南太平洋に現れた巨大な「軽石の島」はどこからやって来たのか?

2016年11月、南太平洋の中央に位置するトンガ西部の海で、長さ数十kmに及ぶ「軽石の島」が発見された。海底火山が噴火する際にできるものだが、どの火山からやってきたものかはわかっていない。米デニソン大学の地球科学者が、考えられる可能性を解説する。
南太平洋に現れた巨大な「軽石の島」はどこからやって来たのか?
PHOTO: Narongrit Dantragoon / 123RF

ニュージーランド空軍は2016年11月、南太平洋の中央に位置するトンガ西部の海上で、長さ数十kmに及ぶ「軽石ラフト」を発見した

軽石ラフトとは、海底火山の噴火の際にできる軽石の浮島で、数カ月、あるいはそれ以上にわたって海の上を漂う。今回の軽石ラフトは、火山のない海域で航空機と衛星によって確認された。

その外観から、今回の軽石ラフトはできた位置から遠く流されてきたと思われる。ラフトは細長く引き伸ばされたような形をしており、海面を漂流している間に海流や風雨に晒されて変形したとみられるのだ。衛星画像によると、その長さは数十kmに及ぶ。

アーヴルへのルート

漂流した軽石ラフトが発見されたのは、今回が初めてというわけではない。たとえば2012年にも、ニュージーランド北部のケルマディック諸島付近の海域で、学術調査船によって軽石ラフトが確認されている

Planet Labs」のロブ・シモンと筆者は2012年、その軽石ラフトの発生源となった噴火場所を特定するために衛星画像の履歴を調査した。そして、「アーヴル」(Havre)と呼ばれる海底火山がその発生源であることを確認した。

アーヴルの噴火に関して、わたしたちはラッキーだった。衛星画像のアーカイヴに沿って軽石ラフトの漂流したルートを遡り、アーヴルの表面に噴出したプルーム(上昇するマグマの流れ)までたどることができたからだ。

2012年に発見された軽石ラフトの発生源を特定した際の、海底火山「アーヴル」の噴火をとらえた衛星画像。IMAGE COURTESY OF NASA EARTH OBSERAVATORY

発生源はどこだ?

しかし、今回発見されたラフトの発生源は、もう少し見つけにくい。ニュージーランドの「GeoNet」プロジェクトのスタッフたちが、同じ方法によってこの軽石ラフトの発生源を見つけようとしているが、これまでのところ何も確認されていない。

この軽石ラフトが発見された場所は火山の弧に囲まれている。北にヴァヌアツ弧、東にトンガ弧、南東にはケルマディック弧がある。この海域の海流によって、おそらくラフトは東から西へと流されたと思われるので、発生源はトンガ弧の中にあるはずだ。

筆者はトンガとケルマデックの火山のなかで、発生源として可能性のある場所をいくつか調べた。アーヴルのほか、ホーム・リーフモノワイといった海底火山だ。だが、ラフト発見前の1カ月半、2016年10月上旬にまで遡っても噴火活動の兆候は見つからなかった。

気をつけなければならないのは、衛星画像履歴による調査ができるのは、海面が確認できるほど天候がクリアなときに限られるということだ。これらの海底火山のいずれかが軽石ラフトの発生源だったものの、上空を覆う雲によって、海面に噴火の兆候を見つけることができなかったのかもしれない。

または、軽石ラフトは、トンガ弧のなかの未知の海底火山から出て来た可能性もある。この場合は、発生源を見つけるのが特に難しくなるだろう。

火山学者であれば、現時点で何をするだろうか? 発見された軽石ラフトの試料を誰かが採取してくれたらその組成を分析できるのに、と思うだろう。そしたらその組成を、トンガやケルマディックの火山からとれた試料と比較して、新しい軽石ラフトに適合する火山を確認できる。もしこの方法で確認できない場合は、やはり未知の火山から発生したと考えるべきだろう。地質学の世界において、それは珍しい事象ではないのだ。

軽石ラフトは最終的にはバラバラになり、遠くの海岸に打ち上げられる。打ち上げられたラフトは、生物たちに新しい生息地をもたらすこともある。


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TEXT BY ERIK KLEMETTI

TRANSLATION BY TOMOKO MUKAI, HIROKO GOHARA/GALILEO