プロジェクトマネジャーこそが IT プロジェクト成否の最重要要因と考えている人が多いかもしれないが、
予算や人員の権限もなく、上長の干渉を受け、なーなーで進められる、日本の IT プロジェクトでは、
プロジェクトマネジャーより、経営幹部や顧客が最大の問題であることが多い。
経営幹部は、上長面して干渉はするが支援せず、顧客は、金を払っているからと無理難題を吹っかける。
「売上至上主義」、「職場の上下関係は絶対」、「お客様は神様」の日本ならでは、である。
著者は、本書「はじめに」で、『プロジェクトの成功要因の第1位は「幹部の支援」で、第2位は「ユーザの貢献度」、
第3位に「プロジェクトマネジャーの能力」となっています』という調査結果に言及している。
この辺の感覚は、自分の経験とも一致している。
翻訳本にはない、日本における IT プロジェクトの現状を踏まえた本といえる。
散文で書かれた多くの「事例」は、同じケースを関係者の行動様式によって、
失敗シーンと成功シーンの「2事例」として描いている。
すなわち、各章は、「失敗事例」->「どうすりゃいいの」->「成功事例」の構成になっている。
文章力はかなりのもので、非常に読みやすい。
とくに pp.54-56 のコラム『ITベンダのための「プロジェクトを失敗させる方法」』は、皮肉に富んで秀逸。
これがあまりに面白いので、書名に採用したのだと想像する。
プロマネ本と思われるかもしれないが、対象はプロマネに限らず、IT プロジェクトに関わる人すべてに役立つ。
失敗させる上司や顧客、営業、プロマネなどの言動が、見事に「言語化」されている。
問題人物の「あるある」本なのである。
特に、理不尽な IT プロジェクトに関わっているエンジニアは、直接的な効用がある。
この本の該当箇所にラインマーカー引いて付箋をはさんで、問題上司の机の上に置けば、溜飲が下がるかもしれない。
(ただし、こんな「対話」や「思いやり」を欠いたやり方では、プロジェクトの好転はないであろうが。)
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ITプロジェクトを失敗させる方法: 失敗要因分析と成功への鍵 単行本 – 2008/2/1
中村 文彦
(著)
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- 本の長さ148ページ
- 言語日本語
- 出版社ソフトリサーチセンター
- 発売日2008/2/1
- ISBN-104883732533
- ISBN-13978-4883732531
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商品の説明
著者からのコメント
プロジェクトの成功および失敗には、さまざまな要因が複雑にからまっています。失敗の最も大きな原因が、顧客の姿勢や経営幹部の言動等、プロジェクトチームの責任ではないことも少なくありません。つまり、プロジェクトの失敗を叱責し、その責任の所在を追及している「その人」こそが、失敗に大きな影響を及ぼしていることもあるのです。
現在の複雑なプロジェクト環境においては、プロジェクトマネジャーやプロジェクトチームの独力で、プロジェクトを成功に導くことは困難になってきています。プロジェクトチームとしては、顧客や母体組織の幹部・PMO等を自分のプロジェクトに巻き込む行動様式が必要になってきています。それと同時に経営者やラインマネジャー、PMOもプロジェクトの目的や状況を的確に把握した上でプロジェクトチームを見守り、支援する行動様式が重要なのです。
現在の複雑なプロジェクト環境においては、プロジェクトマネジャーやプロジェクトチームの独力で、プロジェクトを成功に導くことは困難になってきています。プロジェクトチームとしては、顧客や母体組織の幹部・PMO等を自分のプロジェクトに巻き込む行動様式が必要になってきています。それと同時に経営者やラインマネジャー、PMOもプロジェクトの目的や状況を的確に把握した上でプロジェクトチームを見守り、支援する行動様式が重要なのです。
この書籍では、ITプロジェクトの失敗をさまざまな観点で分析しながら、失敗の発生要因を日々の何気ないシーンによる具体的な事例として描きました。ITプロジェクトの経験者であれば思い当たるところが必ずあると思います。
そして失敗の要因分析と成功の鍵を提案した後で、同じシーンを成功事例として描き直してみました。
プロジェクトは多くの人々の関係性の上に「全体」として成り立っています。私たち一人ひとりの「在り方」がプロジェクトの成否に影響を与えているのです。幹部社員の何気ない一言がプロジェクトを失敗させるきっかけになることもあれば、たった一人のメンバーの「ささやかなリーダーシップ」がプロジェクトを成功に導くこともあるのです。
そのプロジェクトに関る人に「思いやり」を中心とした「対話」があれば、本書に描いた「成功事例」には必ず到達できると信じています。
登録情報
- 出版社 : ソフトリサーチセンター (2008/2/1)
- 発売日 : 2008/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 148ページ
- ISBN-10 : 4883732533
- ISBN-13 : 978-4883732531
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,213,920位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 561位一般経営工学関連書籍
- カスタマーレビュー:
著者について
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カスタマーレビュー
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上位レビュー、対象国: 日本
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- 2008年3月30日に日本でレビュー済みAmazonで購入
- 2008年6月23日に日本でレビュー済みAmazonで購入本のタイトルは「ITプロジェクトを失敗させる方法」と少々過激ですが、実際の内容はサブタイトルである「失敗要因分析と成功への鍵」といえます。
ボリュームは150ページ弱と少なめですが、少ないボリュームの割には濃い内容であり、多くの「気づき」を得ることができます。
一方、文章は簡潔で、明確な切り口で体系化されており、テンポよく読み進めることができます。
また、著者の中小企業診断士・プロジェクトマネージャーとしての知識と、実務から得られた業務経験が見事に融合しており、決して「机上の空欄」的にはならず、読み手の経験や知識と重ね合わせることができる点はまさに称賛に値すると思います。
本書の構成としては、プロジェクトの各段階において、
(1)失敗事例
(2)失敗要因
(3)成功への鍵
(4)成功事例
を挙げることで、明快に説いています。
つまり、
(1)こんな感じでプロジェクトは失敗した(当事者の生々しい会話形式)
(2)何で失敗したの?
(3)本当はこうした方がよかった
(4)こうしていたらこんな成功事例になっていた
と、失敗事例から、ゴールである成功事例をイメージすることができる構成になっています。
本書は、ITプロジェクトに関わる者だけでなく、システムエンジニア、プログラマー、さらには他業種のプロジェクトマネージャーや経営者にもお勧めしたい書籍といえます。
久々に出会った良書でした。
- 2008年5月10日に日本でレビュー済みAmazonで購入本の執筆活動も一つのプロジェクトと言えるが、本書の著者は、このプロジェクトには失敗しているのではないかと思う。
本書で目指すゴール(どのような読者を想定して、どのような主張をしたいのか?)やスコープがあまりに明快ではないのだから。
各章の構成は、プロジェクトの各段階での代表的な失敗要因の分析から入り、次いで、このような失敗に至らないための方策やPM(プロジェクトマネジメント)に関する技法について議論する形となっている。
但し、失敗要因の分析のボリュームは薄い。お芝居じみた「失敗(成功)事例」なるものに多くのページが割かれており、サブタイトルの「失敗要因分析」にひかれて本書を購入した読者は残念に思うことが多いのではないか。この程度であれば、実際にITプロジェクトに関わる会社であれば、先達の方々に経験談を聞いて回るだけで十分集まる知見だと思う。
また、各章の後半には、各段階で紹介された代表的な失敗パターンに陥らないための方策やノウハウが議論されているが、こちらに至っては、PMに関する類書の極めて大雑把な要約レベルの記述に過ぎない。サブタイトルの「成功への鍵」にひかれて本書を購入した読者は、やはり残念に思うだろう。
全般として、本書は類書に比べ導入書的なレベルにあり、勉強を重ねている方には不要と思われるが、一方で、TOC(制約理論)などをベースとしたプロジェクトマネジメント技法などについては、さらっと触れられているだけであり説明はない。PM初級者をターゲットにするなら、用語解説や参考文献を紹介するのは最低限の配慮ではないか?
本書は総じて中途半端で、価格分の価値は無く、残念な投資であった。
PM初級者にはこの本を手に取るのであれば、トム・デマルコの一連の本などから入ることを推奨する。