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天才になるのに遅すぎるということはない

Kathy Sierra / 青木靖 訳
2006年9月27日

Webやテクノロジーの世界では(その他の多くの分野でも)、大きなアイデアというのは若い人から生まれるようだ。弱冠27歳にして、Ruby on Railsフレームワークの作者デビッド・ハイネマイヤ・ハンソンは世界を変え、Rubyに存在 意義を与えた。それにFlickrを作ったカタリナとスチュワートがいる。そして言うまでもなく、私がこの記事を書いているブログサービスの 生みの親、Six Apartのベンとミナがいる。

ラリーとサーゲイ、Googleの裏にいる「男の子」たち。ジェフ・ベゾスがAmazonを設立したのは、ちょうど30歳のときだった。O'Reillyの最初のFoo Campで、バート†をゲームで苦しめていた相手の若い子がBitTorrentの作者であるブラム・コーエンだったことを後で知った(彼はTime誌の最も影響力のある100人に選ばれている)。

†Bert Bates (Head Firstシリーズの共著者)

40を過ぎても、まだ希望はあるのだろうか? ドク・サールズのような晩成型である可能性は? 「アルファブロガーの門番」と呼ばれていることについて、彼はこう答えている
「私が世に知られていることは、ほとんどすべて50以降にやったことだ」

答えは明らかにイエスなのだ。フランク・ロイド・ライトが最高の仕事をしたのは70の時だ。アルフレッド・ヒッチコックが軌道に乗り始めたのは60近くになってからだ。ベートーベンが第九を作ったのは? 50代だ。わかったでしょ?

経済学研究者のデビッド・ギャレンソン(彼自身晩成型)は、長年コツコツと取り組み続け、そしてついにクリエイティビティをリバースエンジニアリングする方法を発見した・・・イノベーターには2種類、構想型イノベーターと経験型イノベーターがいることを発見したのだ。構想型イノベーターというのは、偉大なアイデアを早い時期に得て、多くの場合30代を過ぎる前にピークに達する。彼らは一夜にして業界を(時には世界を)変える。経験型イノベーターの方はクリエイティブな試行錯誤を繰り返しながら静かに進み続けるが、ずっと後——しばしば50代以降——になるまで世に広く知られることはない。

もちろん偉大なアイデア型の人の中にも、早い時期に始まってずっとピークを過ぎずに持続する人たちもいる。他の構想型の多くとは異なり、彼らは20代で画期的な仕事をした後も、燃え尽きることがない。私の出版人であり、友人でもあるティム・オライリーは明らかにそういうタイプの1人だ。ガイ・カワサキもしかり・・・彼はAppleの初代Macのエバンジェリストで、1992年にベストセラーとなったSelling the Dream†(古典だが、今でも役に立つ!)を書き、それ以来ずっと活動を続けている。そしてDHHについて私が知っていることからすると、彼もまた、まだウォーミングアップしているところなのかもしれない。私たちは彼のすごいアイデアを、このあと何年、何十年と聞き続け(そして使い続け)ることになる 気がする。

†秋葉なつみ訳 夢を売る―お客をわくわくさせる究極のセールス革命

ここに書いたことはすべて、私のお気に入りであるダニエル・ピンク(人生や仕事を変える本、A Whole New Mind†の著者)のアーティクルに基づいている(読者の多くはこのアーティクルをすでに読んでるんじゃないかと思う)。そのアーティクルの表題は"What Kind of Genius Are You"で、Wiredの7月号に掲載された。これはオンラインで読むことができる

†大前研一訳 ハイ・コンセプト―「新しいこと」を考え出す人の時代

私はそのアーティクルを最初に見たとき、ざっと眺めてから、長いコーヒーブレークの時のために取っておくことにした。しかし引っ越しやら旅行やらのどさくさにまぎれて雑誌をなくしてしまい、今朝ようやく見つけたのだ。私が天才になることは決してないだろうし、「若い/構想型」グループに入れる可能性はまったくゼロと言っていいのだが、それでもこのアーティクルには勇気づけられた。私にも——そして30代を過ぎた人たちみんなに——まだ希望があるのだ。

そのアーティクルの終わりで彼は、生意気さや大胆さがマネージャ(あるいはクリエイティブな天才を扱えるほどの柔軟性を欠いた職場のポリシー)によって押し殺されないようにする必要があると書いている。これまたもうひとつの「当たり前のこと」だ(マネージャたちはみんな同意するが、実際にそうする人はめったにいない)。彼はスロースターターのことも見捨てずに、こう書いている。

「しかし私たちは、あまりに早くピークを迎えることを、なんていうか、回避した人たちに余地を残しておくべきだと思う。彼らの最もイノベーティブな日々はこれからやってくるのだ・・・私たちはぐずぐずしている不確かな人たちにも目を向けて、あまりに早く見限ってしまうのでなく、彼らが中年になってから上向きの曲線に乗るチャンスを与えるべきかもしれない。
もちろん何も成し遂げていない65歳がみんな知られざる経験型イノベーターというわけではない。これはクリエイティビティに関する一般理論であって、たるんでいるベビーブーマーの自尊心へのバイアグラではない。怠慢や先延ばしや無関心を正当化するものではないのだ。しかしこれは、絶えざる好奇心を持って働き続け、彼方のウサギにくじけることのないひたむきなカメたちの心を勇気づけるかもしれない」

だから・・・ウサギさんたち・・・後ろに気をつけて! 私たちが迫っているから。ただ、すごくすごくおそーいだけ。そして私たちには前の世代が持っていなかったアドバンテージがある・・・インターネットだ。それにブログ。オンラインで——地球を巡って——人々と繋がるためには、無料のブログアカウントしか必要ない。私が最初に取り上げたドク・サールズの引用には続きがあった。彼が本当に言った ことはこうだ。

「私が世に知られていることは、ほとんどすべて50以降にやったことだ。そしてインターネットがなければ、そのどれもなしえなかった

クリエイティブになるのに遅すぎるということはない。違いを生み出すのに遅すぎるということはない。ただ・・・挑戦し続けることだ。そしてあの九十何歳かのおばあちゃんが後悔していることがありますかと聞かれたときに、何と答えたのかを覚えておこう。「こんなに長生きすると知ってたら、60の時にバイオリンを始めたろうに。そしたらもう40年の経験を積んでいたことになる・・・」

それで、あなたはどっちのタイプの天才?

(あなたがどっちのタイプ——構想型か経験型か——であれ、写真の中でデビッドとドクの使ってるコンピュータが何かってことに注意して。ちょっと言ってみただけよ・・・)


写真の帰属について: 写真を撮ったのはジェームズ・ダンカン・デビッドソンで、彼はTomcat Java Webコンテナを作り上げ(そしてSunがそれをオープンソースとしてApacheに寄贈することを驚くべき努力の末に実現させ)、さらにAntを作った。すべて30の頃にだ。彼は単なる技術の天才であることに飽き足りず、最近では第2のキャリアとしてプロの写真家もしている。なんてやつ! ; )

 

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オリジナル:  It's not too late to be a genius

このアーティクルはクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。