論文原稿執筆の際の注意メモ Ver. 98.7.28
青木 孝文
以下は,論文執筆時の注意事項をメモしたものである.
文章
文章は,パラグラフ理論に基づいて執筆のこと.一つのバラグラフで,一つのテーマを主張する.その際,パラグラフが長すぎても,短すぎてもいけない.論文の全体構成を作成する場合は,ワープロで文章を頭から打ち込むのではなく,カードなどを用いてパラグラフごとのテーマの概略をまとめて,試行錯誤的に並べ替えながら,最終的な流れを完成させる.次に,各パラグラフの内容を充実させていくのが良い.カードを並べ替える作業は,ローカルな最適解から脱出して,グローバルな解を導く働きがある.
論文だからと言って,難しい漢字を並べるのは避けること.例えば,「或は」よりは「あるいは」の方が読みやすい.また,「従って」も通常「したがって」の方が読みやすい.これらの使い分けは,趣味によるところが多いが,他人が読みやすく,理解しやすい文章を目指すこと.
文章を書くときは,常に各文の「主語が何か」を明確にすべきである.日本語の場合,主語を省くことが多いが,科学技術関係の文章はできるだけ主語を明確にした方がよい.できれば,英語の対訳を行いながら日本語を書くとよい文章になる.文の主語述語の関係がはっきりしない日本語を書くと,論文を英語に直すときに,非常に苦労することになるであろう.
文章は,「理科系の作文技術」等にも載っているように,できるだけ,分かりやすい形を取ること.例えば,日本語の場合,長い形容詞が頭につく名詞などは極力避ける.また,主語と述語の泣き別れ現象にも注意すること.自分で,再度読み直してみたときに,ちょっと引っ掛かる部分は,必ず他の分かりやすい表現法が存在すると考えよ.同じ言い回しに固執せずに,単語の順番等を入れ替えるなどして,最適な表現を見つけることが重要である.
文章の書き方の参考書としては,以下があげられる.
このうち少なくとも1に関しては,必ず読むこと.
全体の体裁について
図面や表の体裁には一定の規則が設けられているので,これを厳守して執筆すること.国内の研究会の場合は,電子情報通信学会和文誌の執筆要領を参照のこと.これについては,WWWで入手可能である(学会誌の表紙にアドレスが記載されている).電子情報通信学会の論文誌が研究室に保存してあるので,これも十分参考にすること.図や表に含まれる説明は英語にすること.
文章中の記号等
日本語の句読点の打ち方にも一定の規則があるので注意のこと.本多勝一の著書が非常に参考になる.学術文献では,文章中では全角の「,」および「.」を用いること. 一方,英語の場合は,絶対に全角の文字を挿入してはならない.最近,海外に投稿する場合に電子メールやFTPによるPSファイル投稿を行うことが多いが,この場合,全角が入ると日本語圏以外では,受け付けられないことに注意せよ.コンマ「,」,ピリオド「.」,セミコロン「;」,コロン「:」などの記号は,その記号の前に存在する文章に所属する.このため,これらの記号の前にスペースを挿入してはならない.また,これらの記号の後ろには必ずスペースが入る.一方,括弧「(ABC)」は,その中身ABCに所属する.このため「(」の前には必ずスペースが入り,後ろにスペースを入れてはならない.一方,「)」の場合は,その逆になる.例外は,「(ABC).」のように「)」の後ろにピリオドなどが来る場合である.
式について
日本語の論文であっても式は英語であることを認識せよ.したがって,式の中では全角の「,」や「.」を使用してはならない.日本語の論文を書くときは,式を文章から独立した「式を表す独立した部分」として認識して良いが,英語の論文を書くときは,式も文章の一部として認識すること.したがって例えば
... The above equation can be rewitten as
y = x + y,
where x denotes the real-valued variable. ...
などのように式も文中に組み入れられる(コンマやピリオドの位置に注意せよ). 式の記号は厳密に意味が定義されていなければならない.また,変数などの記号をいい加減な気持で使用してはいけない.例えば,「i」という記号は,通常,整数の変数を表す場合に用い,実数を定義域としてはならない.このようなルールは,暗黙のルールあるいは研究者の間のマナーとして知られているに過ぎないが,著者の品格にかかわるので,十分吟味して使用のこと.要は日々センスを磨くように努力すべきである. TeXを用いて執筆する場合,文中の変数記号を数式モードにしていない例が多く見受けられるので注意のこと.これは,$i$などのように$記号で囲めばよい. 式を引用する場合,引用する位置から見て,後ろにある式を番号で引用してはならない.
文献引用
文献は,文中で引用したもののみをリストにのせること.可能な限り\bibliographystyle{/home/higuchi/aoki/database/aoki-papers/junsrt}
\bibliography{/home/higuchi/aoki/database/others/SVL,
/home/higuchi/aoki/database/others/MVL,
/home/higuchi/aoki/database/others/bio,
/home/higuchi/aoki/database/others/VLSI,
/home/higuchi/aoki/database/aoki-papers/paperlist}
を用いて,青木のデータベースから引いてくること.このデータベースにないものは,青木のディレクトリに新たに記入のこと(資源の共有化).このようにしておくと,各自の打ち間違えが少なく,再利用が可能になる.書き込み権限が無い場合は,青木に連絡すれば,モードを変更する.
英文の図キャプションなど
英文による図のキャプションやタイトルを書く場合は,通常慣例として,先頭の冠詞を省略することが多い.特にTheなどは,極めて強い固有名詞の限定がない限り,省いた方が良い. また,図中の説明の英文やキャプションの英文については,著者応じて,適当な大文字化ルールを使用しているが,自分なりに統一すること.例えばFast Complex Multiplicationという大文字化のルールを採用した場合,他の部分で
Operand recoding
などということをしてはならない.
表のキャプションは表の上に,図のキャプションは図の下に置くこと.
原則としてキャプションにはピリオドをきちんとつけること.
以上