばにする店も多いとか。
▲少し硬めに生麺を茹でましょう。
▲細麺の場合は油を絡めてから焼くと、焦げ付きにくいです。
▲茹で麺の焼きそばもまた良し!
茹でて火を通した麺は、中心部分までしっかりと水分が行き渡っていて、まぜそばと焼きそばの中間といった感じでしょうか。子供にはこっちの方がウケるかな。
これを太麺で作れば、よりモチモチが強調された焼きそばになりそうです。
▲みんな違って、みんなうまい!
レンジで作れるゴワゴワ麺
もうすっかりお腹はいっぱいなのですが、さらに実験を続けてみましょうか。
今度は100円ショップで購入した電子レンジ用の蒸し器を使ってみます。
加熱時間が全く読めないので様子をみながらチンしたところ、600ワットで2分→麺を水洗い→2分→水洗い→2分と、合計6分の加熱でいい感じになりました。
これを製麺好き指圧師のタムラさんという方から教わった、たっぷりのラードで炒めてショウガとオイスターソースだけで味付けするという、麺を味わうためのレシピでいただきます。
▲味付けはショウガとオイスターソースだけ!
さすがにこの材料だと物足りない感じがするかなと思ったら、麺の歯ごたえが素晴らしいので、これだけでしっかりと味のピラミッドが成り立っています。コツはちゃんとしたオイスターソースを使うことでしょうか。
▲シンプル万歳!
※注:上記のように、蒸しただけの生麺は、茹でた場合に比べて消化が悪くなるおそれがあります。
バリバリでゴワゴワでモチモチな「かた焼きそば」
さらにさらに、もう一品いってみましょうか。
今度は超簡単なあんかけかた焼きそばです。
麺は歯ごたえ重視で太麺にしてみました。
▲つけ麺でうまそうな太麺を、かた焼きそばにしてみます。
下準備は蒸し&茹で麺方式。パスタ鍋で8分蒸して1分茹でた麺を、油をたっぷりと引いた小振りのフライパンに入れて、グイグイと押し付けて焼き目をつけます。
▲かた焼きそばの「かた」って、どういう漢字が正解なんですかね。
あんかけは作るのが大変なので、温めておいた市販のレトルトを使っちゃいます。
はい、あっという間に(でもないですが)完成です!
▲麺に対してあんかけが少なかったのはご愛嬌。
油で香ばしく焼かれた麺は、表面がバリバリで中心はゴワゴワ&モチモチ。そこにトロリとしたあんかけが覆い掛かるという食感の四重奏。
こいつをカラシや酢でいただくと、家庭料理とは思えない完成度です(レトルト使ってるけど)。
市販の蒸し麺で作る普通の焼きそばも十分うまいですが、このように麺に手を加えて作る焼きそばは、その掛けた手間と時間を裏切りません。
さらにこだわりたいという人は、自家製麺の奥深き世界に足を踏み入れてみてください!
▲麺づくり、おもしろいですよ~。
プロフィール
玉置標本
趣味は食材の採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は古い家庭用製麺機を使った麺作りが趣味。