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『くすりと私たち――現代日本の薬害問題』

高野 哲夫 19730520 『くすりと私たち――現代日本の薬害問題』,汐文社,305p.


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■高野 哲夫 19730520 『くすりと私たち――現代日本の薬害問題』,汐文社,305p.  ASIN: B000J9OB02 [amazon]

〈目次〉

まえがき
第1編 続発する薬害
1-1 薬害発生小史
1-2 ペニシリン・『ショック死』
1-3 サリドマイドからの教訓
1-4 自社従業員をモルモットに
1-5 アンプルかぜ薬事件
1-6 精神病者に対する人体実験
1-7 治療の悪夢――クロラムフェニコールの功罪
1-8 予防接種と死
1-9 血漿剤中毒死
1-10 スモン病とキノホルム
1-11 続発する薬害

第2編 破壊される国民の健康――薬害発生の遠因
2-1 国民の健康破壊
2-2 激発する労働災害
2-3 今日の職業病
2-4 日本列島を覆う公害
2-5 食品による健康破壊
2-6 交通災害
2-7 破壊される人格
2-8 奪われた生命

第3編 健康を蝕む製薬独占――薬害発生の社会的側面
3-1 薬害王国日本
3-2 医療制度に寄生する製薬独占
3-3 大学・厚生省を支配する製薬独占
3-4 外国に依存する製薬企業
3-5 製薬独占の現段階

第4編 くすりによる障害――生体とのかかわりあい
4-1 はじめに
4-2 薬原病のメカニズム
4-3 薬による臓器障害
4-4 くすりの功罪――各種薬剤による障害

第5編 わが国の薬害問題を解決するために
わが国の薬害問題を解決するために
病気そのものをなくす斗いを全国民的規模ですすめる
誰でも治療を受けることの出来る医療機関の拡充
薬中心の医療制度をあらためる
製薬独占に対する保護政策をやめさせる
臨床データー公開の原則
薬害に対する治療と補償制度を確立する

おわりに



<西洋医学の導入><004<
 西洋医学は、江戸末期、オランダ医学として導入されましたが、この時期は、洋薬は貴重品で、薬害が発生するほど、手に入りませんでした。しかし、明治維新後、これまでの鎖国を解くと共に急速に日本の近代化、西欧化が始まりました。
 医薬品は、菜種商、武田、田辺、塩野義、藤沢、輸入商社三共商会などを通して種々輸入されましたが、(年間50万円におよぶ)日本人の無知につけこんで偽薬が出まわると共に、濫用の害が、喧伝され、1874〜75年(明治7〜8年)司薬場(医薬品検査所)が、東京、京都、大阪に開かれ、1886年(明治19年)日本薬局方が制定されました。
 1884年(明治17年)半官半民の大日本製薬会社(現在の大日本製薬株式会社―マルピーの前身)が設立され、長井長義が製薬長に任命されました。ところが皮肉なことに、2年後の1886年に早くも、薬品小分けを誤り、大黄エキスにホミカエキスを混入し、宮内省に納入したため中毒患者が発生すると云う事故が怒りました。
 ここで明らかなことは、薬害は、資本主義的生産様式の移入と共に始まったと云うことです。したがって薬害の歴史も、また日本資本主義の発達と共に深刻化するわけです。もともと、医療と医薬品の資本主義的生産とは、相矛盾する性格をもっています。なぜなら、疾病は、きわめて多様な形態をとるのに対して、資本主義的生産が成立するためには、大量消費が前提となるからです。大量生産=大量消費、これが行きつくところです。医薬品の画一化、万能化が始まります(アリナミンは実に87種の疾患を治療すると云います)。ここから医薬品産業の腐朽が始まるわけです。(pp.4-5)



*追加:北村健太郎
UP: 20080526 REV:20081001,20090325
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