BOOK REVIEW ウェブ担当者なら読んでおきたいこの1冊
『Web2.0が殺すもの』
神野 恵美(編集者、ライター)
Web 2.0はビジネス界の本物の救世主となり得るのか?
他書が触れないタブーに斬り込んだ、反『ウェブ進化論』
- 『Web2.0が殺すもの』
- 宮脇 睦 著
- ISBN:4-86248-071-3
- 定価:本体952円+税
- 洋泉社
今年次々と出版されたWeb 2.0関連書において、批判的視点から書かれた一冊。やや過剰ぎみにWeb 2.0を礼賛する多くの書籍の中にあって、このような“アンチ”書の登場は存在だけでも新鮮だが、そこで論じられる筆者ならではの視点も斬新だ。
本書では、Web 2.0を「その崇拝がエリート層によって主導される」としながら、「最強のプレイヤーはニートである」と興味深く論じられる。その理由は“Web 2.0的社会”は、Webへの接触時間の長さによって左右されるというからで、これは意外な本質を突いた皮肉な示唆だ。さらに、それはPCやネットを使わない人やそれらに関心のない人を無視した世界であり、つまりそこにリアルな社会は反映されていないということを指摘している。
また、筆者はWeb 2.0的世界が抱える“性善説”が必然的にもたらす、“集団の極性化現象”を危惧する。つまり、善意によって蓄積されたはずのWeb 2.0上の集合知が偏向的な方向に作用し、真実や事実が歪曲されてしまう可能性があり、現実世界同様、そのことを肝に銘じて接するべきだと主張している。
本書は、いわゆるWeb 2.0の批判書だが、そのほかにも見落としがちな鋭い指摘が数々なされ、Web 2.0的ビジネス展開に大いにヒントを与えてくれる。また、他書が曖昧にしてきたWeb 2.0の盲点を具体的に論じることで、どこかバブル臭が漂うその世界を別の角度から明瞭にし、解説本としても一読の価値がある。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.3』掲載の記事です。
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