【9月28日 AFP】バレリーナの脳の構造は長年訓練を積むうちに、体のバランスを崩さずに回転できるよう変化することを突き止めた研究論文が27日、英医学誌「Cerebral Cortex(大脳皮質)」最新号で発表された。研究結果は、慢性的な目まいの治療への応用が期待される。

 英ロンドン大インペリアルカレッジ(Imperial College London)の論文によると、プロのバレリーナたちの脳スキャンを行ったところ、内耳にある平衡器官からの信号を処理する部位と、目まいを認識する部位の2か所で、一般の人々と違いがみられた。

 多くの人は素早く回転すると、その後しばらくふらつきを感じる。これは頭の回転を感知する平衡器官の中に入っている液体が、回転を止めた後もしばらく揺れ続け、この揺れが有毛細胞を通じてまだ回転していると認識されるためだ。

 これに対しバレエダンサーは、つま先で片足立ちし素早く体を旋回させる「ピルエット」をふらつくことなく続けることができる。科学者たちは長らくこの謎の解明に挑んできた。

 インペリアルカレッジの研究チームは、バレリーナ29人と、年齢や運動能力が同程度の女性ボート選手20人を暗い部屋で回転椅子に座らせ、その椅子を回転させる実験を行った。被験者には回転が止まった後、感じている回転リズムで椅子に取り付けられた小型ハンドルを回してもらった。その結果、椅子を止めた後もバレリーナたちが回転を感じていた時間は驚くほど短かった。

 合わせてチームは、MRI(磁気共鳴画像装置)を使ってバレリーナたちの脳も調べた。すると運動機能をつかさどっている小脳の中で、平衡器官からの信号を処理する部位が、バレリーナの脳では通常よりも小さかったという。

 研究を主導したバリー・シームンガル(Barry Seemungal)氏は、バレエダンサーは何年もの訓練を経て(回転に関する感覚の)受容が抑制されるよう脳が適応し、このためピルエットで回転してもバランスを崩さずに踊り続けることができると説明している。

 また同氏は、慢性的なめまいに苦しむ患者の脳の同じ部分を調べれば、より良い治療法への道が開ける可能性があると話した。(c)AFP