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shungo.arai

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Filed under: China 

中国政府が国営メディアを使った海外発信能力の強化に乗り出す。2012年度政府予算案では関連予算を4割近く増やし、テレビ局の海外人員の拡充、英字紙の海外無料配布など英語による情報発信を後押しする。中でも外交戦略上重視する米国とアフリカの事業を重点的に拡充し、イメージ向上を狙う戦略だ。ただ中国メディアによる外国人記者らの引き抜きが目立ち始めており、反発を買う恐れもありそうだ。

中国の従来のソフトパワー戦略は中国語を教える「孔子学院」の設置など総花的に中国文化の紹介や浸透を狙う性質が色濃かったが、それを事実上、転換するものといえる。中国政府の見方や見解などを報道機関が英語で発信する場を増やすという動きには、より明確なメッセージを世界に出したいという思惑がうかがえる。

●引き抜き活発 中国財政省は14日閉幕した全国人民代表大会(全人代)に出した12年度予算案で「主要メディアの海外発信能力を強化」する費用を計上。その規模は前年比37.5%増の27億5千万元(約360億円)にのぼった。

既に動きは出始めている。中国中央テレビ(CCTV)は1月にケニア・ナイロビに新テレビ局「CCTVアフリカ」、2月に米ワシントンに「CCTVアメリカ」をそれぞれ開設、現地で番組制作を始めた。海外で番組づくりをするのは初めてで、まず1時間番組を毎日1本ずつ制作し、いずれアフリカ、米国双方で現地から24時間体制で発信する計画だ。

成否のカギとなるのは人材だ。米国では過去半年だけで約70人を採用した。国際展開で先行する英BBCや中東の衛星テレビ局アルジャズィーラから記者、キャスター、プロデューサーを年俸20%アップで引き抜くケースもある。

●アルジャズィーラ意識 政府系英字紙チャイナ・デイリーは昨年から米9都市で無料配布を始めた。ワシントンとニューヨーク、シアトルの3都市では毎日発行。ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ、ボストン、ヒューストン、アトランタの6都市では週刊として金曜日に配布し、合計17万部を発行する。

国連本部や各国大使館、シンクタンクなどに届けているほか、地下鉄の駅前にも山積みしている。チャイナ・デイリー米国支社の紀涛支社長は「中国社会の多様な側面を紹介しようとしている」と語る。無料配布で知名度を高め、いずれ有料に切り替える戦略だ。

こうした海外への攻勢はアルジャズィーラに触発された面がありそうだ。同局は「アラブの春」で報道をリードし、リビアやシリアの既存政権に厳しい世論を形成した。中国政府では「アルジャズィーラのオーナーであるカタール政府はアラブで最も発言力のある国になった」(シリアのムスタファ駐中国大使)という分析が聞かれている。

— 「中国メディア、海外発信強化 人員拡充や英字紙無料配布…イメージ向上の思惑」, 日本経済新聞(朝刊), 2012年3月20日.