私の手元に1冊の本があります。それは
Joseph Warren Dauben (1944-)
によるカントールの伝記
"GEORG CANTOR
His Mathematics and
Philosophy of the Infinite"
(1979 Harvard University Press
1989 Paperback reprinting
Princeton University Press) です。
本書は竹内外史(1926-2017)による
『集合とはなにか』(初版1976)の
新装版(2001 講談社ブルーバックス)です。
カントールの伝記が付け加わったのが
初版と異なる点です。
内容は次の通りです。
①まえがき
②復刊にあたって
③読者へのアドバイス
④第1章 立場の変換--翻訳語としての集合
⑤第2章 天地創造--楽園追放
⑥第3章 公理的集合論--現代数学の基盤
⑦第4章 現代集合論--華麗なる展開
⑧第5章 未来への招待--私の立場から
⑨カントール
⑩あとがき
⑪記号表
⑫さくいん
‥です(番号は私が振りました)。
本書は
講談社ブルーバックスの一冊なので
専門書でもなければ教科書でもありません。
著者が上述「読者へのアドバイス」で
言及されているように
記号や式の使用は「最小限度」にとどめ
と言って
通俗化して好奇心だけをつのらせることも
ないように配慮して書かれています。
例えば最近上梓された
田中一之氏(1955-)
『数学基礎論序説』
副題:数の体系への論理的アプローチ
(裳華房 2019.6.15)と比較いたしますと
記述スタイルが全く違います
(そもそも専門書と啓蒙書を比較することが
無意味であることはご海容お願いします)。
竹内はもともと
数学基礎論(foundations of mathematics)
(クリーネなら metamathematics)
なかでも
証明論(proof theory)の専門家です。
長く米国のイリノイ大学で教鞭をとられたので
(イリノイ州は米国の中部、シカゴのある州)
数理論理学(mathematical logic)を研究する
「ロジシャン」(logician)
という呼称が適切であったかもしれません。
事実、著者による
『現代集合論入門』(日本評論社 1971)の
第1章は「序章 Logocians 小伝」と題し
ゲーデル(1906-1978)
フレンケル(1891-1965)
ベルナイス(1888-1977)
をはじめとする9人の「ロジシャン」の
印象をスケッチされています。
ノーベル賞(1965)物理学者
朝永振一郎(1906-1979)は
「くりこみ理論」の大家ですが
日本語表現にもすぐれ
多くの随筆や啓蒙書を残しました。
同様に
竹内も独特の日本語表現にすぐれ
(朝永とは全く別の文体で)
啓蒙的文章・記事・書籍を残しました。
本書もその一環です。
その意味において
良い意味でも悪い(?)意味でも
竹内らしさ(考え方や指向)が反映された
入門書・啓蒙書となっています。
波長が合うみなさんには読みやすく
そうでない場合にはそうでないかも
しれません。
しかるに客観的に見ても
第2章 → 第3章+第4章前半
は「素朴集合論」から「公理的集合論」への
自然な橋渡しになっていると思います。
素朴集合論と公理的集合論は断絶したものではなく
素朴集合論を勉強したらあと一歩進んで
公理的集合論まで勉強したほうが
数学全体のイメージをつかめると思います。
第2章の章題は
旧約聖書を意識した命名になっています。
ヒルベルト(1862-1943)が
カントールの集合論について
「なんぴともカントールが創りたもうた
楽園からわれわれを追放することはできない」
と国際数学者会議で述べたことを踏まえ
素朴集合論の建設と
そのパラドックス(3つ)を
「天地創造」と「楽園追放」に
例えた命名法です。
「楽園追放」は英語で
"Paradise Lost"(パラダイス・ロスト)
ですから以前は
「失楽園」と訳されることが
多かったものです。その意味は
「失+楽園」=楽園を失う=「楽園追放」
です。英国の詩人
ミルトン(1608-1674)による
叙事詩「失楽園」(パラダイス・ロスト)
が有名ですが日本では
旧約聖書と関係ない小説・映画のほうが
有名かもしれません。
「失楽+園」と勘違いされている方も多いです。
本書に戻りますと
その白眉は
素朴集合論での3つのパラドックス
1)順序数全体の集合を考えるもの
2)集合全体の集合を考えるもの
3)ラッセルの集合を考えるもの
(ラッセルのパラドックス)
を検討し、そこから
「どのような集合が想定されるか」
という考察のもとに
公理的集合の話に進んでいくところ
だと思います
(あくまで個人の感想です)。
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