洋の東西を問わずさまざまな美術品の収集・展示や、伊豆全域の歴史的価値のある美術品に関する調査研究を行う上原美術館(下田市宇土金)で1月25日、2つの新たな企画展が始まった。
1983(昭和58)年に開館した上原仏教美術館、2000(平成12)年に開館した上原近代美術館が、2017(平成29)年にリニューアルして一体になった同館。大正製薬の上原昭二名誉会長から譲り受けた近代絵画コレクションと、昭二さんの両親である上原正吉さん・小枝さん夫婦の寄付による仏教美術が中核を成す。
今回始まった企画展は、近代館に優しい色彩の絵画作品を集めた「あわいひかり やわらかないろ」と、仏教館での「ちいさきものは みなうつくし」と題した展覧会の2つ。
「あわいひかり やわらかないろ」では、新しく収蔵した安井曽太郎作「庭の雪」や、同館の収蔵品であるアルベール・マルケ作「冬のパリ」、クロード・モネ作「雪中の家とコルサース山」など、雪をモチーフにした絵画を並べて展示する。
近代館の学芸員・丸山さとわさんは「絵画と観客の距離が近いのが当館の魅力。静かな里山でじっくり作品に向かい合ってほしい」と話し、上席学芸員の土森智典さんは「小粒でも良質な作品が優しいまなざしで集められている。知り合いの家を訪ねるように気軽に絵に合いに来てくれたら」と呼びかける。
「ちいさきものは みなうつくし」では、新収蔵の「高野大師行状図画断簡(こうやだいしぎょうじょうずがだんかん)」、鎌倉時代から伝わる20センチに満たない銅造の「誕生仏」も初公開する。さらに、塔の中に一文字ずつ法華経の文字を書き入れた「一字宝塔法華経」などの珍しい作品も展示する。
学芸員の櫻井和香子さんは「伊豆には貴重な仏教美術が多く眠っている。展示の際には仏像を背後からも見られるようにするなど、リクエストに応じていろいろな工夫をしている」と説明する。
学芸員たちを束ねる事務局長の富岡洋二さんは「展示替えごとにリピートしてもらえたら」と呼びかける。
開館時間は9時30分~16時30分。入館料は、大人=1,000円、学生500円、高校生以下無料。会期終了の4月13日までは無休。