Image: Aray Chen/Flickr。画像は別の英文記事より
フェイスブックは株式公開企業として不調だが、その大きな理由は同社がモバイルをマネタイズできていないからだという見方がある。これに対して、フェイスブックと競合するグーグルは、世界をリードするスマートフォンOS「Android」を開発した。グーグルはモバイル市場を所有しているといえる。
しかし、ひとつ問題がある。モバイルは儲からないのだ。少なくとも大儲けできるわけではない。
アナリストの間には、今回予想外に悪かったグーグルの決算はモバイルが原因だとする声がある。特にノートPCやデスクトップPC向けの広告に比べて、モバイル広告の価値が低いのが問題なのだという。グーグルによると、同社の広告全体におけるクリック単価(CPC)の平均は、前年同期に比べて15%減少した 。
グーグルにとっては広告が重要な収益源であることから、7月以降に同社の株価を約100ドル引き上げていた楽観ムード(日本語版記事)が急に終わるという厳しい仕打ちを投資家から受けることになった。
Image:Google Finance
BGC Financial社のアナリストであるコリン・ギリスは、この理由をAndroidのせいだと述べる。過去1年間におけるグーグルCPCの下降傾向は、Android人気の上昇と時期的に重なっている とギリス氏は指摘する。
「自社製品同士で市場の食い合いをするカニバライゼーションが起こっている」とギリス氏は言う。「モバイル・クリックのマネタイズは、これまでのクリックのおよそ半分だ」
モバイル・クリックのマネタイズが悪い理由は、モバイル広告が、デスクトップ上の広告のような確率ではユーザーのエンゲージメントを獲得できないからだ。スマートフォンでGoogle検索をするときは、たぶん外出先で、なんらかの行動のためにその情報が必要というときだろう。 目にとまった広告をタップする暇はないわけだ。
10月18日(米国時間)、グーグルが投資アナリストたちに収支報告を行う電話会議において、ラリー・ペイジ最高経営責任者(CEO)が強調した点はモバイルだった(ペイジCEOは6月以来、原因不明の喉の問題で公の席での発言を避けていたが、今回もまだ彼の声はしわがれていた)。
ペイジCEOは、「情報とコンピューティングがあふれた世界」について考えを述べた。ユーザーの多くは1日中、複数のスクリーンを所有しており、これらのスクリーンをスイッチしながら利用するのが普通になってきている。そしてこのような人々の変化に合ったビジネスモデルを採用する上で、グーグルは「非常にすぐれた位置にある」という。
ペイジCEOは、いまのペースだとグーグルはモバイルによって年間80億ドルを売り上げるようになる と主張した。ただし、この数字は広告だけではなく、同社のオンラインストア「Google Play」で販売される音楽、動画、アプリが含まれている。
電話会議では、ほかの幹部たちもグーグルが持つ新たな可能性について宣伝した。グーグルの超高速な「Google Fiber」ネットワークは、まだ1都市にしか展開されていない。しかし、いまだに広告費をいちばん集める力があるテレビを、いつの日かグーグルが支配するかもしれない という期待(日本語版記事)は、最終的にモバイルに対する懸念を圧倒するかもしれない。
「われわれは米国におけるインターネットの次章を開こうとしている」とパトリック・ピシェット最高財務責任者(CFO)は述べた。
TEXT BY MARCUS WOHLSEN
TRANSLATION BY ガリレオ -緒方 亮/合原弘子