嶋正利のプロセッサ温故知新
目次
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(15)
連載のおわりにあたって,そして8080開発への旅立ち
日本に帰れば組織上,私はただの平社員だった。4004シリーズLSIとプリンタ付き電卓の開発の成功で社長賞をいただいた。受賞スピーチで何を話したかは忘れたが,その会場と雰囲気は,今でも忘れられない。会社の皆には申し訳なかったが,退職することに決めた。
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(14)
CPU「4004」を使ったプリンタ付き電卓の開発終了
1971年6月に入ると,発注したROMも出来上がり,量産試作機も完成した。この頃の私は,開発した電卓の信頼性試験のための量産試作や,工場へ移行させる生産技術などの仕事で目が回るように忙しかった。
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(13) --- CPU「4004」を使ったプリンタ付き電卓の開発
4004シリーズLSIの開発が終了し,1970年11月下旬に帰国した。私の本来の仕事,プリンタ付き電卓の開発が始まった。帰国後,プリンタ付き電卓の機能の仕様を決め,電卓用プログラムの作成に着手した。同時に,開発支援システムのような試作用エンジニアリング・システムを作った。
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(12) --- CPU「4004」チップの完成
1970年11月に入ると,4004 CPUのレイアウト・チェックが終了し,マスク原図の作成を開始したと連絡が入った。設計開始からわずか8カ月で,全てのLSIの設計が完了した。4003 SRと4001 ROMは1回目の試作ウェーハで正常動作が確認されており,4002 RAMもマスクの原図をカットする…
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Video Oral History of Microprocessor at Computer History Museum(2)
Computer History Museumでは,歴史的なコンピュータを,単に展示するだけではなく,システムとして動作するように修復して展示している。すでに,IBM 1401,IBM 1620,DEC PDP-1などが修復されている。シリコンバレーにはIBM,DEC(Digital Equipm…
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Video Oral History of Microprocessor at Computer History Museum(1) --- CPU「4004」の詳細な論理設計を開始
米国カリフォルニア州マウンテンビュー市にあるComputer History Museumで,最も有名な初期のマイクロプロセッサに関する「Video Oral History」の収録が始まった。収録される資料は,将来の展示品として使われ,歴史家や研究者やWebを介して一般の人にも公開される予定との…
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(11)
CPU「4004」の設計終了
1970年7月に入ると,ホフが開発していた論理シミュレータが完成した。論理シミュレータを使って4004CPUの論理検証を開始した。困ったことに,論理シミュレータの使い方の打ち合わせ中に,その日の昼休みに担当技術者がレイオフされてしまい,戸惑ってしまった。
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(10)
CPU「4004」の詳細な論理設計を開始
論理設計を進めていくと,また難題が降りかかってきた。使用するトランジスタ数を2,000個以内にすることと,汎用レジスタやアドレススタックだけでなく,すべての論理にダイナミック回路の使用という要請であった。
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(9)
発注者がCPU「4004」の論理設計の担当者となった
開発の正式契約が1970年3月に結ばれ,4月7日に私一人でインテルを訪問した。正式契約では2人の論理回路設計者が雇われる計画だった。したがって,今度の訪問目的はインテルが設計している論理回路図の確認であった。かなりの進ちょくを期待して,インテルを訪問した。
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(8)
仕様の最終検討と,図入り製品機能仕様書と製品設計計画案の作成,そして帰国
システム・コスト低減のために,メモリー用16ピン・パッケージを使用するので,システム・バスにROMやRAMを選択するチップ選択用制御信号にも時分割した制御バス(CM-ROMとCM-RAM0-3)を導入した。そのために追加した命令がチップ選択用命令DCL(Designate Command Line…
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(7)
守勢から攻勢へ
第二次改善策として,低性能プロセッサと少容量ROMメモリーを使い高いコストパフォ-マンスの達成を目的として,ホフとメイザーと交渉した。システムとしての性能向上,プログラム・ステップ数の減少,プログラムを使った入出力機器のリアルタイム制御などを達成するために,命令セットと機能の変更と追加と応用への最…
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(6)
本当の開発の仕事と交渉が始まった
ホフの提案を受け,この頃から,ソフトウエアとハードウエアの両方を理解できる私がインテルとの交渉の前面に出るようになった。インテル側でもソフトウエア技術者であるスタン・メイザー(S.Mazor)を雇い担当者に加えた。ソフトウエア技術者の加入によりコミュニケーションは良くなったが,ビジコン側からの提案…
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(5)
世界初のマイクロプロセッサ4004の産声
インテルとの共同開発が暗礁に乗り上げそうになった1969年8月下旬の或る日,ホフが突然,数枚のコピーを片手に,興奮気味に,私達の部屋に飛び込んできた。ホフが最初に示したブロック図にはプロセッサの骨格だけが描かれていた。
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(4)
インテルと交渉開始するも,2カ月で暗礁に
1969年6月,私は共同開発のために渡米した。その頃のインテルは,創立1年後で,従業員が125人に満たない規模だった。建物は2,000平方メートルほどの貧弱な印象を与える中古の貸しビルで,製造装置もリースしていた。LSIの製造能力は1シフト(1日の最大シフト数は3)につき月産9万個であった。しかし…
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(3)
電卓にも使える汎用LSIのアーキテクチャを決定
1961年に開発されたシリコン・プレーナ集積回路(IC)により「論理の時代」が到来し,集積回路が多くの応用分野のシステムに大量に使われるようになった。米国においては,独立系半導体会社が次々と設立され,半導体産業が新産業として成長していった。
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世界初のCPU「4004」開発回顧録(2)
プログラム論理方式を採用したプリンタ付きIC電卓の開発に成功
10進コンピュータとも言えるプログラム論理方式を採用したプリンタ付きIC電卓の開発が,マイクロプロセッサの誕生に結びつくとは誰が予想できただろうか。プリンタ専用LSIを開発したり,入出力機器のリアルタイム制御のプログラム化に失敗したり,2進コンピュータの提案と応用からの要求を融合しなかったりしたら…
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時代を切り拓いた技術とシステム構築技術の進展 (6)
マルチコア搭載のPower4により「並列処理の時代」が到来
2001年にIBMが開発したマルチコア搭載のPower4により「並列処理の時代」が到来した。キーワードはマルチコアとなった。パソコン向けにAMDのOpteron Dual Core(2005年)とインテルのXeon Dual Core(開発コード名はWoodcrest,2006年),ゲーム機(Pl…
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時代を切り拓いた技術とシステム構築技術の進展 (5)
WWW(World Wide Web)とJava言語により「インターネットと言語の時代」が到来
1991年に開発されたWWW(World Wide Web)と,1990年に開発がスタートしたプラットフォームに依存しないJava言語により,「インターネットと言語の時代」が到来した。キーワードは,インターネット,情報技術(IT)産業,オープン・システム経営/オープン・ネットワーク経営となった。1…
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時代を切り拓いた技術とシステム構築技術の進展 (4)
ビジネス向けパソコン「ThePC」の開発により「OSとGUIの時代」が登場
1981年におけるIBMのビジネス向けパソコン「ThePC」の開発により「OSとGUIの時代」が登場した。それまでの閉鎖的なコンピュータ・ビジネスとは異なり,オープン・アーキテクチャ,オープン・システムズ,デファクト・スタンダードなどがキーワードとなった。パソコンとパソコン用ソフトウエアなどの新産…
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時代を切り拓いた技術とシステム構築技術の進展 (3)
世界初のマイクロプロセッサ「4004」により「プログラムの時代」が到来
1971年における世界初のマイクロプロセッサ4004の開発により「プログラムの時代」が到来した。ICなどで構築していたハードウエア論理回路網に代わって,マイクロプロセッサとソフトウエアを使ってシステムの機能を実現する時代になった。キーワードはマイクロプロセッサとソフトウエアとなった。マイクロプロセ…